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カサンドラ症候群ってどういう状態?どう対処すればいいの?

人間関係改善のヒント
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カサンドラ症候群という名前を聞いたことはありますか?ギリシャ神話に登場するトロイアの王女であるカサンドラは、ある時予知能力を授かりますが、同時に誰からもその予言を信じてもらえないという呪いもかけられてしまいます。

この悲しいカサンドラ王女と同じようなことが、発達障がいの一種であるアスペルガー症候群の人とそのパートナーの間で起こりやすいのです。このカサンドラ症候群について具体的に見ていきましょう。

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カサンドラ症候群の特徴って?

カサンドラ症候群とは、アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム障がい、ASD)の家族やパートナーを持った人が、その人と心の交流などをメインとした情緒的な人間関係を築こうとしても築けない心理的なストレスや、最悪の場合は精神的・肉体的な虐待を受けてしまい、さらにそれを友人など周囲の人に対してSOSを発しても信じてもらえない状態のことを言います。

なぜ友人など、周囲の人に話しても信じてもらえなくなってしまうのでしょうか。これは、ASDの特性を持っている人がある程度の社会性や社会的地位を得ていて、対外的には特に問題なく社会生活を送っている場合、家庭やプライベートな関係の中でだけ人間関係が悪化するため、外部からはその実態が見えづらくなってしまうことが主な原因として挙げられます。

人間は、孤独に非常に弱い動物です。カサンドラ症候群の怖いところはここにあり、自分の言い分を信じてもらえない、誰も自分の置かれた状況をわかってくれない、間違っているのは自分の方なのではないか、という不安や自己評価の低下から疎外感や孤立感を強めてしまい、抑うつ状態やPTSDなどの精神的・身体的な症状を発症してしまうのです。

カサンドラ症候群の名付け親である心理療法家シャピラ(ローリー・レイトン・シャピラ)によれば、この「誰からも理解してもらえない」ということがカサンドラ症候群の重要な特徴です。本人の認知の歪みではなく、事実を訴えているにも関わらず社会的な理解を得られない、すなわち身近な人との人間関係がどんなに不条理な状態であったとしても、助けを求めることも実際に助けてもらうこともできない、という状態になってしまうのです。

カサンドラ症候群の定義って?

カサンドラ症候群は、以下の4つの点によって定義されています。

  1. 少なくともパートナー関係の片方にASDの特性である共感性や情緒的な表現の障がいがある
  2. パートナー関係において情緒的な交流が少ないことによる激しい対立、精神的・身体的な虐待、人間関係の満足度の低下がある
  3. 精神的もしくは身体的な不調、それらの症状(抑うつ状態、罪悪感、不安障がい、不眠症、体重の大幅な増減など)がある
  4. これらの事実を他人に訴えても理解してもらえない、信じてもらえない

1〜3までは、ASDやカサンドラ症候群に対する研究を多く行っているイギリスの心理療法家マクシーン・アストンが定義したもので、4つ目を合わせたのがカサンドラ症候群の名付け親であるシャピラです。

カサンドラ症候群になりやすいのはどんな人?

カサンドラ症候群になりやすいのは、真面目で几帳面、完璧主義、忍耐強く面倒見が良い、といった性格の人だと言われています。

パートナーにASDの特性である社会性のない言動(その発言で人が傷つくかどうかを考慮できないなど)が見られても瞬発的に怒ったり突き放したりせず、辛抱強く付き合えるのですが、逆にその「ASDのために相手のことを考えられない人」と「ひたすら耐え続ける人」という関係が固定されてしまい、やがてカサンドラ症候群に発展してしまうことが多いのです。

ASDの特性を持っている人は男性の方が多いため、カサンドラ症候群は主にそのパートナーである女性側が発症することが多いと言われていますが、逆に女性側がASDで男性がカサンドラ症候群に陥る場合もあり、必ずしも女性だけの症状というわけではありません。

カサンドラ症候群になる原因って?

カサンドラ症候群は、相手との関係性によって生じる状態です。そのため、原因やきっかけとなる出来事は非常に多様で、1つだけの出来事や言葉、言動などが原因になるわけではありません。しかし、大きな原因となる「状態」として、以下の2点が挙げられます。

  • ASDの特性を持っている家族やパートナーと情緒的な交流ができず、関係性が悪化している
  • 関係性が悪化したことやその原因をパートナーや周囲が理解せず、当人が苦しみを抱えたまま孤立してしまう

主に情緒的な面での対人関係に関わるASDの特性として「社会性の障がい」「言語コミュニケーションの障がい」という2つの障害が挙げられます。具体的には、以下のような症状として現れます。

  • 相手の気持ちや意図を想像したり、暗黙の社会的ルールなどを想像できない
  • 自分の感情を表現することや、自分の発言や行動が他人にどう見えるか想像できない
  • 言葉の使い方が独特で、言語での意思疎通ができにくい
  • 文脈や言外に含まれる意図を読み取れない
  • 相手の声のトーンや表情、身振り手振りから真意を読み取れない
  • ユーモアやお世辞、皮肉や比喩を理解できない

これらは全て、定型発達の人であれば成長の過程で身につけていくことができるものですが、ASDの人では脳機能に何らかの障がいがあると考えられており、これらのことを自然に身につけることができません。

そのため、「相手の感情に共感する、寄り添う」「言語でコミュニケーションを取り、意思疎通をはかる」「表情や身振り手振りから言外の意図を読み取る」といった対人関係を築くのに必要なスキルが育っておらず、パートナーとの関係性が悪化してしまうだけでなく、悪化したことに気づけず、相手の不満や孤独感を理解することができないのです。

また、前章でもご紹介した通り、ASDを持っている人が仕事の場ではある程度問題なく過ごせている場合、家庭内での振る舞いが外の人から見えづらいといった問題もあります。

家庭外の人に相談を持ちかけても「大したことはない」と軽く扱われたり「被害妄想ではないか」などと否定・批判されたりするなど、カサンドラ症候群当事者は確かに苦痛を感じているのにそれをわかってもらえない、信じてもらえないことで、さらに強いストレスに晒されてしまうのです。

カサンドラ症候群は夫婦間以外でも起こるの?

カサンドラ症候群は、主に夫婦などパートナー間の関係性として扱われやすいですが、その他にも親子・兄弟姉妹、上司と部下などの間でも発生することがわかっています。
いずれの場合も当事者間だけで問題が起こっていて外部に問題が見えづらいこと、どちらか一方が社会的に何らかの地位を得ていて苦痛を感じている側の訴えが軽視・無視されやすいことが共通しています。

ASDの人とのコミュニケーションの困難さは、例えば上司・部下間では「パワーハラスメント」「モラルハラスメント」などに分類されるような言動となって現れてしまうこともあります。こうした現象は、公的な場から解き放たれ、社会性を発揮しなくてもいいとASDの本人が考えてしまうような環境で起こりやすいのではないかと考えられています。

カサンドラ症候群は防げる?

まず、ASDの特性は、その人自身の性格や努力不足ではないことを理解する必要があります。カサンドラ症候群に陥っているパートナーの気持ちを理解できないことや、意思の疎通がはかれないことは生まれつきの脳機能障害のせいで、ASDの本人も直したくても直せず、苦しんでいる場合がほとんどなのです。

ASDの特性を理解し、社会性のない言動があっても決してカサンドラ症候群の人には原因がないこと、ASDの人の怠慢や傲慢のせいではないことを知ることが、カサンドラ症候群に陥らないための第一歩です。

そして、可能な範囲で「これは症状である」という線引きをして柔軟に対応することを試みるとともに、辛い場合はあえて距離を置いてみましょう。心身が休まるだけでなく、状況を冷静に見つめ直し、共倒れにならないために重要なことです。

一番良いのは、ASDの本人が「自分はアスペルガー症候群である」という自覚を持ち、何らかの医療機関を受診したり、適切な指導や療育を受けられることです。
社会性や言語によるコミュニケーション能力は、訓練によってある程度補うことができます。パートナーや家族がカサンドラ症候群に陥る前に、できればこうした指導を受けられると最も良いでしょう。

カサンドラ症候群から抜け出すには?

とは言っても、そもそもカサンドラ症候群に陥るまで相手がアスペルガー症候群ではないか、などということに気づけないという場合も多々あります。そして、そうなってしまった頃には疎外感や孤独感で、冷静に対処することが困難になっている場合が多いです。

まず、カサンドラ症候群に陥っているかも、と思った時には迷わず「心療内科」「精神科」などの医療機関を受診しましょう。絶対に我慢したり、一人で抱え込んではいけません。特に、体調が悪くなってしまったり、ストレスが強いと感じられるときにはすぐに受診するようにしてください。
カサンドラ症候群は孤立するほど症状が悪化してしまいますので、一人で我慢するというのが一番良くないのです。

また、ある程度冷静さを取り戻してきたら、カサンドラ症候群の人どうしでの自助グループに参加するのも良いでしょう。同じ悩みや辛さを抱えた人どうしで状況を共有し、励まし合ったり支え合うことで孤独感や孤立状態、疎外感を和らげることができます。孤独感が和らぐと、問題解決や克服の糸口がつかめることも少なくありません。

自助グループに参加する時間がないという人であれば、インターネットを活用して同じような仲間を探すのもおすすめです。自助グループと同じように、孤独感や疎外感を和らげるのが目的なため、SNSやメールなどの積極的な発信・交流でなくても、同じような体験をした人のブログなどを読むことでも構いません

おわりに:カサンドラ症候群は孤立から起こる。孤独に陥らないための対策を

カサンドラ症候群になりやすいのは、真面目で責任感が強く、忍耐強くて面倒見の良い人です。こうした人は問題が起こった時に一人で抱え込みやすく、カサンドラ症候群に陥りやすいのです。

カサンドラ症候群に陥らないためには、アスペルガー症候群の特性をよく理解し、自分だけでなんとかしようとしないことが大切です。適切な医療機関を受診したり、同じような状況の人どうしの自助グループやインターネットなどを活用しましょう。

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