生まれつき脳機能にばらつきがあるために、できることとできないこと、集中できることとできないことの差が顕著になると言われる、発達障がい。
今回は発達障がいの人に向いている職業と、起こりやすい仕事上のトラブルとその対処法について解説していきます。
発達障がいが続けやすい仕事と続けにくい仕事
発達障がいの人の多くは、相手の態度・表情・発言から真意や必要な対応を推測するのが難しく、人間相手の仕事が向いていない傾向があります。
このため、以下のような「人間と接することを主業務とする仕事」や「いくつものタスクを同時進行しなければならない仕事」は不向きであるといえるでしょう。
- 発達障がいの人に、向いていない仕事
-
- 電話応対や、急な来客などへの臨機応変な対応が求められる仕事
- 飲食店、販売店、宿泊施設などでの接客業務
- 秘書や営業など、周囲の人の気持ちを汲みながらマルチタスクをこなす必要がある仕事
- 事務、総務、法律関係など、ミスが許されない書類作成が含まれる仕事 など
一方で、発達障がいの人には、ある程度手順が決まっていて「人間の機嫌や機微に成果物の評価が左右されない、合理的でわかりやすいものを作るのが得意」という人が多いです。
このため、以下のような一定のルーティーンで作業ができ「数値や一定の基準で成果物の完成や評価を確認できる仕事」が向いていると言えます。
- 発達障がいの人に、向いている仕事
-
- 経理など主に数字を扱い、正解・不正解など結果がはっきりとしているもの
- 同じ作業をこなし続ける集中力が問われる、工場でのライン作業
- 数値の集計と分析から現状や傾向を調べる、マーケターのアシスタント
- システムエンジニアのうち、上司からの指示で単純作業を行う仕事 など
発達障がいの人に起こりやすい仕事上のトラブルと対処法
ここからは、発達障がいの人に起こりやすい仕事上のトラブルと、すぐに実践できる対処法を、具体例を挙げながら解説していきますね。
他者との距離感や円滑な交流方法がわからず、スムーズに対応できない
相手の表情やしぐさから気持ちを推測できない発達障がいの人は、立場や関係性に配慮した距離感やスムーズな会話が難しく、同僚や取引先を不快にしてしまうことも少なくないでしょう。
これを解決するには、まず清潔感を感じてもらえるよう身だしなみを整え、誰に対しても丁寧な敬語で話すクセをつけることをおすすめします。
会話に関しては、発達障がいの人には話始めると一方的になって止まらない傾向が見られるので、相手の話を真摯に聞くように意識し、結論から述べるようにするとうまくいきます。
暗黙の了解を含む、会社や仕事上のルールが理解できず従えない
会社組織や業界には、明文化されていない暗黙のルールがあることも多いです。
でも、発達障がいの人にとっては「ハッキリ存在も理由も説明されていないルール」を察して従うのは非常に難しいことです。
理解できないことがあるときは、絵や文章など視認できるかたちで説明をしてもらうようにお願いしましょう。
思い込みが激しく、細部に執拗にこだわり仕事が進まない
発達障がいの人は、ルーティンや自分ルールを重視しながら仕事を進める人が多いです。
こだわりが強いとちょっとしたことが気になり、納得できず、仕事がストップしてしまうこともあります。
意識的に周りの声を聴き、優先順位をつけてもらうなどして助けを受けるようにしましょう。
さらに、優先順位に沿って仕事を終えるごとに1つずつ確認してもらうなどすれば、やりそんじやミスを防ぐことができますよ。
注意力散漫でじっと作業を続けられず、衝動的な言動をとってしまう
外部からの刺激に敏感な発達障がいの人は、集中力が続かず勝手に休憩したり、考えなく衝動的に仕事中には不適切な行動・発言をしてしまいがちです。
集中が続かないなら、1時間作業したら15分休むなど集中できる時間ごとに仕事を区切るとともに、注意散漫によるミスがないか上司やアプリで確認することを習慣づけましょう。
衝動的で不適切な言動に関しては、体や口が動く前に一呼吸おいて「本当に必要か」「いますべきことか」を考えるクセをつけると、減らすことができます。
周囲の声を無視するほど、集中しすぎてしまうときは?
見込みの作業時間でアラームをセットし、その音で集中状態から切り替えられるようにするか、作業内容ごとに場所を変えてみると良いでしょう。
仕事上必要な、読み書きや計算が苦手でうまくできない
文章をうまく認識できず資料が読めない場合は、文字を1つずつ指差しで確認して読んだり、印刷を読みやすい字の大きさ・濃度になるよう、いろいろと工夫してみましょう。
字を書くのが苦手でも、鉛筆で下書きしてからその通りになぞって清書すればOKです。
計算に関しては無理に暗算する必要はないので、自分のスマホや電卓、Excelなどの使い方を覚えて、うまく活用してくださいね。
障害者枠で探した方がいいの?
発達障がいで国から障がい者手帳の交付を受けた場合、企業に障がい者雇用枠から就職・転職することが可能になります。
障がい者雇用枠で就業する場合、一般では倍率の高い大企業の安定した雇用を得られますが、昇給や昇進の可能性、選択できる職種の幅が狭いという欠点があります。
一方で一般雇用では、職種の選択肢は幅広く昇格や昇進の可能性もありますが、成果として求められるレベルが高く、大企業の安定した雇用を得るのが難しいのが件点です。
障がい者枠雇用と一般雇用のどちらを有利に感じ、選びたいかは、あなたの発達障害の程度や希望する職種・待遇によって変わってくるでしょう。
自分の特性や希望、そのときのタイミングによって一般枠と障がい者枠をうまく使い分けながら、仕事を探してくださいね。
おわりに:発達障がいの人に向いているのは、手順と成果がはっきりしている仕事
注意力や集中力の続き方が独特で、暗黙のルールや人の表情・言葉・しぐさから察するのが苦手な発達障がいに人に、向いていない仕事があるのは事実です。
しかし一方で、手順や守るべきルール、成果物の良し悪しがはっきりしている仕事は、発達障がいの人に向いていると言えます。
本人や周囲が工夫することで、仕事上起こりがちなトラブルもある程度回避できます。まずはその方法を知って試し、自分に合うものを探してみましょう。
コメント