発達障がいは、生まれつきの脳の特性によってさまざまな症状が現れる障がいです。確定診断を受けたうえで申請すると障がい者手帳が発行される場合もあります。では加入者が病気やケガで障がいを持つ状態になったときに子宮される「障害年金」も受け取れるのでしょうか。
今回は、発達障がいの人が障害年金を受け取れるケースとその基準について、解説します。
障害年金はどんな人が対象?「障害基礎年金」と「障害厚生年金」とは
障害年金は、病気やケガのために労働や生活に困難が出る人を助けるための制度です。
大きく分けて「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、それぞれ以下のように受け取れる金額や、設定されている等級が異なります。
障害基礎年金
- 初診日に加入している年金制度が、国民年金であった人に適用される障害年金
- 1級と2級があり、それぞれ受け取れる年金額が変わってくる
- 1級の場合…1年あたり97万4125円、1ヵ月あたり8万1177円
- 2級の場合…1年あたり77万9300円、1ヵ月あたり6万4941円
障害厚生年金
- 初診日に加入している年金制度が、厚生年金であった人に適用される障害年金
- 1~3級までの等級があり、それぞれ受け取れる年金額が変わってくる
- 1級の場合…報酬比例の年金額×1.25+97万4125円(障害基礎年金1級の年間支給額)
- 2級の場合…報酬比例の年金額+77万9300円(障害基礎年金2級の年間支給額)
- 3級の場合…報酬比例の年金額(最低保証額は58万4500円)
自閉症スペクトラムやアスペルガー症候群、広汎性発達障がい、学習障がい、ADHDなどの発達障がいも、上記のような障害年金の支給対象となっています。このため受給の条件を満たし、きちんと申請手続きを終えてさえいれば、発達障がいの人も初診日から1年6か月後には障害年金を受け取れる可能性があるのです。
発達障がいの人が障害年金がもらえる条件は?
障害年金の支給金額は、認定される等級によって大きく変わってきます。
等級の認定には一定の条件が定められていて、発達障がいの場合は、以下のような基準で1~3級までの等級が決定されることになります。
- 「1級」に認定されるための基準
- 発達障がいのためにコミュニケーションに問題があり、社会性が欠如しているために著しく不適応な行動が見られる。常時援助がなければ、日常生活が困難と認められる
- 「2級」に認定されるための基準
- 発達障がいのためにコミュニケーション能力が乏しく、不適応な行動が見られる。常時とは言えないものの、日常生活への適応に援助を必要とする
- 「3級」に認定されるための基準(障害厚生年金の場合)
- 発達障がいのためにコミュニケーション能力が不十分で、社会行動に問題が見られるため、労働が著しく制限される。
※3級の設定がない障害基礎年金の場合は、障害年金の支給対象とは認定されません。
なお等級の認定は、2019年9月に公開された「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」を目安に行われています。
ガイドラインでは、障害年金の請求者が1人暮らしをした場合の日常生活の能力について、以下のような場面を仮定して評価するよう定めています。
「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」が定める日常生活能力の目安
まず以下7つの場面において、どの程度自発的にできるかを4段階で評価します。
日常生活能力の判定
- 配膳などの準備も含め、量・バランスともに適当な食事を摂ることができるか
- 洗面、洗髪、入浴、着替えなど身体の衛生保持のための行動や掃除が問題なくできるか
- 独力で金銭を管理し、計画的な買い物をしてやりくりができるか
- 通院や服薬を独断で規則的に行い、病状を自分で主治医に伝えられるか
- 自分の意思を相手に伝え、他人の話を聞いて集団行動をとれるか
- 異常時に他人に助けを求めるなど、自分の身を守るために必要な対応を取れるか
- 社会生活に必要な銀行や役所での手続き、公共施設などの利用が1人で可能か
また日常生活能力の程度について、以下の5段階のうち最も近い状態を選び評価します。
日常生活能力の程度
-
- レベル1…精神障がいを認めるが、社会生活は普通にできる
- レベル2…精神障がいを認め、家庭内での日常生活は問題ないが、社会生活に援助が必要
- レベル3…精神障がいを認め、単純な日常生活はできるが、場合によっては援助が必要
- レベル4…精神障がいを認め、日常生活における身の回りのことも含め多くの援助が必要
- レベル5…精神障がいを認め、身の回りのこともほとんどできないため、常時援助が必要
おわりに:発達障がいの人も、条件さえ満たしていれば障害年金を受け取れる
病気やケガのために日常生活や労働、社会生活に困難を抱える人を救済する制度として、障害年金は存在します。そして障害年金の支給対象となる病気には、自閉症スペクトラムやADHDなど、発達障がいも含まれているのです。ただし障害年金として受け取れる金額は、加入している年金の種類や、認定される等級によって大きく変わってきます。発達障がいで障害年金の受給を考えているなら、まずは認定の基準と自身の等級を理解しましょう。
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