パニック障がいとは、ある状況に陥ったとき、突如として激しく理由のない不安に襲われ、激しい動悸やめまい・呼吸困難などの身体症状が現れるものです。
発作が起こると死の恐怖を感じる人も少なくありませんが、パニック発作で死ぬことはなく、正しい治療を行えば治せる疾患です。しかし、治療には時間がかかるため、治療中にパニック障がいの症状を軽減できるような日常生活での対策を見ていきましょう。
パニック障がいの治療にはどれくらいの期間がかかるの?
パニック障がいは、多くの精神疾患と同じように、発症の程度にも進行度合いにも個人差がありますが、多くは発症後、以下のように経過していきます。
- 急性期(1ヶ月〜1年間)
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- 激しい身体症状を伴うパニック発作が頻繁に起こる
- パニック発作を起こすと余計に不安や恐怖が高まり、その不安や恐怖が次の発作を引き起こす悪循環に陥る
- 薬を使い、まずパニック発作を抑えることが重要
- 移行期(3ヶ月〜1年間)
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- パニック発作の頻度は減っていくものの、予期不安や広場恐怖が現れてくる
- 投薬を続けて脳の神経が鎮静している状態を維持しつつ、症状に応じて徐々に薬の量を調整していく
- 慢性期(半年〜数十年間)
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- パニック発作の回数はかなり減るものの、抑うつ症状や残遺症状(慢性期の心身の不調)が現れる時期
- 残遺症状はパニック発作と似ているものの、程度が穏やかなもので、持続的に現れる
- 移行期から慢性期は、精神療法を行いながら段階的に薬の量を減らしていき、最終的には断薬を目指す
発症してから完全に断薬できるまでの時間には非常に個人差があり、半年〜1年程度で断薬できる人もいれば、20年、30年と長い時間をかけて症状を落ち着かせていく必要がある人もいます。不安や緊張感から、焦る気持ちもあるでしょうが、治療が不十分なまま終わってしまうと残遺症状が残りやすく、結局治療にさらなる時間がかかることになります。
そのため、一般的にパニック障がいの治療においては、少なくとも1年間程度は治療を継続することが推奨されています。パニック発作や予期不安・広場恐怖が落ち着き、日常生活に支障をきたさず過ごせるよう、根気よく治療を行っていきましょう。
パニック障がいを治すのに、生活習慣が関係するって本当?
意外なことかもしれませんが、パニック障がいを治療する上で、生活習慣の見直しをすることは非常に大切です。生活習慣を整えると、不安や緊張が高まりやすい状態になりにくくなります。さらに、ストレス軽減効果も期待できますので、再発の予防にもつながります。もし、今の生活習慣で以下のような「パニック障害のリスク要因」となるものがあれば、できるところから改善していきましょう。
- 喫煙・飲酒・カフェインの多い飲料の摂取
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- ニコチンやアルコールには不安を紛らす作用があるものの、持続時間は短い
- 後からいっそう強い不安感に襲われる「リバウンド」が起こったり、薬の効果を妨げたり、パニック発作の引き金になったりする
- コーヒーや紅茶など、カフェインの多い飲料もパニック発作を引き起こしたり、症状を悪化させたりすることがある
- 可能なら禁煙・禁酒するとともに、カフェインの多い飲料はなるべく避けるとよい
- 過労・ストレス
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- 疲労によって筋肉に蓄積する物質が、パニック発作を促す原因物質の一つとされている
- ストレスも症状悪化の原因となるため、疲れが溜まる前に休養をとり、ストレスの上手な発散方法を見つけておく
- 感情が大きく揺れるような人間関係
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- 感情のアップダウンが激しくなりやすい人間関係は、大きなストレスとなり症状悪化につながる
- パニック障がいのある人は、とくに不安や恐怖感が強いことから、物事の感じ方が敏感で傷つきやすくなっている
- とくに急性期には、こうした人間関係からはできるだけ離れておくことが大切
- 風邪
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- パニック障がいでは免疫力・体力が落ち、風邪をひきやすくなる
- 風邪を引くことや、咳止め薬を飲むことがパニック発作の原因となることも
- 風邪の症状は残遺症状と区別がつきにくいため、気になる症状が現れたら医師に相談する
- 蛍光灯の光
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- 蛍光灯の明るすぎる光や、光のちらつきが不安感を強めることがある
- 可能なら白熱電球やLED電球を使うとよい
また、改善するために以下のような工夫を取り入れると良いとされています。もちろんこれも最初から全部行うのは難しいでしょうから、できることから徐々に行っていきましょう。
- 自立訓練法
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- 自己暗示によって心身の緊張を解きほぐし、リラックス状態へと導く方法
- 「心臓が静かに拍動している」「お腹があたたかい」などの安定した体の状態を感じ、その状態を言葉にして心の中で繰り返し唱える
- 筋肉の緊張がゆるんで心拍数が落ち着き、体がリラックス状態になることで心の緊張も解ける
- 最初は専門家の指導を受けながら、正しい実践方法を身につけるのがおすすめ
- 規則正しい生活リズムを作る
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- パニック障がいがある人は、不安や緊張から睡眠リズムが崩れやすい
- 体内時計の乱れは自律神経の緊張につながり、パニック発作を起こしやすくなる
- 決まった時間に就寝し、決まった時間に起床するよう、意識的に正しい生活リズムを保つ
- 体内時計をリセットするためには、3食を同じ時間にとることも有効
- とくに、朝食を抜くと体内時計が整いにくいとされるため、朝食の時間を揃える
- 運動
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- 適度な有酸素運動は疲労物質の蓄積を防ぎ、心を安定させる「セロトニン」の分泌を増やす
- 軽く息がはずみ、心地良い汗をかく程度の運動を毎日行うのが理想的
自分なりのパニック発作への対処法を見つけよう
また、パニック発作が起こったときの対処法や、不安に襲われそうになったときの気の紛らわし方をあらかじめ決めておくことも不安の解消、恐怖感の軽減に役立ちます。例えば、以下のようなことを決めておきましょう。
- パニック発作が起こったときのために
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- 電車やバスに乗るときは、すぐ降りられるようドアの近くに立つ
- 頓服の薬をいつも持ち歩いておく
- 不安や恐怖を紛らわせるには
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- 音楽を聴きながら行動する
- 常にペットボトルと飴を携帯し、口の中が乾くのを防ぐ
- 自分なりのおまじないを作っておく
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- 家族やペットなど、安心できる存在の写真を持ち歩く
- 「大丈夫」「落ち着いて」など、自分の気持ちが落ち着く言葉をとなえる
おわりに:パニック障がいの治療中は、日常生活にも一工夫してみよう
パニック障がいの治療には、短くても半年〜1年くらいはかかることを知っておきましょう。中には、10年単位で時間をかけて治療していく人もいます。ですから、根気よく疾患と向き合っていくことが大切です。
また、日常生活でできる工夫として、生活習慣の見直しや、自律訓練法の習得、自分なりの対処法を決めておくことも、不安や恐怖・ストレスなどのリスク要因を軽減するのに役立ちます。
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