発達障がいの子どもには、どんな習いごとがおすすめ?

発達障がいとは、生まれつき脳機能に何らかの異常があり、知的能力には問題がないものの、対人関係に問題があったり、多動性や不注意の症状が見られたり、読み書きや計算など特定のことだけが難しかったり、という特性を持っていることです。

生まれつきの特性なので、幼稚園や小学校などの集団生活で問題を抱える子どもも少なくありません。では、発達障がいの子どもが習いごとをするなら、どんなものが良いのでしょうか?

発達障がいの子どもの習いごとを選ぶときの注意点は?

発達障がいの子どもは、身体的な障がいと違い、知的能力も正常なことが多いため、一見、定型発達の子どもと同じように見えてしまい、外からぱっと見ただけでは障がいがあるかどうかわかりません。そのため、発達障がいはれっきとした脳機能の異常であり、本人の性格や親のしつけには関係ないとわかった現在でも、その特性による問題行動や苦手なことを「保護者のしつけがなっていないからだ」「本人が怠けているだけだ」と勘違いされてしまうことがまだまだあります。

すると、周囲の子どもや大人からたびたび「変な子」という奇異の目で見られたり、叱責を受けたりすることがあります。そのため、発達障がいの子どもは得てして自己肯定感が育ちにくく、自分はありのままで十分に価値のある人間である、という健全な自尊心が持てなくなってしまいます

そこで、習いごとを通じ、子どもの行動を認めて褒めて、自己肯定感を育ててあげることはとても大切なことです。しかし一方で、「できたら褒められるけれど、できないと余計に怒られる」と子どもが感じてしまうと、たとえできることが増えたとしても、自己肯定感を育てる上ではマイナスの結果になってしまうことも考えられます。

ですから、できるだけ発達障がいの特性に沿って、子どもが「自分もできた」「楽しい」と感じられるような習いごとを選び、子どもの興味や意欲を活かしてあげましょう。具体的には、以下のような10個のポイントを意識しながら選ぶのがおすすめです。

  • 子ども自身の意見や興味を尊重し、子どもが「やりたい」というもの
  • 待ち時間ができないもの
  • 団体競技や複雑なものではなく、個人競技で比較的単純なもの
  • 必ず親子で体験し、先生に発達障がいとその特性について伝えておく
  • 教室で行うことを先生から聞いておき、スケジュール表を作って持たせる
  • 人の出入りが少ない時間や見えにくい場所でレッスンを受ける
  • 新学年や新学期、長期休み明けなど環境が変わると同時のスタートは避ける
  • 発達障がいの子どもを受け入れている塾やスクールにする
  • 入ってすぐのイベントは、慣れる時間を作る
  • 親の中でお試し期間を設け、子どものストレスになっているようならやめさせる

まずは習い事の種類ですが、親が習わせたいものではなく、子どもの興味が向くものにしましょう。「すごい才能が眠っているかもしれない」と期待する気持ちがあるのは仕方がないことですが、発達障がいの子どもにとって、自分が興味を持てないものを無理やり習わされるのは非常に大きなストレスになってしまいます。子どもが継続してやりたいと言ったものや、もともと強いこだわりを持っていたものなどを中心に選びましょう。

野球などの団体競技では、どうしても他の子どもと同じようなやり方で、同じようなペースで行わなくてはならなくなるため、他の子から「○○ちゃんが覚えるのが遅くて練習できない」などと苛立ちや反感を買ってしまい、トラブルになる可能性もあります。スポーツなら水泳や体操のように、個人競技の方が不要なトラブル・ストレスを避けられるでしょう。

ただし、サッカーなどはコミュニケーション能力を伸ばすために非常に役立つとされています。コーチと相談し、発達障がいへの理解が得られるようなら試してみるのも良いでしょう。また、複雑な内容だと子どもが混乱して何も身につかない可能性があります。学習塾なら、シンプルで読み・書き・計算に特化した公文式などは比較的受け入れやすいとされています。

スクールに着いてから習うまでに、待ち時間が長くなるものは避けましょう。時間の感覚がわかりにくく、待てない子もいます。使うものや借りるものの順番待ちもトラブルを招きかねませんので、そういった教材を使う場合は避けておいた方が良いでしょう。そして、必ず親子で体験授業を受け、先生に発達障がいと子どもの特性(何が苦手なのか、伝わりやすい伝え方、絵カードは有効かどうかなど)について伝えておきます。

スクールが始まったら、ルーティーンが子どもの中でしっかり覚えられるまでは、見通しがつかなく不安に感じてしまう子もいます。先生にあらかじめ何をどの順番で行うのか聞いておき、教室に入って身支度を整え、帰り支度をして帰るところまで、スケジュール表を作って持たせてあげると良いでしょう。

ADHDの子どもなどは、すぐに集中力が途切れてしまったり、動くものに注意が逸れてしまったりするため、人の出入りが少ない時間や、入り口から遠く、人から見えにくい場所でレッスンを受けさせてもらうのも一つの方法です。先生と相談し、配慮してもらえるようなら配慮してもらうと良いでしょう。

始める時期は、新学年や新学期など、環境が大きく変化する時期を避け、学期の中間ごろなどが良いでしょう。発達障がいを持っている子どもの中には、環境の変化に非常に敏感で、言葉や態度のほか、便秘・下痢・頻尿・じんましんなどの形でストレスが体調不良となって現れる子どもがいます。さらに習いごとも始めるとストレスが余計に負担になってしまいます。

最近では、発達障がいへの認知が広まったことから、発達障がいの子どもを積極的に受け入れている塾やスクールもあります。療育施設で習いごとを行っているところもあり、最初からそうした場所を選ぶのも良いでしょう。しかし、スタッフや先生が本当に発達障がいについて理解しているかどうか、親子で体験しながら確認しておくことは必要です。

入ってすぐイベントやお楽しみ会などがある場合、先にイベントについては聞いておき、できるだけ長く「普段の教室のペース」に慣れる時間を作っておきましょう。子どもが「いつもイベントなんだ」と思いこんでしまうと、普通の教室のペースに慣れるのが難しくなることがあります。

最後に、万全を期して習いごとを始めたとしても、実際に始めてみると、体験レッスンではわからなかったさまざまな問題点が発覚するかもしれません。発達障がいの子どもは感覚が非常に敏感なことも多いのですが、耐え難い光や音、声などがあってもうまく伝えられず「なんとなくイヤだから、やめたい」とだけしか言えないというケースもあります。

親の中で「1ヶ月続けてみて、その後も子どもが楽しそうに続けているならその後も続ける、問題が出てきたらやめる」など、お試し期間を設けておき、その期間を過ぎても子どものストレスになっていないようなら続ける、というように決めておきましょう。

発達障がいの子どもに向いている習いごととは?

では、具体的に発達障がいの子どもに向いている習いごとについて、自閉症スペクトラムとADHDに分けて見ていきましょう。

自閉症スペクトラムの子どもに向いている習いごとって?

自閉症スペクトラムの子どもは、コミュニケーションや対人関係に困りごとを抱えやすい反面、こだわりや興味を持ったことはとことん突き詰められるという特性をもっています。そこを活かし、一人でできる習いごとをさせてあげると良いでしょう。例えば、以下のような習い事がおすすめです。

ピアノ、オルガン、バイオリンなどの楽器
  • ピアノは子どもに人気の習いごとであり、落ち着いた環境でレッスンできることが多い
  • 先生以外の人とコミュニケーションを取る必要がほとんどなく、トラブルになりにくい
  • 大勢が見ている前では人見知りして実力が発揮できないという子は、発表会などに無理に出る必要はない
水泳、体操、スポーツクライミング、スケートボード、陸上など一人で行うスポーツ
  • とくに水泳は一人ででき、「25m泳げた」「平泳ぎができるようになった」など、達成感も感じやすい
  • 多人数のクラスでは、一人だけできなかったなどと劣等感を感じやすいため、実力に合ったクラスでレッスンを受けることが大切
空手、柔道、卓球、テニス、バドミントン、レスリングなど少人数で行うスポーツ
  • ごく少人数で行う武道やスポーツも、自閉症スペクトラムの子におすすめ
  • コミュニケーションや礼儀作法の練習になることも
英会話、習字、絵画なども一人でできる習いごと
  • 最近人気のオンライン英会話などは、一人で行えてぴったり
  • 習字や絵画なども一人で行え、心を整理するのにも役立つかもしれない

このように、基本的には一人で行える習いごとが良いでしょう。とくに、水泳は有酸素運動にもなりますので、子どもの興味があるようなら非常におすすめのスポーツです。空手や柔道などの武道を習うことも、少人数で行えるほか、礼儀作法やコミュニケーションの練習になるかもしれません。

どちらかというと大人しいタイプの子どもなら、ピアノやオルガンなどの楽器や、絵画など芸術方面の習いごとをさせてあげると良いかもしれません。芸術は音楽療法・絵画療法などに使われるように、うまく言葉で吐き出せない感情を表現し、自分の気持ちを整理する効果も期待できます。

ADHDの子どもに向いている習いごとって?

ADHDの子どもも、自閉症スペクトラムの子どもと同じように、大人数で何かを一緒に行うのは苦手です。そのため、基本的には一人でできる習いごとをさせてあげるのが良いでしょう。ADHDの人は、不注意やじっとしていられないという問題を抱える反面、活動的でアイデア豊か、好きなことへの集中力は人一倍高いという長所があります。具体的には、以下のようなスポーツや芸術などの習いごとがおすすめです。

水泳、短距離走、走り幅跳び、スケートボードなどのスポーツ
  • 他の友人と接触する機会が少なく、自分のペースで進められる
  • スイミングスクールなどは、なるべく少人数を対象にしたものがよい
柔道や空手などの武道、テニスやバドミントンなどの少人数で行うスポーツ
  • ごく少人数で行うスポーツは、ADHDの子どもにもおすすめ
  • ルールよりも楽しさ重視で、発達障がいに理解のあるスポーツクラブなら、サッカーや野球もできるかもしれない
ダンスやバレエなど、踊り
  • ロックやヒップホップなどのリズムに合わせて全身で飛んだり跳ねたりするのを楽しめる子どもは多い
  • 大人数で揃った踊りを重視するより、自由に体を動かすことを重視したレッスンがおすすめ
  • バレエは体幹を鍛えられるので、身体能力の向上につながる
ピアノ、絵画、バイオリンなど芸術分野の習いごと
  • ADHDの子どもは興味を持ったことには没頭できる性質があるため、思わぬ才能につながるかも
  • マンツーマンで行うレッスンで、コミュニケーションの練習にもなる
勉強は集団塾でなく、個別指導塾が良い
    • 勉強をするときも、大きな学習塾でなく個人指導塾がおすすめ
    • あらかじめ塾側に子どもの状態を伝え、理解してもらっておくことが大切
  • 発達障がいの子ども向けの個人指導塾もある

サッカーや野球など、多人数でするスポーツは、刻々と変わっていくゲームの状況を読み、それに応じて自己判断で動く必要があります。このように流れを読んで臨機応変に対応することは、ADHDを含む発達障がいの子どもにとって非常に難しいことです。そのため、基本的には発達障がいの子どもに、多人数で行うスポーツは向いていないと言えます。

しかし、近年の発達障がいに対する認知の広まりに伴い、発達障がいを抱える子どもに理解を示すスポーツクラブもあります。とくに、幼児期までの子どもを対象としたスポーツクラブでは、ルールよりもボール遊びが楽しくできればOK、というところもたくさんあります。こうしたスポーツクラブであれば、ADHDの子どもでも楽しく参加できるでしょう。

また、ひっきりなしに動くことができるADHDの子どもには、自由に体を動かせるダンスもおすすめです。多動の症状よりも不注意の症状が出やすい女の子なら、ピアノや絵画など、一人でできる芸術分野の習いごとが良いでしょう。ぜひ、子どもが興味を持って楽しめそうなことを探してあげてください

おわりに:発達障がいの子どもには、一人で没頭できる習いごとがおすすめ

発達障がいの子どもは、自閉症スペクトラムならコミュニケーションの問題、ADHDなら不注意や多動性などの問題があり、なかなか集団生活に馴染めないことも少なくありません。そこで、子どもの健全な自尊心を育てるためにも、習いごとをするのはおすすめです。

基本的には多人数で行うものではなく、一人で興味のあることに没頭できるような習いごとが良いでしょう。ぜひ、子どもの興味や意欲を大切にしてあげてください。

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