パートナーがアスペルガーかも…できることはある?

人間関係改善のヒント

アスペルガー症候群は、発達障がいの中でもとくに対人関係やコミュニケーションに支障をきたしやすい障がいです。想像力や共感力に乏しく、言葉の使い方や理解の仕方が独特なためです。

このため、パートナーがアスペルガー症候群だと意思疎通が難しく、時には疲弊して精神症状を発症してしまうこともあります。そこで、アスペルガー症候群のチェック方法やコミュニケーションの取り方について見ていきましょう。

パートナーがアスペルガーかもと思ったら、まずチェックしてみよう

パートナーと話が噛み合わない、常識を理解してくれない、理屈で話さないとわかってもらえない、感情が欠落しているかも、性格や個性では片付けられない違和感がある……アスペルガー症候群の人のパートナー達は、自分のパートナーに対してこのような感想を抱きやすいようです。

そもそもアスペルガー症候群とは、知的障がいのない発達障がいのうち、「想像力の欠落・社会性の乏しさ・不自然なコミュニケーション」などが主な特徴として挙げられるものです。2013年に改定されたアメリカ精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)」では、アスペルガー症候群は「自閉症スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害)」の一部に分類されました。

精神疾患のマニュアルには記載されているものの、自閉症スペクトラム症は厳密には精神疾患ではありません。生まれつきの脳機能に何らかの問題があると考えられており、また、「この症状があるからアスペルガー症候群である」といったような診断基準もまだ確立されていません。ということは、現時点で正確な診断を下せる医師はそう多くないということです。実際に、大人のアスペルガー症候群を見抜ける精神科医・心療内科医は全体の2割程度とされています。

このように診断が難しい理由として、見た目での判断はまずできないことも挙げられます。アスペルガー症候群の本人は、日常生活の中ではさまざまなサインを出しているのですが、病院に来たわずかな時間のコミュニケーションの中でそのサインに気づくのは非常に難しいのです。そこで、日常生活をともにしているパートナーがその違和感に気づいたら、以下のようなセルフチェックを行うと良いでしょう。

アスペルガー症候群のセルフチェック方法

ここでお話するセルフチェックは、「自分のパートナーがアスペルガー症候群かどうか」をチェックするための方法です。「自分自身がアスペルガー症候群かどうか」をチェックするための方法ではありませんので、注意してください。

まず、ノートと3色のボールペン(黒・赤・青)を用意します。そして、以下の項目に関して、ノートに黒のボールペンでできるだけ細かく書き出します。

  • パートナーの食事の摂り方、食べ物の好き嫌い、食事時のこだわり
  • パートナーがよく口にする口癖、頻繁に使う単語や熟語、言い回し
  • パートナーと一緒にいて自分が恥ずかしい思いをした最近の出来事
  • 今までにあった、パートナーの非常識なふるまい(前後のストーリーも)
  • 知っている限りのパートナーの金銭事情
  • パートナーの職歴(辞めた理由を含む)
  • 知っている限りのパートナーの過去

例えば、食事の摂り方やこだわりなら「ランチはカレーばかり食べている」「どんなときでもフォークは絶対に使わない」など、金銭事情なら「高収入なのに、給料日前に全部使い切ってしまう」「給料のほとんどをゲームにつぎ込んでいる」などです。また、転職を繰り返しているなら辞めた理由とともに、過去のことを知っているなら幼少期の性格や周囲からの評価、生活態度などを書いていきましょう。

上記の内容を全部書き出したら、一旦休憩します。そして、「想像力とは何か」について思いをめぐらせてみましょう。「想像力」と言うと、なにかクリエイティブな分野で必要な能力で、通常は使われないかのように思いますが、実際には日常生活の中で誰もが普通に使っている能力なのです。

例えば、「体調が悪そうな人がいたので席を譲った」と気遣うためには、「体調が悪そうということは、座りたいだろうな」と、相手の状態を想像できる力が必要です。また、コミュニケーションを円滑に進めるためには「こう言ったら、こんな態度をとったら、相手はどう思うだろうか」という想像力によって言葉を選んだり、態度をコントロールしたりしなくてはなりません。

「想像力」についてひとしきり考えたら、もう一度先ほどのノートに戻りましょう。そして、自分が書き込んだパートナーの行動や言葉について「想像力が働いていない」「その行動により他人がどうなるか、どう思うか考えていない」「言葉の使い方が変だ」「一般的によくあることとは言えない」と思う文に、青いボールペンでチェックを入れていきます。

例えば、「ランチはカレーばかり」であったとしても、純粋な好みであり、自分と一緒に食事に行くときはお互いの好みや食べたいものを話し合って決められるなら、アスペルガー症候群の症状である可能性は低いと言えるでしょう。もし、「昼はいつもカレーだから、カレー」と相手の都合も希望も聞かずにさっさと決めてしまうのであれば、アスペルガー症候群の可能性が高いと考えられますので、青いチェックを入れましょう。

逆に、「これは一般的に考えて、よくあることだな」ということには、赤のチェックを入れていきます。どちらかわからないことは、ひとまず飛ばしておきます。こうしてすべての項目のチェックが終わったら、紙を見て青のチェックが赤のチェックと同じ数〜2倍くらいになった場合は要注意ですので、今後は注意して観察していきましょう。

もし、青のチェックが赤のチェックの3倍以上ついている場合は、かなりアスペルガー症候群の疑いが強いと考えられます。早めに専門医や発達障がいの専門家に相談しましょう。また、上記のような内容を書き出したノートは専門家にとっても重要な判断材料になりますので、受診・相談するときにはノートも必ず一緒に持っていきましょう。

アスペルガーのパートナーとうまくコミュニケーションをとるには?

もし、診断によってパートナーがアスペルガー症候群だとわかった場合、あるいは、前述のセルフチェックによって要注意、すなわちアスペルガー症候群の傾向が強いとわかった場合には、アスペルガー症候群の特性を考慮したコミュニケーションをとる必要があります。具体的には、以下のようなポイントに気をつけましょう。

アスペルガーの人はストレスに弱い
  • 定型発達の人よりも、配慮した態度で接する必要がある
  • もともと対人関係で批判的な評価を受けたり、気持ちをわかってくれという一方的な要求を受けたりすることが多いため、精神疾患や依存症などの二次障害になりやすい
根本的な傾向はあっても、特性には個人差が多いと理解する
  • 言動などの特徴には個人差が大きいため、気になったことは本人に直接聞くのもよい
  • ただし、詰め寄るように立て続けに質問したり、感情的になったりしないよう気をつける
「特性だから仕方ない」とある程度割り切る
  • 気持ちが汲み取れない、感情表現が少ない、心が通じ合う感覚が得られない、などは性格ではなく、アスペルガー症候群の特性
  • すぐには受け入れられなくても、時間をかけてゆっくり理解していくことが重要
指示やメッセージは具体的に
  • アスペルガー症候群の人は、視覚情報よりも聴覚情報を処理するのが苦手な傾向がある
  • やることや買うものはリストを作ったり、メールなど視覚に残るもので共有したり、アラームをセットしたりするとよい
  • 言葉の裏側を読むことも苦手なため、ストレートな言い方を心がける

アスペルガー症候群の人とのコミュニケーションで最も大切なことは、「特性を理解して受け入れる」ということです。気持ちをわかってもらえない、感情表現をしてくれない、心が通じ合っている感じが得られない、これらはアスペルガー症候群の特性として仕方がないことなのです。ある程度は「特性だから」という、いい意味での諦めも必要でしょう。

また、根本的な特性の傾向はあっても、言動の特徴は人によって違いますので、本人に「こういうことは苦手?」と聞いてみるのも良いでしょう。このとき、感情的に詰め寄るように質問すると、自分が否定されていると感じて癇癪を起こしてしまったり、逃げ出してしまったりすることもありますので、しないよう気をつけましょう。質問する時は穏やかに、できるだけ感情を込めず淡々と質問するのが良いでしょう。

パートナーと2人だけの関係の中で、全てを一人で抱え込んでしまうのも負担が大きいものです。同じようにパートナーがアスペルガー症候群という人の交流会に行くなど、悩みを共有できる場所を作っておくと良いでしょう。

アスペルガー症候群のパートナーと一緒に暮らしていくには?

人と人との間で行われるコミュニケーションは、約7割が非言語によるもので、約3割が言語によるものだとされています。ということは、アスペルガー症候群の人は約3割のコミュニケーション方法のみで人と関わっているというわけです。そのため、皮肉げに「あなたは優秀ですね」と言った場合、普通の人は言外の意味を汲み取って怒りますが、アスペルガー症候群の人は言葉の意味だけを理解して喜ぶ、といった齟齬が生じるのです。

非言語コミュニケーションの部分は、脚本で言う「ト書き」に例えられることもあります。ですから、セリフ部分だけでなく、ト書き部分まで全部口に出してしまえばいい、とする考え方もあります。例えば、風邪をひいてゴホゴホと咳をしながら食器を洗っているとき、「なぜ、こんなに苦しそうにしているのに気を使ってくれないのだろう」と不満を抱えてしまうのではなく、「風邪で咳をしながら洗うのは辛いなあ。代わりに洗ってくれるとすごく嬉しいし、感謝するよ」と、状況も全部説明するというものです。

このようなとき、アスペルガー症候群の人は「咳をしながらでもできているから、手伝わなくてもいい(=緊急性はない)。病気を治すには、病院で医師の診察を受けて、薬を飲んで自己治癒力に任せるしかない」というように、すべて理屈で考えてしまいます。日本は「言葉にしないこと」「言う前に察すること」を美徳とする文化がまだまだ根強いこともあり、ついつい相手にも「察する」ことを求めてしまいがちですが、ことアスペルガー症候群の人に対しては、してほしいことや気づいてほしいことをすべて言語化していく必要があります

他にも、以下のようなポイントをおさえていくと、日常生活でお互いに不満やストレスを抱えずに済みそうです。

適切な距離をとる
  • 自分と相手は感じ方も考え方も根本的に違うのだ、と理解する
  • 「一般的な夫婦像」「理想のパートナー像」を押しつけない
薬物療法も視野に入れる
  • ADHDの薬や抗精神薬、感情安定剤、サプリメントなどで効果がある場合もある
  • オキシトシンというホルモンの一種を鼻から吸入すると、コミュニケーション障害が改善されたという報告も

アスペルガー症候群の人は、一般的に想像される夫婦像やパートナー像に必要な「察する、気を使う」ということを最も苦手としています。ですから、こうした夫婦像やパートナー像を期待して「何も言わなくてもわかってくれているはず」と思い込んでしまうと、なかなか上手くいきません。

相手はアスペルガー症候群という状態であり、自分とは根本的に考え方や感じ方が違うのだ、ということを理解し、相手に合わせた対応の仕方をすれば良いのです。また、症状を改善したいとき、本人も治療に協力的なときなどは、専門医を受診し、薬物療法を相談してみるのも良いでしょう。

しかし、上記のような方法は、あくまでも相手といつまでも一緒に暮らしていきたいと思う人に対するアドバイスです。責任感があって真面目な人ほど、一度決めたパートナーと別れてはいけないと思い、辛くても誰にも話さず耐えてしまうことがありますが、そのような暮らしを続けていると心身に大きな負担がかかり、次にご紹介する「カサンドラ症候群」にかかってしまう可能性もあります。

自分にとって、あるいは今後の生活にとって、それでもアスペルガー症候群の本人と一緒にいる方が良いのか、別れた方が良いのか、本当に辛くなったときには一度じっくり考えてみることも重要です。

アスペルガーのパートナーがなるカサンドラ症候群って?

カサンドラ症候群は「アスペルガー症候群を持つ家族やパートナーとの情緒的な交流が乏しいために関係性が悪化し、その事実をパートナーも周囲も理解せず、当人が苦しみを抱えたまま孤立した状態になってしまうこと」が大元の原因となって起こる、アスペルガー症候群の当人との関係性から生じる状態です。

とくに、アスペルガー症候群を持つ当人がある程度の社会適応性を身につけられている場合、職場など外向きの環境では上手くやれるのに、家庭や身近な人とのプライベートな空間ではより繊細なコミュニケーションが求められることから、関係性が悪化してしまうことも少なくありません。つまり、パートナーや家族だけが辛さを抱えていても、なかなか外側から見えづらいのです。

すると、カサンドラ症候群に陥っている当事者側の問題が軽視されてしまったり、否定・批判されてしまったりして、さらに強いストレスに晒されてしまうこともあります。一般的にアスペルガー症候群は圧倒的に男性に多いため、パートナーとなる女性側がカサンドラ症候群になりやすいとされていますが、カサンドラ症候群は女性だけが発症するわけではありません。

カサンドラ症候群は、性格的に「真面目・几帳面・完璧主義・忍耐強い・面倒見が良い」というタイプの人が発症しやすいとされています。こうした人は、アスペルガー症候群のあるパートナーが社会性・情緒に欠ける言動を繰り返していても、怒らず放り出さずに我慢して受け入れようとする忍耐強さがあります。しかしそれがこの場合には裏目に出てしまい、偏った関係性が定着し、やがてはカサンドラ症候群に進行してしまうようです。

そこで、自分がカサンドラ症候群かもしれないと思ったら、アスペルガー症候群に理解や知見がある発達障害者支援センターや、発達障害専門外来を持つ精神科などの専門機関にまず相談してみると良いでしょう。パートナーとの関係として、アスペルガー症候群の特性や症状を話し合える段階に至っているのなら、最初から2人で一緒に相談に訪れるのもおすすめです。

もちろん、カサンドラ症候群の本人だけで相談に行っても構いません。パートナーの行動についての疑問や不安の解消につながることがあります。他にも、全国各地にカサンドラ症候群の当事者による自助グループがありますので、インターネットで検索してみると良いでしょう。自助グループはたいてい少人数での運営で、定員もありますので、自分に合うグループを探しましょう。

相談や共感を得られれば、気持ちが軽くなったり、治療の助けになったり、現状の解決法が見つかったりすることがあります。ぜひ、一人で悩まずさまざまな場所で相談してみましょう。

おわりに:アスペルガーのパートナーには「特性を理解すること」が重要

アスペルガー症候群の人は、想像力や社会性に乏しく、コミュニケーションに問題を抱えやすいという特性があります。そのため、言外のコミュニケーションができず、非言語コミュニケーションを重視する家族やパートナーとの関係性でとくに問題が起きやすいのです。

ですから、パートナーはある程度「これは特性だから」と割り切らなくてはなりません。カサンドラ症候群に陥らないよう、悩みの相談先や共有先を作っておきましょう。

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