発達障がいの一種・アスペルガー症候群は、症状の現れ方で受動型・積極奇異型・尊大型・孤立型の4つに分類されます。
今回はアスペルガー症候群のうち、特に「孤立型アスペルガー症候群」と呼ばれるタイプの特徴をメインに、円滑にコミュニケーションをとるポイントを紹介します。
アスペルガー症候群の4つのタイプ
アスペルガー症候群には、大きく分けて以下4つのタイプがあります。
孤立型
- 自分1人の世界を好み、他者とかかわることに全くと言っていいほど関心がない。
- 基本的にいつも1人で行動し、他者と視線を合わせようとしない。
受動型
- 自分から他者にかかわろうとはしないが、他者からの呼びかけ・働きかけには応じる。
- ただし、他者からの働き方は基本的にすべて受け入れてしまうため、嫌なことまえ受け入れてパニックになってしまうこともある。
積極奇異型
- 周囲や相手の状況に構わず、他者と積極的にかかわろうとする。迷惑になっている可能性に気付かず、他者に一方的に話しかけたり、何度も同じことを離したりしてしまう。
尊大型
- 他者に対し、自分の考えや言い分を押し付けるような強い物言いをしてしまう。
- 人を見下したような態度や言い方をして、相手を怒らせたり、傷つけたりすることも多い。
同じアスペルガー症候群の人であっても、他者とのコミュニケーションにおいてどの特性を持っているかには個人差があります。
また、同じ人でも成長や加齢によって特性が変化することも少なくありません。
子どもの頃は積極奇異型であったのに、成長するにつれて孤立型や尊大型になっていく、というケースも多々報告されています。
孤立型アスペルガー症候群の特徴は?
ここからはアスペルガー症候群の4タイプのうち、特に「孤立型アスペルガー症候群」の特徴を紹介していきます。
アスペルガー症候群のうち、対人関係において以下の特徴が見られる人は孤立型の可能性が高いでしょう。
- 孤立型アスペルガー症候群に見られる特徴
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- 本人が周囲の状況、他者に関心を持っていないように見える
- 集団のなかに入っても、周囲に人がいないかのように振る舞い続ける
- 一人遊びを好み、たとえ集団の中に入ってもグループでは遊ばない
- 他者に対し愛想笑いなどをしないため、愛想の悪い人という印象を持たれがち
- 無理に他者と関係を持たせようとすると、不快や緊張した様子をあらわにする
なお、上記のような孤立型アスペルガー症候群の特性は、特に幼少期に見られやすいことがわかっています。
この4つの型のほか、「大仰型」と呼ばれる分類も登場し、5つの型でアスペルガー症候群を分ける考え方もあります。
子どもが孤立型アスペルガー症候群だとどんな特徴がある?
孤立型アスペルガー症候群の子どもは、他の児童や保護者、教員に対し以下のような特徴的な反応を示します。
- 他の子どもが話しかけても、一切反応しない
- 他の子どもはもちろん、コミュニケーションをはかる大人とも視線が合わない
- 特定の図鑑やゲームなど、自分の好きなことにのみ固執し没頭する
- 周囲や他者をシャットアウトし、自分の殻に閉じこもっているように見える
孤立型の学校や家族との人間関係のポイント
孤立型アスペルガー症候群の子どもは、他者に対し潜在的な脅威を感じているそうです。
このため、いきなり他者と向き合いコミュニケーションをとらせようとするのは、本人の不安や緊張を高めてしまいます。
まずは保護者や教員など、身近な大人が1対1の信頼関係を築くところから始めましょう。
その際、真正面から目を合わせて話そうとするのではなく、まずは子どもの斜め後方から短い言葉で話しかけ、徐々に声掛けに慣れさせてください。
この方式で他者とかかわること、話すことに慣れてきたら、大人から周囲の子どもたちにある程度説明をしたうえで、他の子どもと接する機会を設けると良いでしょう。
なお、学校や家庭で孤立型アスペルガー症候群の人と接するときは、以下を参考に特性に配慮して接してあげてくださいね。
孤立型アスペルガー症候群の人と接するときの注意点
- 基本的に受け身なので、コミュニケーションをとりたいときはこちらから働きかける必要があると理解する。
- 表情から感情を汲み取ったり、空気を読むことはとても苦手なので、察してもらおうとはせず具体的な言葉で伝える。
- 他者とマメに連絡を取り合うことも苦手なので、連絡は必要最小限にとどめる。
- 1人で過ごす時間がないと精神的に追い詰められてしまうので、一緒に過ごす予定は本人の自由時間に最大限配慮して決める。
勉強面においては、特性ゆえに本人が強い興味・関心を示すこと=才能を伸ばせるよう、家庭や学校で配慮する必要があります。
アスペルガー症候群の子どものほとんどは、知的発達の遅れを伴いません。
このため、放っておいても自分が興味のある分野の勉強は黙々と続けていますし、その気になれば全教科で好成績を収めることも可能でしょう。
また本人の興味・才能を伸ばす方向で勉強を続けていれば、いずれは好きな分野の専門家・研究者として活躍する道も見えてきます。
アスペルガー症候群の子どもの勉強をサポートしたいなら、決して本人が興味を示すものを取り上げず、その分野をより深く勉強できる環境を整えてあげてくださいね。
孤立型アスペルガー症候群が抱える仕事の悩みって?
孤立型アスペルガー症候群の人は、与えられた仕事を黙々と進め、高い成果を上げることができるでしょう。
自分の意見を述べることもできるので、仕事上必要な最低限のコミュニケーションだけなら、問題なくとれるはずです。
しかし、他者との密なコミュニケーションが必要なチームでの仕事や、複数の仕事を並行するマルチタスク、全く興味を持てない分野の仕事には向きません。
環境を整備し、任せる仕事内容を選んで、孤立型アスペルガー症候群の人の仕事の適性を考えることが重要です。アスペルガー症候群の人や周囲の人が気持ちよく働き、成果を収められるよう配慮してあげてください。
おわりに:孤立型アスペルガー症候群の人は他者とかかわるのが苦手。自分のペースと時間を保てるよう、配慮が必要
アスペルガー症候群は、対人関係に現れる特性により4タイプに分けられます。なかでも最も他者への関心が低く、自分の世界や時間を大切にするのが「孤立型」です。孤立型アスペルガー症候群の人の対人関係は基本的に受け身で、他者を必要としません。自分の時間やペースを守れないと、精神的に追い詰められてしまいます。周囲の人はこの特性を理解し、家庭や学校、仕事において合理的な配慮をする必要があります。
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