発達障がいの人は、定型発達の人と比べて、その特性からさまざまな生きづらさを抱えやすい傾向にあります。しかし、リフレーミングといういわゆる「発想の転換」というような考え方を使うことで、生きづらい特性や出来事を長所へと捉え直すことができます。
この記事では、リフレーミングの考え方や期待できる効果、具体的な方法などをご紹介します。ぜひ、自分の特性をプラスに受け入れられるよう、どんどん使っていきましょう。
リフレーミングとは?
リフレーミングとは、心理学用語で「物事を見る枠組み(=フレーム)を変え、別の枠組みで同じ物事を見直してみる(=リ・フレーム)」ことを言います。何か物事が起こったとき、私たちはその物事に対して、それぞれが持つ独自の視点から見ています。この視点のことを「枠組み=フレーム」と呼んでいて、同じ物事に対して視点を変えることをリフレーミングと言い、リフレーミングを行うと、同じ物事に対しても受け止め方や感じ方が変わります。
例えば、レストランに行って、メニューをすぐに決められない人がいたとします。その人について、Aさんは「優柔不断だ」と思うでしょう。しかし、Bさんは「慎重なんだな」と思うかもしれません。Aさんが、見方を変えてBさんのような考え方をすると、メニューを決められない人に対して抱いていた感情が、マイナスからプラスに変化するでしょう。このような視点の変更、とくに良い感情や受け止め方を生む方向への変更をリフレーミングと呼んでいます。
リフレーミングには、大きく分けて以下の2つがあります。
- 状況のリフレーミング
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- 他に役立つような状況を考える、というリフレーミング方法
- レストランの件で言えば、メニューを選ぶときには時間がかかって困るかもしれないが、重要な決断をするときには十分に検討を重ねられて失敗が少ない、と言える
- 内容のリフレーミング
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- 他にどんなプラスの意味や価値があるか考える、というリフレーミング方法
- レストランの件では、優柔不断を慎重と捉え直したことが該当する
リフレーミングを行うことで、物事に対する解釈をより良い方向に変え、気持ちを軽くしたり、気づかなかった可能性を引き出したりことができます。リフレーミングの目的は、このようにその人の感情や行動を良い方向に向かわせることです。
リフレーミングにはどんな効果があるの?
前述のように、リフレーミングは物事に対する視点を変えて、より良い方向へ向かうことが目的です。日常生活の中ではさまざまな出来事が起こりますが、その出来事は基本的に中立であり、意味を与えているのは私たち自身の視点(フレーム)なのです。ですから、基本的にリフレーミングは前向きな気持ちになりたいときや、すぐに行動したいときに使う方法です。
具体的には、以下のようなときに使うと良いでしょう。
- モチベーションを上げたいとき
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- 緊張しているときや、なかなか行動に移せないときに使える
- 例えば、大勢の人の前でプレゼンを行うときに「自分のために大勢の人が集まってくれたので、武者震いしている」「真剣に話すために、緊張しているんだ」などのリフレーミングを行うと、前向きな気持ちや行動する意欲が生まれる
- 自分に自信を持ちたいとき
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- 自分の短所ばかりが目につくとき、長所として捉え直すリフレーミング
- 短所と長所は表裏一体と言われるように、その性格を役立てられる場面や、プラスの価値を考える
- 苦手なタイプの人と付き合わなくてはならないとき
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- その人の「良いところしか見えない」と仮定してリフレーミングしてみる
- 苦手なタイプの人には、つい嫌なところが目についてしまったり、気が重くなったりしてしまうため、多少強引に見方を変えてみる
- 例えば、厳しく小言が多い上司は、あえて言いたくないことも言ってくれているとも言える
- 良い点に目を向けるようにすると、相手にいい意味で興味を持てるようになり、良い人間関係を築くことができる
このように、嫌なことやネガティブに捉えてしまう出来事があったときには、どんどんリフレーミングしていくと良いでしょう。リフレーミングでは、「どんな出来事もその出来事自体は中立であり、プラスの面がある」と考えます。ネガティブな出来事をポジティブに捉えることができれば、社会の中で生きづらさを抱えやすい発達障がいの人でも、困難や失敗を「いい経験」「良かった記憶」にすることができるのです。
リフレーミングのやり方は?
リフレーミングは、以下の3ステップの手順で行っていきます。
- 1:出来事を特定する
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- まず、行動できない、幸せでないなど、リフレーミングしたい出来事を洗い出す
- 2:解釈を変えるための質問をする
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- 状況のリフレーミングまたは、内容のリフレーミングに関する質問をしていく
- 出来事に対する反応を変えたいなら、内容のリフレーミング
- 内容のリフレーミングでは、「他にどんな意味や表現がある?」と質問する
- 「〜しすぎる」といった行動に対しては、状況のリフレーミング
- 状況のリフレーミングでは、「他にどんなとき、この行動は役に立つ?価値が見いだせる?」と質問する
- 3:出来事に関する感じ方を確認する
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- 最後に、その出来事に対する感じ方や受け止め方が変わったかどうか確認する
- 気持ちが楽になったり、行動する意欲が出てきたりしたなら、成功
- 元の状態と変わらなければ、別なリフレーミングを試したり、他の人の協力を得たりする
最後に、具体的な例として、「自閉症スペクトラムの特性をリフレーミングする」「短所に見える性格をリフレーミングする」「行動や過去に対してリフレーミングする」の3つをご紹介します。これらの具体例を参考に、ぜひ、自分でもどんどんリフレーミングを行ってみてください。
自閉症スペクトラムの特性をリフレーミングする
自閉症スペクトラムの特性に対してリフレーミングする場合、以下のような例が挙げられます。
- 言葉以外から他人の伝えたいことを読み取れない
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- 言葉ではっきり言われたこと以外の情報に惑わされにくい
- 音声で伝えられた内容を理解しにくい
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- 目で見ればわかることから、書面できちんと証拠や経過を辿りやすい
- 興味・関心の範囲が狭い
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- 好きなものには強い関心を示し、エネルギーを集中しやすい
- 変化が苦手である
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- 習慣化しやすく、慣れたやり方が得意
- 感覚が独特である(感覚過敏や鈍麻など)
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- 変化や違いに気づきやすい、あるいは忍耐強いなど
- 多動性や衝動性(落ち着きがないなど)
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- 行動力があり、エネルギッシュである
自閉症スペクトラムの特性は、生きづらさにつながりやすいことが多く、ネガティブな解釈をしてしまいがちです。しかし、それは今の社会の多くが定型発達の人に生きやすいように整備されているからであり、状況が変わればその特性は長所に変わります。そのように、特性を長所として活かせるような状況や、特性のある意味を考えてみると良いでしょう。
短所に見える性格をリフレーミングする
短所だと思っている性格があれば、以下のようにリフレーミングしてみましょう。
- 八方美人
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- 誰とでも仲良くなれて、協調性がある
- 頑固
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- 決して諦めない忍耐強さと信念の強さがある
- おせっかい
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- 面倒見がよく、他人のことによく気を配れる
- 口下手
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- 一方的に喋らず、人の話をよく聞くことができる
- 意志が弱い
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- 柔軟性があり、状況や人に合わせることができる
- こだわりが強い
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- 自分の価値観をしっかり持っている
短所とされる性格も、状況次第で長所になりえます。もし、自分の性格で嫌いなところがあれば、積極的にリフレーミングで長所に言い直していきましょう。
行動や過去に対してリフレーミングする
行動や過去など、マイナスに捉えやすい事柄について、以下のようにリフレーミングしていきましょう。
- 失敗してしまった
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- 次に活かすため、良い経験ができた
- 静かな場所にいるのに、大声で喋っている
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- 宴会のときなど、良い盛り上げ役になってくれる
- 内気で引っ込み思案である
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- 落ち着いていて、じっくり考えてから行動できる
- 親に厳しく育てられて、臆病になっている
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- 人の気持ちを察せて優しく、同じ境遇の人に寄り添える
- 自分に自信がない
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- 自分に謙虚で、これから自信をつけるために経験を積む楽しみや伸びしろがある
- 人を上下関係で考え、ネガティブな気分になってしまう
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- 相手や自分の良いところに気づけ、できないことは素直に教わることができる
このようにリフレーミングしていくと、悪いこととしか捉えられないと思い込んでいたことも、良い意味に変えていけることがわかるでしょう。あくまでも、出来事に対して悪い意味や気分をつけてしまっているのはとある限られた「視点=フレーム」なのだと理解し、視点を変えて良い意味や気分に置き換えていくことが、リフレーミングで最も大切なことです。
おわりに:リフレーミングで、困難や生きづらさを良い経験や記憶に変えていこう
リフレーミングとは、ある出来事に対する見方を変えて、気持ちを軽くしたり、気づいていなかった可能性を引き出したりすることです。例えば、短所に見える性格が役立つ状況を考えたり、マイナスに見える行動にプラスの価値や意味を見出したりします。
発達障害の特性も、ある状況では生きづらさを感じるかもしれませんが、状況が変われば長所になります。ぜひ、どんどんリフレーミングで良い経験や記憶を増やしていきましょう。
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