注意欠如・多動障がいとも呼ばれるADHDは、主に衝動的な言動や注意散漫の症状を発する、発達障がいの一種です。気が散る、集中力が続かないなどの困りごとを抱える人が少なくありません。
今回はADHDの人が集中力をコントロールし、日々の勉強や仕事を問題なくこなせるようにするためのコツを、いくつかご紹介していきます。
ADHDの人はどうして集中力が切れやすいの?
ADHDの人に集中力が切れやすい人が多いのは、生まれ持った脳の機能異常と、これによる特性が原因です。
ADHDの人はそうでない人に比べて、物事の始め方と継続において、独特の価値観や意識を感じているとされています。
例えばADHDでない人の場合、複数の物事を遂行する必要のあるときは、その物事を目的別にある程度分類し、優先順位をつけて進めていく人が多いのではないでしょうか。
しかしADHDの人は、物事を始めるときに目的を確認したり、優先順位をつけるといったことが非常に苦手です。
このため、ADHDの人は目的や優先順位を確認しないまま目についたところから物事を始め、さらにゴールとなる目的も見えていないために、中断してしまいやすくなります。
行き当たりばったりで、目的なく行動してしまうが故に方向性や物事は完遂すべきという制約を忘れやすく、物事に集中できないように見えてしまう。
この「自分の興味・関心や集中力をコントロールできない」という特性が、一般的にADHDの人が「集中力が切れやすい」と評される理由なのです。
ADHDの人が集中力を高めるための対処法や周囲のサポート
ADHDの人が集中力を高め、日々の勉強や仕事を円滑に進めるには、まずは集中が必要・不要な状態を見極め、集中力を使い分けることを覚えてください。
集中すべきオンの状態と、集中しなくても良いオフの状態の基準をざっくりとまとめると、以下のようになります。参考にしてくださいね。
- 特に集中を必要とする、オンの状態の例
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- 仕事中、または勉強中
- 仕事をすべき場所である職場、勉強をすべき場所である学校
- その他、やらなければならないことがあるとき
- 特に集中を必要としない、オフの状態の例
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- 自宅にいて、特にやるべきこともないとき
- やるべきことがあるが、周囲に頼れる家族や友人がいてくれるとき
- 仕事や勉強に関係のない外出先で、特に身の危険などもないとき
特に集中を必要とするとき、ADHDの人が集中力を高めるためにできることとしては、以下が挙げられるでしょう。
- やるべきことはどれかを考えて、優先順位をつけるようクセづける
- 物事をやり始める前に、ゴールとなる目的を確認するようクセづける
- 確認した目的から逆算して、物事の手順や優先順位をつけるようにする
- 時々は立ち止まり、あらかじめ確認した目的・手順のどこまで進んでいるかチェック
- 作業中に興味を惹かれるものを見つけても、終わらせるまでは手をつけない
- 医師の処方する薬を服用し、集中を促す脳内の神経伝達物質の働きを助ける
きちんと医師の指示通りに服薬し、物事を始める前にゴール・手順・優先順位を確認するクセづけをするだけでも、注意散漫はかなり改善されます。
また、やるべきことが自分のやりたいことに近くなるよう勉強・仕事の分野を選択すれば、集中できずに悩むことも減ってくるでしょう。
疲労のもと?ADHDの人は過集中にも気をつけよう!
集中力が持続しにくい一方で、自身が興味のある物事・分野においては長時間にわたり集中し続けてしまう過集中が現れやすいのも、ADHDの特性です。
高いパフォーマンスを発揮できる過集中の状態は、一見すると、良いことづくめに見えるかもしれません。
しかし過集中は、物事への興味や好奇心が大きいあまりに、本来であれば休養が必要な心身の状態を無視して稼働し続けている状態です。
このため過集中には、以下のようなデメリットが伴います。
- 強い関心を惹かれる物事以外、食事などの他の物事がおろそかになってしまう
- 心身に強い負担がかかるため、集中が切れたときに燃え尽きたような虚脱感に襲われる
- 過集中している間の心身の無理がたたり、体調を崩して動けなくなってしまう など
シーンに応じて集中力を高める努力をする一方で、心身を激しく消耗してしまう過集中にも注意し、適度な集中ができる状態をめざしてくださいね。
おわりに:ADHDの人でも、物事の始め方を変えれば集中力をコントロールできる
生まれつき、脳内の神経伝達物質に問題があることから、ADHDの人は自身の興味・関心や集中力をコントロールするのが難しいとされています。しかし物事を始める前に、そのゴール・手順・優先順位を確認するクセをつけることで、行き当たりばったりの行動パターンから抜け出し、ある程度なら集中力をコントロールできるようになります。医師からの助言を受けながらきちんと薬を飲み、適度な集中状態をつくれるよう努力しましょう。
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