先天的な脳機能違いで起こる発達障がいの子どもたちには、特別の配慮が必要です。
今回は発達障がいを持つ小学生の育て方のポイントについて、親や周囲の大人が知っておきたい適切な接し方、心得ておくべき大切なことに分けて解説していきます。
発達障がいの種類別、育て方のコツ
まずは発達障がいの種類別に、小学生の育て方のコツをご紹介していきます。
自閉症の場合
自閉症の人の脳は独特な働きをするといわれていますが、他の人と同じように適切に働く部分もあります。
このため自閉症の子どもを育てるうえでは、以下のポイントを知っておくことが有効です。
- 通常に働いている部分に働きかけ、他の脳の機能を補うよう心がける
- 本人が問題行動を起こしたら無視し、好ましい行動をしたらしっかり褒める
- 情報の取捨選択が苦手なので、余計な音や光、においや感触を遮断できる環境を作る
- 受けた感覚に対しどうするべきか、言葉と行動でその都度教えていく
- 時と場合に合った最低限の態度、方法でコミュニケーションを取れるようにする
上記をおさえた療育を受けさせ、自閉症ゆえに降りかかる困難を減らし、居場所をつくっていくことが、自閉症の子どもの未来を切り開く糧となります。
アスペルガー症候群の場合
アスペルガーの人は、年齢を重ねるごとに周囲とのコミュニケーションの困難が顕在化し、生きにくさを感じるようになるとされます。
このためアスペルガーの子どもを育てるときは、以下のポイントをおさえておきましょう。
- 子どもに生じているコミュニケーションの問題を、親がいち早く障がいと気づく
- 社会生活に必要なコミュニケーションスキルを、小さい頃から根気強く養う
- 人間関係のトラブルによって生じる自尊心の低下と二次障がいから、守ってあげる
子どものうちから「どのような発言が周囲を不快にするか」「どんなときに相手が不快と感じているか」を教えていくことで、大人になってからの困難が軽減されます。
いじめ被害やうつなどの二次障がいを発する前に、親がいち早く子どもの困難を障がいと気がつけるように心がけ、療育を受けさせ接し方を変えてあげてください。
ADHD(注意欠陥多動性障がい)の場合
ADHDの子どもは衝動性や多動性、注意欠如などから「落ち着きのない子」「忘れっぽい子」という印象を持たれやすいとされます。
ADHDの子どもへは、以下のようなポイントを押さえ接してあげると良いでしょう。
- 不適切な行動をとったときに無視し、まずは本人に不適切な行動を自覚させる
- 好ましい態度や行動、場面にあった態度や行動をとったときには、しっかり褒めてあげる
この2つを繰り返すことで、子どもは少しずつ「やってはいけない行動」について学び、「もっと褒められるように行動しよう」と思えるようになってきます。
周囲の大人が時間をかけて、根気強く行動の良し悪しを教えてあげましょう。
LD(学習障がい)の場合
LDの子どもには知的発達の遅れはありませんが、読み書きや話すこと、計算すること、推論することのうちいくつかに困難を生じます。
学校での学習に困難が現れやすいLDの子どもを育てるなら、以下に注意しましょう。
- 努力が足りないからできないのではないこと、努力していることを認めてあげる
- 苦手でできないことを無理に繰り返させるのではなく、できる方法を考えてあげる
- 得意なことや興味のあることに没頭させる機会、時間を作って自信をつけさせる
いくら頑張ってもできるようにならないことに対し、本人が一番ストレスを感じています。
この点を理解して寄り添い、ストレスを軽減しながらできるようになる方法を一緒に考えてあげることが、LDの子どもの成長を助けるのです。
発達障がいの子どもを育てるときに大切なエラーレスとスモールステップとは?
発達障がいの子どもを育てるときは、「エラーレス」と「スモールステップ」の2つの考え方をしてみましょう。
- エラーレスとは
- 「失敗させない、誤らせない」よう、教育し導く考え方のこと
- スモールステップとは
- 達成が困難と思われる目標を、たくさんの小さな目標に細分化して設定すること
発達障がいの子どもは、新しいことを覚えるために短期的に記憶しておくワーキングメモリが弱いです。
いったん間違ったやり方を経験すると上書きが難しくなりますし、失敗して叱責されると「その物事自体」を嫌がり拒否するようになります。
また発達障がいの子どもの教育には、時間がかかります。小さな成功体験を少しずつ積み重ねていくことで、少しずつ大きな目標の達成に近づき成長していくことを常に心においておきましょう。
「失敗させない=エラーレス」「少しずつ着実に進んでもらう=スモールステップ」の考え方こそ、ゆっくりと確実に発達障がいの子どもを育てるのだと理解しておいてください。
おわりに:発達障がいの子どもを育てるときは「特性に合わせゆっくり」と
発達障がいの子どもの困りごとは、障がいの種類や個人の特性により異なります。一方で共通する事項として、ワーキングメモリが弱いことが多く、何度も繰り返すことで行動を修正でき成長する傾向があるとされます。
このため発達障がいの小学生を育てるときは、本人の障がいの種類や特性に合わせた療育方針にのっとり、失敗させないようゆっくり教育していくことが大切です。お子さんの特性を見極め、対応を工夫しましょう。
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