不注意優勢型ADHDってどんな発達障がいなの?

ADHDは日本語名(注意欠陥・多動性障害)の通り、注意力が足りなく、落ち着きなく常に動き回っていることが特徴的な症状です。その中でも、かつてADDと呼ばれていた「不注意」「衝動性」が前面に出ていて多動の特徴はあまり見られないものを「不注意優勢型ADHD」と呼んでいます。

この記事では、不注意優勢型ADHDとは具体的にどんな発達障がいなのか、そして改善するにはどうしたら良いのかについて解説します。

不注意優勢型ADHDの症状の特徴は?

不注意優勢型ADHDでは、多動性の症状はあまり見られず、「不注意」と「衝動性」が症状として目立って見られます。不注意や衝動性そのものは誰にでも見られる情動ですが、それが小さなミスでとどまらず、日常生活にまで大きく影響を及ぼすほどになってしまうほど強いとなると、ADHDと考えられます。

不注意とは具体的にどんな症状のこと?

不注意とは、注意力が弱いために一定時間集中力を保てない状態のことを言います。また、注意力が弱いことからよく物を失くしたり、整理整頓ができないのも特徴です。その他、「周囲に気が散って集中できない」「細かいところまで注意が向かない」「いつもボーッとしている」などの症状が現れることもあります。

注意力に関係しているのは、脳の「前頭前野」という部分です。ここは外から入ってきた情報を整理して保存し、活用する働きがあります。不注意の症状が出る人はこの部分の働きが弱く、言われたことを記憶したり、ものを置いた場所を記憶したり、持ち物を整理して保存する、といったことが苦手になってしまうのです。

衝動性とは具体的にどんな症状のこと?

衝動性とは、自分の感情や欲求をコントロールできず、思ったことややりたいことを突発的にしてしまう状態のことを言います。感情や発言、行動などを場に合わせてコントロールすることが苦手ななため、周囲の人に無神経、短気などの印象を与えてしまいます。具体的には、以下のような症状が見られます。

  • 思ったことをすぐ口にしてしまう
  • 順番を待つのが苦手
  • 優先順位をつけられない
  • すぐにカッとなってしまう

この特性のため、喜怒哀楽が激しく、自分の思い通りにならないとすぐに癇癪を起こしてしまうこともあります。このような感情的・突発的な行動が多いと、どうしても集団生活の中で孤立してしまうことも考えられます。

不注意優勢型ADHDに二次障害はある?

不注意優勢型ADHDの症状は、ともすれば本人の単なる努力不足や能力の低さととらえられてしまうことがよくあります。ADHDに限らず、発達障がいとは脳機能の障害から起こる症状ですから、本人は十分努力していても直せなくて苦しんでいることが多いのです。しかし、このような事情を理解されず、周囲から叱られたり厳しい訓練をされたりすると、本人の自尊心が大きく低下してしまうことがあります。

自尊心が低くなると、本人が持っている良い資質も伸ばせなくなってしまうことも考えられます。さらに、自尊心の低さから集団生活に馴染めなくなり、不登校やひきこもりにつながったり、抑うつ状態からの精神状態の悪化などの二次障害を引き起こすこともあります。

不注意優勢型ADHDの症状を改善するには、どうすればいい?

ADHDや自閉症スペクトラムは、2019年4月現在、根本的に治療することはできません。しかし、生活習慣や教育、周囲の働きかけ、医師の指導による投薬などを通して症状を軽減させることはできます。具体的には、以下のような働きかけが効果的です。

  • ソーシャルスキルトレーニング(SST)
  • 環境改善
  • ペアレントトレーニング
  • 薬物療法

ソーシャルスキルトレーニングとは、社会の中で生きていくために必要な能力=スキルを育てていくためのトレーニングのことで、学校や発達障がいのための療育施設、病院などで主に取り入れられています。場合によっては職場に設置されていることもあります。ディスカッションやロールプレイなどを通して行動の仕方を学ぶやり方で、自治体や家庭内で行えることもあります。興味があれば、近くの病院や療育センターなどの専門の医療機関に相談してみると良いでしょう。

環境改善とは、家や教室など、生活環境を本人にとって過ごしやすいように調整することです。子どもなら部屋の中で勉強するところと遊ぶところを仕切る、机の上や近くにはおもちゃを置かない、など、大人ならメモやスマホのスケジュールアプリを活用する、紛失防止のタグをつける、などがおすすめです。

ペアレントトレーニングとは、発達障がいの子どもを持つ保護者の大人に対して行われるトレーニングで、子育てに関する不安や困ったことなどを解消し、子育てを楽しんでもらえるよう支援するためのプログラムです。具体的には「子どもの上手な褒め方」「間違った時の注意の仕方」などを学びます。各都道府県の「発達障がい者支援センター」や「教育センター」などで受けられます。

薬物療法は、精神科で診察を受けて、薬剤で不注意優勢型ADHDの症状を和らげることができると判断された場合に処方される薬剤を服用する方法です。現在、日本で認可されているADHDの処方薬はストラテラ(アトモキセチン)、コンサータ(メチルフェニデート)、グアンファシン(インチュニブ)の3種類があり、グアンファシンは6〜17歳の子どもに対してのみ処方されます。

アトモキセチンは脳内の神経伝達物質である「ドーパミン」「ノルアドレナリン」の効果を強めてADHDの症状を緩和する薬剤であり、メチルフェニデート・インチュニブは「ノルアドレナリン」の効果を強める薬剤です。これらの薬剤には消化器や神経への副作用もあるため、医師と十分相談した上で処方してもらうようにしましょう。

これらの働きかけのどれから始めたらいいかわからない、自分や家族、パートナーの症状に対してどれが合っているか悩む、といった方は、セルフチェックだけでなく専門機関である「発達障がい支援センター」などに相談してみましょう。子どもの場合はその他にも「保健センター」「子育て支援センター」「児童発達支援事業所」などでも対応してもらえます。

普段の生活での対処法はある?

普段の生活での困りごとを減らすためには、まず「自分の状態をしっかり把握する」「安心できる環境を整える」「打てる手立てについて十分な情報を得る」ということが大切です。専門家に相談する前に、一度自分で困りごとを書き出し、それに対して打てる手立てを調べてみると良いでしょう。その上で、それを持って支援センターなどで相談してみるときちんと整理できておすすめです。

また、子どもの不注意優勢型ADHDに対しては、家庭や学校で以下のような対処をできると良いでしょう。

不注意に関する配慮
  • 必要なものは親や先生と一緒に確認する
  • 注意を逸らしてしまうような刺激を少なくする
  • 飽きないようにこまめに声掛けしたり、課題を切り替える
  • 文字や絵など、視覚的な指示を使って注意を引く
  • スマートフォンのアプリ、アラームなどを活用してリマインドする
  • なくしやすいものにはタグや名前・連絡先をつけ、紛失しても見つけやすいようにする
衝動性に関する配慮
  • 声掛けでやるべきことを思い出させ、気持ちを落ち着かせる
  • 大枠のルールをしっかり決め、その中ではある程度自由な行動を許可する
  • 水を飲む、一人になるなど、クールダウンする方法を本人と一緒に探しておく

子どもの不注意優勢型ADHDの場合、保護者や先生など、周囲の大人がある程度環境を整えてあげることも重要です。特に、ADHDに限らず子どもは好奇心が強く、そもそも注意が逸れやすかったり、興奮しやすかったりするものです。そこで、刺激になりそうなものをできるだけ少なくする、こまめに声掛けをして注意を引いたり気持ちを落ち着かせる、などの配慮が良いでしょう。

また、将来的に本人が自分で自分の状態をコントロールできるよう、リマインドやクールダウンの方法を本人と一緒に設定したり、探したりしてあげることも大切です。スマートフォンのアプリを自分で設定してもらう、水を飲んだり一人になるなどその子の落ち着ける環境を一緒に考えて実行してみる、などの試行錯誤を繰り返していきましょう。

こうした試行錯誤の中で、だんだん注意力や衝動性のコントロールが上手くいくようになれば、その子ども本人にも「自分で自分をコントロールできた」という自信がついていきます。このように適切な対処をしていきながら、本人も周囲の人も安心して社会的な生活を送れるようになることが最終的な目標です。

おわりに:不注意優勢型ADHDは「不注意」「衝動性」の症状が強いADHD

不注意優勢型ADHDは、名前の通り「不注意」と、「衝動性」に関する症状が強く出るタイプのADHDです。ADHDは発達障がいの一種ですから、本人の努力不足や性格ではなく、脳機能の障害によってこれらの症状が出ているのです。

根治はできませんが、生活習慣や周囲の理解と働きかけ、投薬などである程度改善することが可能です。ぜひ、セルフチェックだけでなく支援センターなどの専門機関にも相談してみましょう。

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