発達障がいの一種であるADHD(注意欠陥多動性障がい)は集中力の低さや注意散漫、衝動的な行動がみられるのが特徴ですが、何が原因で発症するのでしょうか。
今回はADHDの原因について、遺伝や育った環境による影響から発症する可能性に触れながら、解説していきます。
ADHD(注意欠陥多動性障がい)は先天的?後天的?
ADHDを発症する原因は、まだはっきりとはわかっていません。
ただ以下の根拠から、ADHDが「生まれつきの脳の機能異常によって発症する疾患」であることは間違いないと考えられています。
- ADHDが生まれつきの脳機能異常から起こるとされる根拠
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- ADHD患者の脳には、他の人に比べて容積の少ない部位がある
- ADHD患者の脳のうち前頭前野と呼ばれる部分の、機能バランスが崩れている
- ADHD患者の脳神経は、他の人に比べ活性が低い傾向が見られる
上記のようなADHD患者の脳機能の異常は、脳神経伝達物質の一種である「ドパミン」と「ノルアドレナリン」の働きが低下することで起こると指摘されています。
ドパミンとノルアドレナリンのどちらも、損得勘定に基づいた物事の取捨選択や、目的に向かって計画を立案・実行する際に必要とされる脳神経伝達物質です。
つまりこれら2種類の脳神経伝達物質の量や働きの低下は、「じっとしていられない、待てない」「段取りを組んで行動できない」など、ADHD特有の症状を誘発する可能性があると考えられます。
上記の理由から、2019年現在ADHDは特定の脳神経伝達物質の不足、またこれによる特定部位の脳機能の異常が原因で引き起こされる発達障がいだと考えられています。
ADHDは遺伝や育った環境は影響しているの?
一般的にADHDは遺伝と環境など、複数の要因が絡み合って発症するとされます。
まず遺伝的要因についてですが、既にADHD発症に関与する遺伝子はいくつか発見され、親子や兄弟間でADHDが発症しやすいという因果関係も確認されています。
また近年の研究では、妊娠や出産時のトラブル、生まれてからの生育環境が要因の1つとなり、ADHDを発症する可能性があることもわかってきました。
ただADHDの原因として指摘される環境的要因とは、胎児の頃の感染症や生まれてからの経済的苦境・虐待などであり、一般的なしつけや生活環境を指すものではありません。
親や兄弟にADHDや発達障がいが見られたからと言って、その子どもが必ずADHDを発症するというわけでもないのです。
ADHDの原因について現時点で言えることは「遺伝や胎児の頃の生育環境、または誕生後の生活環境による合併症により、発症する可能性がある」ということであり、「親の甘やかしや一般的なしつけが、発症に関与する可能性は低い」ということです。
遺伝や胎児期・誕生後の生育環境がどの程度ADHD発症に関連するのか、詳しい相関関係や確率は未だ不明で、研究がすすめられています。
おわりに:ADHD発症には遺伝や環境など、複数の要因が関与するとされる
ADHDの特性・症状が現れるのは、生まれつき脳の機能や脳機能を補助する神経伝達物質に異常があるためと考えられています。しかしADHDを引き起こす脳の機能異常がなぜ起こるのか、その直接原因やメカニズムはまだ詳しくわかっていません。
2019年現在では、遺伝や胎児の頃の感染症の有無、誕生後の経済状況や虐待など、複数の要因が絡み合うことで起こると考えられています。今後の研究による原因究明が待たれます。
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