発達障がいのお子さんのいる家庭に知っておいてほしいのが「ペアレント・トレーニング」略してペアトレ。厚生労働省は2021年度の障害福祉計画でもペアトレを推進することを目指しています。このペアトレのひとつとして、応用行動分析(ABA)を自宅で日常的に実践していくことで、お子さんの行動を社会的によい方向へと修正していけると考えられています。
応用行動分析(ABA)が保護者に与える効果って?
子育てはほかに代えることのできない楽しみがありますが、子どもが危ない目に合わないか、周囲とうまくコミュニケーションとれているかなどの心配もありますよね。
特に発達障がいの子どもが持つ特性は、癇癪や奇声、迷子になりやすいなどの行動を招くことも少なくありません。保護者は不安を抱いたり周囲に気づかいをするなど、緊張状態が続くことも…。発達障がいのお子さんのいる家庭では、本人だけではなく、家族の精神的な疲労蓄積も課題なのです。
発達障がいの家庭におすすめしたいのが、行動療法や行動分析に基づいたプログラム「ペアレント・トレーニング」。医療機関や支援施設の専門家が行うのではなく、親が子どもに対して行う行動改善や発達促進です。療育機関の専門的サポートと並行しながら、家庭でも親が療育を行うことで、効果がより期待されると考えられています。
ペアレント・トレーニングに関しては、ABAの療育を受けた家族と受けていない家族の経過を比較した場合、ABAを受けた家族の方が、療育効果の良好な維持や発達が示されたという追跡調査が報告されています。
(参考:「自閉症スペクトラムへのペアレント・トレーニング」(鳥取大学医学系研究科)より)
行動理解や環境調整とは?ペアレント・トレーニングのプログラム
発達障がいは脳機能の発達の問題ですので、本人のやる気や家族の教育が原因ではありません。
そのため、発達障がいやグレーゾーンのお子さんがいる家庭では、親子一緒になって特性への認識を深めたり、問題が生じたときの対処法をとることが必要ですよね。その方法のひとつがペアレント・トレーニングなのです。
ペアレント・トレーニングのプログラムの多くは、知識やノウハウの学習のための講義、グループワーク、ホームワークで構成されています。ただしプログラムの種類はさまざまです。
ペアレント・トレーニングのコアエレメント
- 行動理解(ABC分析)
- 環境調整(行動が起きる前の工夫)
- 子どもの不適切な行動への対応
- 子どもが達成しやすい指示
- 子どもの行動の3つのタイプわけ
- 子どもの良いところ探し&ほめる
ペアレント・トレーニングは上記の6つの要素を核として行います。保護者は、子どもに対して適切な対応をできるように、養育の知識やノウハウを学習し、実践していきます。
行動理解(ABC分析)とは、応用行動分析による行動療法でとられる方法のひとつです。たとえば子どもの癇癪行動に対して、癇癪のきっかけとなった出来事(先行事象)と、癇癪によって招いた結果(後続事象)を分析し、望ましい行動の促進を目指します。
ペアレント・トレーニングに期待される効果
- 保護者の養育スキル向上
- ストレス軽減
- 子どもの適応的な行動の獲得
- 子どもの問題行動の改善
(参考:厚生労働省「ペアレント・トレーニング実践ガイドブック」より)
ペアレント・トレーニングはどこで受けられる?
ペアレント・トレーニングを受けられる場所はさまざまです。
- ペアレント・トレーニングを受けられる場所
- 自治体の発達障害者支援センターや教育センター、医療機関、心理センター、NPO法人の支援団体、民間事業所、個人開業者 など
ペアレント・トレーニング受講にかかる費用も、実施する機関や団体によって異なります。行政によるプログラムであれば無料または比較的安価なことが多いでしょう。医療機関では保険適用外となることがほとんどですので、受診する医療機関に確かめると安心です。
お子さんの発達レベルやご自身のライフスタイルを考えながら、受講しやすいペアレント・トレーニングを探してみましょう。
おわりに:専門機関と並行して家庭での療育実践にペアレント・トレーニングがおすすめ
発達障がいやグレーゾーンのお子さんの気になる行動を改善していくためには、専門家による療育も効果的ですが、家庭で実践する日々の療育も大切です。ペアレント・トレーニングを行うことで、お子さんの行動修正のほか保護者のストレス軽減も期待できますので、お住まいの自治体などのプログラムを調べてみるのもおすすめですよ。
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