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アスペルガーの薬に使われるエビリファイ®って?

発達障がいの基礎

アスペルガー症候群とは、広い意味での発達障がいの1つで、知的発達や言語発達には遅れが見られませんが、コミュニケーションや対人関係に困難が生じること、限定的な興味やこだわりが強いことが特徴です。

これらの症状から環境や人間関係に馴染めないことも多く、そのために他のさまざまな症状が現れることがあります。エビリファイ®はそうした他の症状に対して改善の効果が期待できる薬の1つです。

エビリファイ®はアスペルガーのどんな症状に効くの?

エビリファイ®は、2009年に小児の自閉症患者さんの「自閉症障がいに伴う易刺激性」の承認を受けています。これは、アスペルガー症候群の含まれる自閉症障がい(自閉症スペクトラム障害)の症状のうち「かんしゃく・攻撃性・自傷行為・またはこれらの複合行為など、行動障がい」のことです。こうした患者さんへの治療薬は少なかったことから、日本でも安全に使用できる薬が長く望まれていました。

日本では、エビリファイ®は統合失調症に対する非定型抗精神病薬として2006年に承認された後「双極性障がいにおける躁症状の改善」「既存治療で十分な効果が認められないうつ病・うつ状態」に対する適応が認められてきました。そして、2016年にこの「小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性」が追加で承認されたのです。

易刺激性の具体的な症状には、以下のようなものがあります。

  • 新しい場面や急な出来事、思い通りにならない、悪い記憶を思い出したなどちょっとしたきっかけで機嫌を損ねてしまう
  • 怒って物を壊す、自分の体を強く叩くなどの強い攻撃性、自傷行為などが見られる

このような症状が現れた場合、エビリファイ®の適応となる可能性があります。ぜひ、主治医に相談してみましょう。

アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム障がい)とエビリファイ®の歴史

アスペルガー症候群は、現在では自閉症スペクトラム障がいの1つに含まれています。2013年に米国精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)」が更新され、それまで「広汎性発達障がい」とされていたアスペルガー障がい・自閉症などが「自閉症スペクトラム障がい」としてまとめられました。これら自閉症スペクトラム障がいも、やはり発達障がいの1つとして位置づけられているのは変わりません。

自閉症スペクトラム障害を含む発達障がいは、何らかの脳機能障がいであると考えられていますが、はっきりとした原因は特定されていません。そのため、治療を行うときはまず、薬物療法の前に行動療法などを優先的に行います。

しかし、発達障がいに伴う行動障がいについては、いくつかの神経伝達物質が関係していて、中等度〜重度の行動障がいにはドーパミン神経系が関係していることがわかっています。ですから、抗ドーパミン作用を持つ抗精神病薬は易刺激性(興奮性)に対して有効なことも確認されていて、実際に薬物治療にはこれらの薬剤がよく使われています。

日本では、エビリファイ®が承認されるまで、自閉症スペクトラム障がいの異常行動に対しては1982年に承認された定型抗精神病薬が使われていました。しかし、副作用の多さなどから、小児の患者さんに対しては安全性の上で大きな課題があったのです。

そもそも、エビリファイ®ってどんな薬なの?

エビリファイ®の適応が認められている病気は、まとめると以下のようになります。

  • 統合失調症…2006年
  • 双極性障がいのうち、躁状態…2012年
  • 抗うつ剤では効果が不十分な、うつ病やうつ状態…2013年
  • 小児期における、自閉症スペクトラム障がいに伴う易刺激性…2016年

エビリファイ®はもともと日本では統合失調症の治療薬として適応が認められ、販売開始されましたが、海外では双極性障がいをはじめ、気分安定薬として使われていました。そのため、2012年・2013年には日本でも双極性障がいやうつ病・うつ状態へも適応が認められています。ただし、うつに対して使う場合は、SSRIやSNRIなどのメイン薬と併用して使われます

そして、2016年にアスペルガー症候群(自閉症スペクトラム障害)の易刺激性に対しても適応が認められました。アスペルガー症候群を含む自閉症スペクトラム障がいの患者さんは、コミュニケーションの質的な異常と、こだわりの強さが大きな特徴です。これらの特徴があると環境の変化に対して柔軟に対応できず、上手く適応できないことも少なくありません。

そのため、かんしゃくを起こしてしまったり、衝動性や攻撃性が目立ったり、自傷行為に走ってしまったりすることもあります。こうした症状を「易刺激性」と言いますが、エビリファイ®は気持ちを穏やかに落ち着けることで、これらの症状を抑え、コントロールしやすくしてくれるのです

エビリファイ®のメリット・デメリットには、以下のようなものがあります。

メリット
  • 陰性症状(感情や意欲がなくなる、思考能力が低下する)や認知機能の改善が期待できる
  • 副作用が全体的に少ない
  • 気分を安定させる作用が期待できる
  • 1日1回の服用でよい
  • 形が豊富、ジェネリック医薬品が販売されているなど、選択肢が多い
デメリット
  • 鎮静作用が弱い
  • 陽性症状(幻覚や妄想、思考障がいなど)を悪化させることがある
  • アカシジア(脚がむずむずしてじっと座っていられない)が多い

副作用はある?

エビリファイ®は、以下のような人は副作用を引き起こしやすい可能性がありますので、必ず主治医と薬剤師に伝えましょう。

  • 以前、薬を使用してかゆみや発疹などのアレルギー症状が出たことがある
  • 糖尿病にかかっているまたはかかったことがある、家族がかかったことがある
  • 肝障害や心血管疾患、低血圧、てんかんなどのけいれん性疾患にかかっているまたはかかったことがある
  • 自殺を図った、または自殺願望が強い
  • 脳の器質的障がいや、衝動性が高い併存障がいがある/li>

また、妊娠中や授乳中の人は胎児や乳児に影響を及ぼす可能性がありますし、他に薬を飲んでいる人は相互作用で効果が弱まったり強まりすぎたりする可能性がありますので、これも必ず主治医と薬剤師に相談しましょう。

エビリファイ®の副作用としては、以下のようなことが考えられます。

主な副作用
  • 不眠・神経過敏・アカシジア(足がむずむずしてじっとしていられない)・振戦(手足の震え)・不安
  • 体重減少・筋強剛(関節を曲げるときに抵抗を感じる)・食欲不振・食欲亢進
  • 倦怠感・傾眠・寡動(表情に乏しい)・よだれが出る
  • 体重増加・吐き気・嘔吐・ジストニア(筋緊張異常)・便秘など
まれに起こる副作用
  • 口が渇く、よく水を飲む、尿が多く出る(糖尿病性ケトアシドーシスや糖尿病性昏睡の初期症状の可能性)
  • 動かずじっと黙っている、筋肉のこわばり、急激な発熱(悪性症候群の初期症状の可能性)
  • 舌を動かしたり出し入れする、絶えず噛むような口の動きをしている(遅発性ジスキネジアの初期症状の可能性)
  • 吐き気・嘔吐、便秘、激しい腹痛(麻痺性イレウスの初期症状の可能性)
  • 脱力感、筋肉の傷み、赤褐色尿(横紋筋融解症の初期症状の可能性)

いずれの場合も、このような症状が出たらすぐに主治医や薬剤師に相談しましょう。また、まれな副作用は、すべて()内の重篤な疾患の初期症状である可能性があります。こうした特徴的な副作用が現れた場合は、すぐにエビリファイ®の服用を中止し、医師の診察を受けましょう

また、ここに記載したもの以外でも、気になる症状が出た場合はすぐに医師や薬剤師に相談しましょう。

おわりに:エビリファイ®は易刺激性をコントロールしやすくしてくれる薬

エビリファイ®は、もともと統合失調症の薬として販売開始されましたが、2016年に小児のアスペルガー症候群の易刺激性に対しても適応が認められました。エビリファイ®によって気持ちが穏やかになると、これらの行動もコントロールしやすくなります。

エビリファイ®は比較的副作用の少ない薬ですが、まれに重篤な疾患を引き起こすこともありますので、気になる症状が現れた場合はすぐに主治医の診察を受けましょう。

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