生まれつきの脳の機能異常による発達障がいの特性・症状は、子どもが幼い頃から現れ始めます。
今回は、保育園や幼稚園での集団生活の中で子どもに見られやすい発達障がいの兆候について、具体例を示しながらご紹介していきます。
発達障がいと気づくのは、保育園のどんな様子がきっかけになりやすい?
保育園や幼稚園での生活では、人との関わり方・遊びや勉強への関わり方・感覚や感情の表し方から発達障がいと気がつくケースが多いようです。
発達障がいに気付くきっかけには、以下のようなケースがあります。
人との関わり方
普段の遊び方や、他の子ども・大人との関わり方に以下の特徴が見られたときに「発達障がいでは」と気がつくケースがあります。
- 常に受動的でおとなしく、話すときは一方的になりがちで、一人遊びを好んでいる
- 話すときに、相手の話をじっくり聞いたり表情や声色を読むことが苦手なようだ
- 普段はおしゃべりで難しいことも話せるが、保育士などからの指示が伝わりにくい
- 話を聞かなければならない場面でも、じっとしていられず話を聞けない
- 他の大人や少し年上の人とは遊べるが、同年代の子どもとはうまく遊べない
- 集団生活が苦手で、集団で何かしているときはふらふら歩き、ぼーっとしたりする
- 相手に失礼なことを言ってしまう反面、相手からのちょっとした冗談をいじめと受け取る
遊びや勉強への関わり方
遊びや勉強など、みんなで何かをするときの集中・注意の仕方にも、発達障がいの兆候が現れやすいです。
- みんなで何かをする時間にも、落ち着きがなく動き回ったり、ぼんやりしている
- 忘れ物が多く、毎日やっていることなのに遊びの準備や、お片付けが苦手なまま
- その一方で、特定の遊びや分野の勉強には異常に集中し、話しかけても反応しない
- 難しい漢字も本も読めるが、ひらがなを含め字を書くこと、作文はとても苦手
- 頭の回転はとても速いようだが、手を動かし作業するペースは非常に遅い
感覚や感情の表し方
発達障がいの子どもには、感覚の過敏・鈍麻や、独特な感情の起伏があることも珍しくありません。感覚や感情の表し方に以下のような特徴が見られたら、要観察と考えましょう。
- 音に敏感で、大勢の話声のする教室や雑踏、大きな音の出る太鼓や雷に耳をふさぐ
- 触覚が過敏で、服の着心地や靴下の感触が気に入らず脱いだり、友達と手をつなげない
- 味覚や嗅覚が敏感なのか、極端な偏食が見られ特定のものしか食べられない
- 揺れている場所、状態を極端に恐れ、狭く安心できるスキマを探しては入り込む
- 体をうまくコントロールできないようで、乱暴に思われたり、寝てばかりのことが多い
- 字や絵を描くときの筆圧が弱い、食べこぼしが多いなど、極端に不器用
- 感情が一旦高ぶると、なかなか興奮が治まらず本人も周囲も疲弊する
- 些細なことでも周囲から注意されるとかっとなり、興奮やパニックを起こしやすい
発達障がいの子どもの気になる態度、保育園側でできる対応はある?
発達障がいの子どもの起こすトラブルには、本人の心情や特性に配慮したうえで、適切に対処することが求められます。
以下に、発達障がいの子どもを預かることもある保育園・幼稚園スタッフが、心得ておくべき発達障がいの子どもへの対処法をケース別にまとめました。
登園時に大泣きし、親から離れられない
このとき発達障がいの子どもは、居心地の悪い環境に置いていかれること、この後起こることがわからなくて不安を感じています。
本人がリラックスできるおもちゃコーナーへ連れていき、この後お迎えまでの予定を伝え、楽しいことに誘って気持ちを切り替えてあげましょう。
かばんやおもちゃを所定の場所に片づけられない
発達障がいの子どもは、やらなければならない興味のないことはうまく覚えられません。
片づけの手順や方法を教えたいときは、同じシールやマークをつけて物と場所を紐づけ「靴を脱ぐよ」「下駄箱に入れるよ」など動作を言葉で伝えれば、少しずつ覚えてくれます。
じっといていられない
感覚が過敏で、多動性・衝動性も出やすい発達障がいの子どもは、朝の会などみんなでじっとして話を聞くことが苦手です。
本人の集中力が切れないよう、興味を引きそうなおもちゃなどは隠して「今すること」「これからすること」を絵で予告し、落ち着かせてあげてください。
子どもによっては、少し動けば気が済む場合もあるので、何か頼み事をして少し動いてもらうのも効果的でしょう。
お友達と遊ばず、一人遊びばかりしてしまう
このときの発達障がいの子どもは、今何をすべき時間なのか、または他の子どもと一緒に遊ぶための方法を理解できていない可能性が高いです。
周囲が何の遊びをしているかを伝え、保育者が「一緒に遊ぼう」「入れて」と他の子どもたちの輪に入れてもらうのを見せて、一緒に遊ぶことの楽しさや方法を教えてあげましょう。
みんなで一緒に行う製作を、やってくれない
発達障がいの子どもは、目の前の製作課題を理解できない、または興味を持てないと、手をつけてくれません。
そんなときはまず絵で手順を説明し、完成した見本を見せながら1つずつ工程を進めてあげてください。このとき必要のないものは片付け、本人の注意が散らないようにします。
食事をなかなか食べてくれない
味覚や嗅覚が過敏、または食べ物や食べる順番などにこだわりを持つ発達障がいの子どもは、食事がなかなか進まないことがあります。
無理に食べさせると食事自体を嫌がるようになる可能性もありますので、無理強いせず、料理の盛り付け方や調理法を工夫して、楽しく食べられるよう声掛けしてあげましょう。
お散歩に出ると、列から離れてしまって危険
目に入るものに次々と注意を奪われ、新しい感覚が襲ってくる外出先では、発達障がいのこどもは注意散漫や不安状態に陥りやすくなります。
絵で散歩コースや注意点を見せ、外出中の予定を知らせておけば、本人の不安はかなり和らぎます。あとは危険な目に合わないよう、観察し声をかけてあげましょう。
お迎えがきても、作業や遊びをやめようとしない
まだやりたいことが終わっていない、帰り支度の方法がわからない状態で「やめて」「帰るよ」と言われても、発達障がいの子どもはなかなか理解できません。
帰る時間が近づいてきた段階で、絵で「もうすぐ帰る時間」ということを伝えます。
帰り支度は、登園してきたときと同じシールやマークと声掛けで手順を教え、できたら褒めるを繰り返して、気持ちを切り替えられるようにしてあげてください。
おわりに:発達障がいの子どもの特徴は、保育園や幼稚園での集団生活でも現れる
発達障がいの特性は、子どもの頃から現れ始めます。集団生活が始まる保育園や幼稚園では、他の子どもとの関わり方や勉強・遊びへの取り組み方、感覚や感情の表し方から、発達障がいの可能性に気付くケースが多いようです。
子どもを預かる保育園・幼稚園側には、このような子どもたちの意思・特性に配慮した対処が求められます。言葉だけでなく絵でも状況や指示を伝え、成功体験を積ませて、楽しい園生活を送れるようにしてあげてくださいね。
コメント