ADHDとは、注意欠陥・多動性障がいと訳される発達障がいの1つで、注意力の欠如、衝動性、動き回る、などの行動が特徴です。ADHDの子どもは、定型発達の子どもに合わせて作られている学校や勉強のカリキュラムとは相性が悪いことも多く、勉強で悩みを抱えることが少なくありません。
ADHDの子どもが勉強で悩むとき、どのように解決していけば良いのでしょうか?
ADHDの子どもに起こりやすい勉強の困りごととは?
ADHDの子どもは、その特性から勉強や学校に関する悩みを抱えることも少なくありません。まずは、学校生活や勉強面でマイナスになりやすい特性について見ていきましょう。
- 注意欠陥型の場合
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- 先生の話を集中して聞けない
- 周囲に人がいると気が散ってしまう
- 忘れ物をしやすい
- 興味があることには集中して取り組むが、興味がないことはやらない・できない
- 多動・衝動型の場合
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- じっと座っていられない
- 衝動的に声を出したり、行動にうつしてしまう
- ルールを守れず、つい破ってしまう
- 感情をコントロールできず、時に乱暴な行動を取ってしまう
これらの症状はどちらかに偏っていることも、両方の症状を併せ持っていることもあります。ただ、多動の症状については中学生ぐらいになると自然に落ち着いてくることが多いほか、学習環境が合っていれば中学生くらいまではとくにつまずかずに進める子も多いのです。
しかし、学習環境が合っていない場合や特性が極端に強く出てしまう場合、興味のある教科・ない教科の差が激しい場合などには、以下のように小学校の早い段階から勉強や学校が嫌いになってしまうこともあります。
- 授業に集中できず、内容が理解できない
- 授業に集中できない状態が続き、学校の勉強についていけなくなる
- 勉強についていけないことから、授業をつまらなく感じたり、勉強に対する自信をなくす
- 衝動的に授業中に立ち歩いたり、声を出したりしてしまう
- 衝動や忘れ物で先生に怒られ、保護者にも怒られてしまう
- 友人にからかわれることもあり、学校や勉強に苦手意識を持ってしまう
- これらのことが続くと、学校や勉強がだんだんと嫌いになっていってしまう
このように、スタートは「授業に集中できない」「忘れ物が多い」「興味のない教科についていけない」「衝動を抑えきれない」といったことから始まりますが、ずっと続くと「集中できない、興味がない→ついていけない→つまらない」「忘れ物や衝動→叱られる→学校が苦手になる」というように積み重なっていき、最終的に勉強に対する自信を失くしたり、学校が嫌いになったりしてしまいます。
単に学校が嫌いになるだけならまだ良いのですが、勉強についていけない、学校に馴染めないことで周囲の人に責められたり、自己嫌悪に陥ったりして、健全な自尊心が失われ、自己肯定感が低く育ってしまうこともあります。
自尊心や自己肯定感が低くなると、不登校になったり、抑うつ症状などの二次障害を引き起こしてしまうこともあるのです。
子どもは自分の置かれている環境や感情を上手く分析したり言葉にできないこともあり、したがって「学校や勉強が嫌い」という言葉がすべて発達障がいのためとは限りませんし、逆に一見さぼっているだけに見えても、本人は内心努力しているのにその努力が特性のために実らず苦しんでいる、ということも考えられます。
そのため、子どもが「勉強が嫌い、学校が嫌い」と言っている場合は頭ごなしに叱りつけるのではなく、ぜひ子どもの話を注意深く聞いてみてください。
その上で、上記のような発達障がいの特性に当てはまることが多いようであれば、専門家に相談してみましょう。
定型発達の子と違う、特性に合ったアプローチをすれば、勉強が好きになれる可能性は大いにあります。早めの対策が大切です。
どんな環境だとADHDの子どもが勉強しやすくなるの?
では、具体的にADHDの子どもに適したアプローチとはどんなものなのでしょうか。まずは、整えるべき学習環境から見ていきましょう。
- 集中する時間を短くする
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- ADHDの子どもは集中力に乏しいため、短い集中時間を最大限に活かせるようにする
- とくに小学生は定型発達の子どもでも集中力に乏しいため、対策が重要
- 何度も繰り返し学習する
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- 短時間の学習を同じ内容で何度も繰り返すことで記憶を定着させる
- 1日に3回集中して学習するのではなく、1日後、3日後、7日後など間を空けながら学習する
- 親の目が届く場所にする
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- 親に見守られることで、認められたい、関心を引きたいと思わせる
- 中学生ぐらいになると自分の部屋を持つ子もいるが、できるだけリビングなどで行うのが良い
- 親が関心を持ち、子どもを認めることがモチベーションになる
ADHDの子どもの勉強は、集中力がない・衝動的になりやすい・ケアレスミスが多い・計画性がないなどの点で定型発達の子どもよりも苦労しやすいのが特徴です。
そこで、この部分を集中的にケアできるよう、集中する時間を短くしたり、何度も学習することでケアレスミスをなくす、親の管理下で勉強計画を実行する、などの環境調整を行うと良いでしょう。
また、子どもの興味を引いてしまうおもちゃ・テレビ・ゲームなどは、勉強中は隠しておきましょう。
学校にいる間、授業中に他の子が気になってしまう、黒板に集中できないなどの問題がある場合は、担任の先生や学校と話し合って席を一番前にしてもらう、iPadなどのタブレットを利用して視覚的に集中して理解しやすい環境を作るのも環境調整の1つです。
そして、大人が勉強を見る場合、以下のようなことに気をつけましょう。
- 指示は具体的に、1つずつ
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- 何かをしてほしいとき、できるだけ具体化して1つずつ指示を出す
- 絵に書いたり、チェックリストを作成するとよい
- 気づいたときにすぐ褒める
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- 問題が解けた、頑張って集中できたときはすぐに褒める
- 子どもと目線を合わせ、やや大げさと思うほど褒めるとより効果的
- 普段の声量でゆっくり、わかるまで何度も話す
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- 大きな声は叱られたと恐怖になってしまい、早口は理解できないので厳禁
- 普通の声量で、ゆっくり何度も話してあげる方がよい
ADHDの子どもは、たくさんの指示を一度に覚えておくことができません。そのため、指示は具体的に、1つずつ出していきましょう。また、言葉だけでなく視覚化するとよりわかりやすいので、絵に書いたりチェックリストとして見せるのも効果的です。
問題が解けたり、一定時間集中が続いたときはすぐに褒めてあげましょう。その際、子どもと目線を合わせ、少し大げさなほど一緒に喜んであげると子どもは自分が認められたと感じ、自尊心や自己肯定感が育ちます。
逆に、注意するときやわかってほしいときに声を荒げるのは逆効果になりやすいので気をつけてください。理解してほしいとき、説明するときには普通の声量で、わかるまで何度も繰り返すことが大切です。
おわりに:ADHDの子どもは、環境を整えてあげると勉強しやすい
ADHDの子どもは、その特性上、定型発達の子どものように「集中してじっと授業を聞く」ということが非常に苦手です。そのため、学校の勉強についていけなくなったり、先生に叱責されて学校が嫌いになったりしてしまうこともあります。
まずは勉強を好きになるために、学習環境を整えてあげましょう。家庭での工夫はもちろんのこと、可能なら学校でも席順やツールなどの環境を整えてあげると、勉強しやすくなります。
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