アスペルガー症候群とADHDは、どちらも発達障がいと呼ばれる脳機能障がいの1つで、コミュニケーションや社会性、想像力などの障がいが症状として現れます。共通点もありますが、アスペルガー症候群とADHDは、具体的にどんなところが違うのでしょうか?また、併発することはあるのでしょうか?
アスペルガー症候群とADHDの違いと共通点って?
アスペルガーとADHDは、ざっくりとした特徴で分けると以下のようになっています。
- アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)
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- コミュニケーション、言葉を介さないやり取りなどが苦手である
- 変化を嫌い、決められたことや定型のパターンを好む
- こだわりが強い
- 特定の刺激に対し、感覚過敏を持つ人もいる
- ADHD(注意欠陥・多動性障がい)
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- 何らかの理由で脳内の神経伝達物質「ドーパミン」が不足していると考えられる
- 忘れ物や人の話を聞いていないなど、注意力が欠如している
- 思ったことをすぐに口にしてしまうなど、衝動性がある
- 落ち着きがなく、じっとしていられない多動性
では、これらの発達障がいの違い、共通点はそれぞれどんなものがあるのでしょうか?それぞれ、詳しく見ていきましょう。
アスペルガー症候群とADHDの違い
まず、アスペルガー症候群とADHDの違いとしては以下の4つのポイントが挙げられます。
- 注意や関心の向き方
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- アスペルガー:意思を外に出して表現するのが苦手で、こだわりが強く、自分のパターンを強く意識する。そのため、注意・関心は自分の「内側」へと向きやすい
- ADHD:あらゆる物事が目につきやすく、行動力もある人が多い。そのため、注意・関心は自分の「外側」へと向きやすい
- 得意分野
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- アスペルガー:同じ場所で、1つのことにじっと集中して取り組むことが得意。集中しすぎて、過集中になりやすいことが弱点
- ADHD:1つの場所にとどまるのが苦手で、活動的に動くのが得意。じっとしていられず、落ち着きがないのが弱点
- 他者から見た雰囲気
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- アスペルガー:おとなしく控えめ
- ADHD:人当たりがよく、明るい雰囲気
- ※ただし、いずれの場合も本人の内面と一致するとは限らない
- 執着の強さ
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- アスペルガー:関心のあることへの執着が強く、それに関連したことの記憶力も高い。反面、過去を引きずりやすく変化が苦手なことから、気持ちの切り替えも苦手なことが多い
- ADHD:注意や興味が移ろいやすく、1つのことに対する執着は基本的に薄いため、気持ちの切り替えは得意な人が多い。しかし、興味・関心の強いことに対する執着は強くなりやすい
このように、アスペルガーは1つのことに執着する、自分の内面を掘り下げていく、そのためおとなしく内向的なタイプが多いのに対して、ADHDは興味や関心がころころと変わり、外の世界への興味・関心が高いため、外向的で活発なタイプが多いと言えます。他の人から見たときは、この「外向的」か「内向的」かの違いがもっとも目につきやすいと言えるでしょう。
アスペルガー症候群とADHDの共通点
逆、アスペルガーとADHDに共通するポイントとしては、以下の4つが挙げられます。
- コミュニケーションに問題を抱えやすい
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- ADHDは相手の話に集中しにくい、アスペルガーは相手の話の意図を汲み取りにくいという特徴の違いはあるものの、コミュニケーションに難を抱えやすいことが共通
- コミュニケーションが難しいことから、対人関係に苦しみやすい
- 自己肯定感が低い人が多い
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- 多くの人が、過去の失敗や対人関係の難しさから「自分はダメな人間だ」と思いやすい
- 怒られたり友人との関係が悪くなったりすることが多く、自己肯定感が育ちづらい
- ストレスの処理が苦手
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- ADHDはストレスや自分の気持ちの整理が苦手で、アスペルガーは過去に受けたストレスを引きずりやすい
- これらのことから、うつ病やパニック障がいなどの二次障がいを招きやすい
- 興味・関心のあることには能力を発揮しやすい
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- どちらも、興味・関心のあることには過集中するほど熱中しやすい
- そのため、専門職など特定の分野に対してはめざましい能力を発揮する人も多い
アスペルガーとADHDの共通点としては、コミュニケーションやストレスの処理が苦手なこと、そのために自己肯定感が低いこと、というマイナス面のほか、共通の強みとして、興味や関心のあることにはめざましい能力を発揮しやすいというプラス面があります。マイナス面はうまく工夫しながら、プラス面を伸ばしていけるようにしましょう。
アスペルガー症候群とADHDの両方を持つことはある?
発達障がいの人は、必ずしも一種類の障がいだけを持っているとは限らず、またさまざまな合併症状を発症することが多いとされています。よって、ADHDとアスペルガー症候群も、両方の診断を受ける人も少なくありません。また、前述のように両方の障がいに共通する症状もありますので、はっきりとした区別が難しい場合もあります。
医師の中には、ADHDとアスペルガー症候群は症状が全く異なるため、合併しないと断言する人もいますが、実際に両方の症状を持つ人もいて、どちらかのみの診断を下せない人も存在します。とくに、アスペルガー症候群が自閉症スペクトラムの一部に統合されてからは、ADHDと合併することもあるという診断を認める方向に変化してきています。
そもそも、発達障がいに関してはまだ解明されていないことも多く、そのため診断は簡単なものではないのです。特性や困りごとには個人差が多いだけでなく、2つの障がいが合併していることや、似たような症状が見られることがあるためです。とはいえ、障がいの症状や原因によって対処法も変わってきますから、慎重に診断を下さなくてはなりません。
とくに、ADHDとアスペルガー症候群を併発した場合、本人が言葉で説明しにくく、意思疎通がはかりにくいことに加え、興味・関心が次々と移り変わっていくことから、周囲の人は困惑したり、振り回されたりしてしまうことも少なくありません。あくまでも発達障がいは個人差の大きな障がい・特性であることを周囲の人に理解してもらい、適切な支援をしてもらう必要があります。
おわりに:アスペルガーとADHDは併発することもある
アスペルガー症候群とADHDは、いずれも発達障がいと呼ばれる脳機能障がいの一種です。アスペルガー症候群は1つのことに集中しやすく、ADHDは興味・関心が移りやすいなど、違いもありますが、コミュニケーションの障がいや専門職への強みなど、共通点もあります。
そのため、アスペルガーとADHDを併発することもあります。大切なのは、発達障がいは個人差の大きな障がいであることを踏まえ、周囲の人に適切な理解と支援をしてもらうことです。
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