表情を読み取ったり、言葉の裏を読み取ることが苦手な発達障がいの人とスムーズにコミュニケーションをとるには、周囲の人の配慮が欠かせません。
そこで今回は、発達障がいの人とのコミュニケーションのコツを解説していきます。
接し方のコツ、ストレスを与えてしまうNGな行動、人間関係に悩んだ場合の相談窓口のことまで、まとめて見ていきましょう。
トラブル発生のおそれも?発達障がい者との接し方の注意
発達障がいの人は、他の人とは脳の働き方や情報の伝わり方が異なります。
このため、発達障がいの多くの人が特性として以下のようなコミュニケーションの困難を抱えがちです。
発達障がいの人に多い、コミュニケーション上の特性
- 抽象的な言葉の意味を理解できない
- 例)「ちょっと待って」の「ちょっと」が、どのくらい待てばいいか理解できない
- 発言した人の表情も総合して、言葉の意味を理解できない
- 例)どう見ても冗談で言われたであろう言葉でも「馬鹿にされた」と怒ってしまう
- 指示されたことを言葉のまま受け取り、適切に遂行できない
- 例)「鍋を見ていて」と指示され、本当に見ているだけで噴いても焦げても何もしない
- 複雑、または長い文章となるような言葉は、正しく理解できない
- 例)「コップを流しに置き、帰りに箸と皿と茶碗を持ってきて」と指示されてもすべてを理解できず、どこか抜け落ちてしまう
こちらが何気なく行った指示・会話であっても、発達障がいの人には意図が正しく伝わらず、トラブルのもととなることがあります。
発達障がいの人と接するときには、彼らの特性に配慮した言い方や伝え方でコミュニケーションをとるようにしましょう。
無理強いや焦りは禁物!スモールステップの支援が大切
発達障がいの人と接するときに避けるべきこととしては、以下が挙げられます。
- 大きな声や否定手的な言葉で注意や叱責をすること
- 本人の欠点や直してほしいところを、正面から叱責すること
- 本人の気が散りやすい、音や光の刺激が多い場所で話すこと
- 抽象的な言葉を使った、曖昧な指示や注意を与えること
- 一度注意したからといって、すぐに矯正や変化を求めること
- 本人の性格や、特性による個性を根本から否定すること
発達障がいの人は非常に記憶力が良く、一度強い言葉や大声で叱責を受けると、嫌な記憶が何年も頭にのこり苦しみ続けます。
その言葉を発した人物や特定のシチュエーションに対して、強い拒否反応や恐怖心を抱くこともあるのです。
発達障がいの人達と接するときは、彼らの特性を理解し、以下のポイントをおさえて伝え方を工夫しましょう。
発達障がいの人との円滑なコミュニケーションのポイント
- できるだけ穏やかな表情、空気のなかで会話するようにする
- 大きな言葉を出さず、できるだけ刺激の少ない静かな環境に身を置く
- 指示や予定を伝えるときは「いつ」「どこで」「誰が」「何を」するのが具体的に
- 抽象的な表現を避け、具体的な数値やグラフ、絵や写真を使って可視化する
- 急な予定変更を嫌うので、予定の変更についてはできるだけ早めに伝える
- できないことを叱責するのではなく、できることを拾いポジティブに接する
- 指示や注意されたことができなくても叱責せず、気長に変化を待つ
- 指示や注意したことが長期間直らなければ、別の解決方法を一緒に考える
- 特性ゆえのこだわりや困りごとは個性として認め、活かす方法を一緒に考える
人の癖や性格は、大きな声で叱り無理強いしても簡単には変わりません。これは、発達障がいの人もそうでない人も同じことです。
本人にわかるようにしっかりと言葉を伝え、少しずつ前進・改善していくものと理解し、発達障がいの人に接してください。
また発達障がいの人には、日常生活に支障をきたすレベルの感覚過敏を持つ人もいます。
感覚過敏とは
一般的には些細な刺激が、耐えがたいほど強い刺激に感じてしまう特性。発達障がいの人のうち一部に見られ、その現れ方は聴覚や視覚、嗅覚、触覚など人によりさまざま。
本人にとって多大な苦痛となる感覚過敏ですが、これも一朝一夕になくなるような症状ではありません。
まずは刺激を和らげるところから始めて、不快や不安を軽減し、安心して過ごせるようにしていけば、徐々に慣れていきます。
話しているときにあまりに集中できていないようであれば、感覚過敏に苦しんでいる可能性があります。
会話の内容と合わせて、話しているときの様子にも注目してみましょう。
職場での発達障がいへの接し方のポイント
職場に発達障がいの人がいる場合は、以下を参考に接し方・指示の出し方を工夫してくださいね。
仕事の指示を出す担当者は1人に決めておく
複数の人から別の言い方で指示を出されると、混乱するかもしれません。
指示や注意、質問対応など仕事上の窓口になる担当者を1人に決めておき、他の人からの指示や注意がある場合も、その担当者を通すようにしましょう。
1日のタイムスケジュールや目標は、明確に決めておく
発達障がいの人は、今後の予定や達成すべき目標ははっきり見えていると、オン・オフの切り替えや業務が進めやすくなります。
1日や午前・午後など、短いスパンでこなすべき仕事やタイムスケジュール、達成目標を1枚の紙にまとめて可視化してあげると良いでしょう。
萎縮せず質問できるよう、質問タイムを設けておく
空気を読むのが苦手な発達障がいの人は、職場全体がピリピリしていること、教育担当者が忙しくしていることになかなか気づけません。
タイミング悪く質問をしてしまい、無用なトラブルになるのを避けるために、質問していい時間・人を決めておくことをおすすめします。
1日のタイムスケジュールのなかに「質問タイム」を設け、対応してあげてください。
仕事は1つずつ、具体的に指示してこなしていく
発達障がいの人は、マルチタスクが苦手です。また、仕事の指示があいまいだと適切に理解できず、動けなくなることもあります。
複数の仕事・指示を与えて混乱するようなら、「どの仕事を」「いつまでに」終わらせてほしいか具体的に指示したうえで、1つずつ集中して進められるようにしましょう。
特性がわかってきたら、マニュアルを作ってみる
仕事をするなかで発達障がいの人の特性がわかってきたら、教育担当または本人に、細かな指示や困ったときの具体的な対応を書いたマニュアルを作ってもらいましょう。
今後、周囲が発達障がいの人との接し方に困ったときや、本人が仕事に行き詰ったときの助けとなります。
他人との比較はストレスのもと!発達障がいは個人差が大きい
ここまで、発達障がいの人との適切な接し方について紹介してきました。
しかし、発達障がいの人への適切な対処法は、特性の現れ方によって個人差があります。
このため、ここまでに紹介した接し方・対処法のポイントが、すべての発達障がいの人に有効なわけではないのです。
「この人は発達障がいだから」と一律的に考えるのではなく、必ず都度、本人の性格や特性を見極めて対処法を試し、接し方を変えるようにしてくださいね。
一人で悩みを抱えなくて大丈夫。支援相談窓口に気軽に相談を
発達障がい者のなかには、言語発達や知的な遅れをほとんど伴わず、本人も周囲も気づかないまま大人になるケースも多々あります。
そんな状態で就職し、暗黙のルールの順守や空気を読むことが求められる社会の中に放り込まれると、本人も周囲の人も困惑して精神的に追い詰められてしまいます。
仕事が、日々の社会生活がうまくいかないことを個人の中で抱え込んでいると、発達障がい者本人もその周囲の人も、うつや不安障がいを発症してしまうかもしれません。
自身や身近な人に疑問や、発達障がいの疑いを感じたら、まずは気軽に地域の発達障がい支援センターに相談してみましょう。
発達障がいの可能性があるかどうか、またその確認方法や適切な対処法について、具体的なアドバイスがもらえるはずです。
自分の悩みに一緒に向き合い、支援してくれる人がいれば、徐々に特性や適切な接し方も見えてきますよ。
おわりに:発達障がいの人には穏やかに、具体的な言葉を使い接して
発達障がいの人の多くは、コミュニケーションに困難を抱えています。特に抽象的な表現を理解すること、長い文章を理解すること、表情や雰囲気から言葉の他意を理解することが苦手なため、対人トラブルが起きやすいのです。しかし接し方を工夫すれば、発達障がいの人とのトラブルは避けられます。本記事を参考に発達障がいの人との接し方のポイントを理解し、個人の性格・特性に合わせてうまく使い分けましょう。
参照
・厚生労働省「精神・発達障害者しごとサポーター 養成講座」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/jigyounushi/e-learning/
・厚生労働省 政策レポート「発達障害の理解のために」
https://www.mhlw.go.jp/seisaku/17.html
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