字がうまくかけない書字障がい(ディスグラフィア)とは?

読み書き、計算などいわゆる勉強をする上での能力に問題がある状態のことを「学習障害(LD)」と呼びますが、その中でも字がうまく書けない学習障害のことを「書字障害(しょじしょうがい)」または「ディスグラフィア」と言います。
本人は努力しているのにうまく文字が書けない、という場合、ディスグラフィアかもしれません。子どもの様子が気になったら、一度チェックしてみてください。

書字障がい(ディスグラフィア)の特徴って?

学習障害(LD)は、「読む・書く・聞く・話す・計算する・推測する」の6つの能力のうち、どれか1つ以上に障害がある状態のことですが、中でも「書く」ことに困難がある状態のことを「書字障害(ディスグラフィア)」と呼んでいます。アメリカ精神医学会の「DSM-5」では、限局性学習障害のうちの1つとし「字を書くこと、文法と句読点の正確さ、書いた字が明確かどうかや構成力があるかどうかに障害がある状態」と定義しています。

ディスグラフィアは比較的新しい概念であることから、定義や呼称はまだ曖昧なところも多く、書字障害のほか、書字表出障害などと呼ばれることもあります。また、ディスグラフィアは「書き」の困難ですが、「読み」の困難であるディスレクシア(読字障害、読み書き障害)に伴って現れることもあります。

これら学習障害の大きな特徴の1つとして、「知的発達そのものには大きな遅れがない」ということが挙げられます。つまり、文字がうまく書けなくても、話したり行動したり、計算したりという他の能力には問題がなく、文字を書くという特定の所作にだけ困難が生じている、という状態なのです。

その姿だけを見ていると「努力していないから書けないんだ」「苦手なら人よりもたくさん練習すれば書けるようになる」といったように、本人の努力不足であるという誤解が生じてしまうことも少なくありません。
さらには、保護者に対しても「子どもに家で勉強をさせていないのではないか」といった偏見が生まれてしまうこともあります。

しかし、ディスグラフィアをはじめ、学習障害では本人がどんなに努力していても、周囲の子と同じやり方で字を書くことができないのです。

そのため、何らかの方法でやり方を工夫する必要があります。工夫の方法については、この記事の最後でご紹介します。

ディスグラフィアの代表的な症状には、以下のようなものがあります。

  • 書き文字がマスや行から大きくはみ出す
  • 鏡文字を書いてしまう
  • 学年相当の漢字が書けない
  • 余分な線や点を書いてしまう
  • 間違った助詞を使ってしまう
  • 句読点をつけ忘れる

このうち、鏡文字に関しては発達の過程で幼少期には誰にでも起こることですので、鏡文字だけでは必ずしもディスグラフィアとは限りません。

ディスグラフィアの詳しい症状って?

ディスグラフィアで現れる症状は、大きく分けて「文字の書き方に現れるもの」「文章の書き方に現れるもの」の2つがあります。まず、文字の書き方に現れる症状から詳しく見ていきましょう。

字を書くスピードが遅い
  • 先生の言ったことをノートに書き取る、テストの解答を書く、などに時間がかかる
  • 頭ではわかっていても、書く時間が遅くてテストの点が悪くなることも
正しい書き順で書けない
  • 単なるミスというより、明らかに書きづらそうな妙な書き順で書く
  • 漢字の「一」を右から書いたり、「上」を横→横→縦と書いたりする
文字の点や線を忘れたり、つけ加えたりする
  • 漢字の「犬」の点を左上につけたり、忘れたりする
形の似ている文字を書き間違える
  • 「わ」と「れ」、「止」と「正」のように、似た文字を書き間違えてしまう
「へん」と「つくり」を逆にしてしまう
  • 「海」のさんずいを右に書いてしまう など
鏡文字を書く
  • 鏡に写したように、左右が完全に反転した文字を書く

複雑な文字の書き順を間違えることは誰にでもありうることですが、ディスグラフィアの場合、「一」や「上」のようなごく単純な文字であっても間違えたり、正しい書き順を知っている人から見ると非常に書きづらそうな順番で書くのが特徴です。また、「へん」と「つくり」の形そのものは合っているのに、左右逆に書いてしまうこともあります。

さらに、文章を書く時にも以下のような症状が現れることがあります。

文字を大きく書いたり小さく書いたりしてしまう
  • マスや行におさまらなかったり、小さすぎる文字を書く
文をまっすぐに書けない
  • 横書きに書くと右肩上がりや右肩下がりになったり、縦書きに書くと文が右寄り、あるいは左寄りになってしまうことがある

これも多少であれば発達過程でありうることで、一般的な場合はマスや行を意識すれば改善できます。しかし、ディスグラフィアの場合は「マスや行を見て」「意識して」と言われただけではどうすれば良いのかわからないことが多いです。そこで、手本を見ながら写し書きをしてもらう、白紙に文を書くときはガイドの線を引くなどすると書きやすくなります

ディスグラフィアになってしまう原因とは?

ディスグラフィアになる原因は、2019年現在、はっきりとはわかっていません。また、原因が1つではなく、人によってさまざまな原因があると考えられています。主に考えられている要素としては、以下のようなものがあります。

視覚情報処理の不全:文字の形がわかりにくい
  • 視覚情報処理とは、文字のパーツの位置関係や大きさを認識し、パーツから形を構成する働き
  • 漢字はアルファベットよりも複雑な形をしているため、小学校で困難が生じやすい
  • 視覚過敏によって、紙の色と文字の色のコントラストを感じ取りすぎてノートが見られないこともある
音韻処理の不全:文字の読み方がわかりにくい
  • 音韻処理とは、どの文字がどの音と対応しているか理解する働き
  • 「り」と「ん」と「ご」を「りんご」というひとまとまりの単語として捉えるのもこの働きによる
  • ディスレクシアに伴うディスグラフィアの場合、これが原因と考えられる
発達性協調運動障害:不器用で文字がうまく書けない
  • 不器用症候群とも呼ばれ、日常生活での協調運動が不正確だったり、困難となる
  • 字を書く以外にも、目の情報と指先の作業の協調運動全般が遅かったり、不正確になる
  • 単に筆圧が薄い場合、筋力が弱くうまく鉛筆を握れないことがある

例えば、文字の「へん」と「つくり」を入れ替えてしまったり、余分な点や線をつけ加えてしまう場合、視覚情報処理の不全と考えられます。また、発達性協調運動障害の場合、ノートを取るのが遅くなったり、テストで制限時間内に書けないという症状が現れます。しかし、これらの要素がなぜ生じるのかについてはまだわかっていませんので、今後の研究が待たれます。

おすすめの訓練方法はある?

初めにもご紹介したとおり、ディスグラフィアによる書き取りの遅さや字の間違いは本人の努力不足によるものではありませんから、一般的な子どもと同じような練習を繰り返していても上達できません。しかし、ディスグラフィアの特徴を正しく見極め、それに合わせた訓練をすれば、ディスグラフィアの子どもでもある程度正しい文字や文章を書けるようになる可能性があります

前章でご紹介した3つの要素のうち、ディスレクシアのみの原因となる「視覚情報処理の不全」「発達性協調運動障害」について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

視覚情報処理の不全による場合

視覚情報処理の不全による場合、「文字のバランスが悪い」「文字や数字が正しく読めても書けない」「似た文字を書き間違える」「視覚過敏がある」の4つの症状が考えられます。

文字のバランスが悪い原因は、マスの空間が捉えられないことだと考えられます。そこで、マスを4等分して4色のブロックに分け、どのパーツがどのブロックに位置するのかを理解してもらう方法がおすすめです。

文字や数字が読めても正しく書けない場合、形として覚えるのが苦手なのだと考えられます。この場合、象形文字ならイラストを使ったり、「へん」と「つくり」をパズルのように組み合わせて覚える訓練をしていくのが良いでしょう。

似た文字を書き間違えてしまう場合、例えば「わ」と「れ」の最後の部分を太くしたり、色をつけたりして、はっきり目立つようにして違いを意識する方法があります。混乱がおさまり、自然に理解できるようになったら、強調を外して構いません。

視覚過敏があり、紙の白さと文字の黒さで目がチカチカしてしまう場合は、真っ白なノートをやめ、コントラストが激しくならないような色つきのノートを使ったり、色つきの眼鏡をかけるなど、視覚過敏そのものを緩和してあげましょう。

発達性協調運動障害による場合

発達性協調運動障害による場合、「黒板の文字をノートに書き写せない、非常に遅い」「鉛筆でうまく書けない」という2つの症状が考えられます。

黒板の文字をノートに書き写すためには、「黒板を見て」「それを一時的に記憶し」「ノートのしかるべき場所に書き」「また顔を上げて前を見る」といった素早い反復運動や記憶・情報処理能力に加え、焦点を移動するための眼球運動が必要です。そこで、風船バレーやスーパーボール遊びなど、目で素早く追う遊びで訓練すると良いでしょう。また、学校と話し合い、マス目のある黒板を使ってもらったり、iPadなどの端末で黒板の写真を撮ることを許可してもらう、というのも有効な方法です。

鉛筆でうまく書けない場合、指先の力が弱い場合と、手の安定性が弱い場合があります。いずれの場合も細い鉛筆よりも太い鉛筆を使って鉛筆を持って書く練習をしたり、補助グッズを使ってグリップなどを取りつけるのが良いでしょう。また、筆圧が極端に弱くなってしまいがちなので、2Bや4Bなどの芯が濃くて柔らかい鉛筆を使い、自信をつけることも大切です。

鏡文字を書く場合はどうしたらいい?

鏡文字は、最初にご紹介した通り、一般的な発達の過程でも出てくる状態ですから、鏡文字だけでディスグラフィアと決めることはできません。
とくに、幼い頃は左右を認識できていないために鏡文字を書いているだけという可能性があります。

そこで、まずは日常生活の中で「右から靴を履こう」「左手でコップを取ってみて」など、左右を意識した声かけを取り入れ、「右」「左」という概念を定着させることが必要です。

日常生活での左右は理解できていても文字が鏡文字になる、あるいは鏡文字以外にも特徴的な症状が現れている、という場合はディスグラフィアの可能性があります。ディスグラフィアで鏡文字を書いてしまう場合は、薄く書かれた見本をなぞって練習するなどの方法が有効です。

おわりに:ディスグラフィアは工夫して訓練すると改善される場合がある

ディスグラフィアは本人の努力不足ではなく、学習障害の1つです。しかし、絶対に文字が書けないというものではなく、訓練の工夫次第である程度文字が書けるようになる可能性は十分にあります。ぜひ、ここでご紹介した方法を参考に、少しずつ訓練してみてください。
なぜディスグラフィアを発症するのかはわかっていませんが、要素によってある程度訓練の目安を立てられます。子どもの状態に合わせて訓練を行いましょう。

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