ADHDとは、発達障がいの1つで、注意力不足や衝動性、旺盛な好奇心、好きなことへの集中力などに特徴があります。大人のADHDも存在し、特性は脳機能の問題ですから、投薬などで軽減できても、定型発達と同じになることはありません。
仕事においては、特性のマイナス面が負担にならず、長所を活かせるような職業に就いたり、職場の環境調整をするとぐっと働きやすくなります。この記事では、ADHDの適職や環境づくりのヒントをご紹介します。
ADHDの適職や長所を活かせる業界って?
ADHDの人は、一般的に「個人のスキルが要求される仕事」「興味・関心が活かせる仕事」で能力を発揮できると言われているため、デザイナーなどのクリエイター系や、エンジニアなどの技術職に向いています。
逆に、組織の中で細かい人間関係やコミュニケーションをはかる必要がある仕事には向いていないと言われています。
具体的には、以下のような職業です。
- ADHDに向いている仕事
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- デザイナー・クリエイター・漫画家・アニメーター・イラストレーターなど
- プログラマー・エンジニアなど
- ADHDに向いていない仕事
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- 接客業・保育士・医師・秘書・営業・パイロットなど
ADHDは、注意欠陥・多動性障害とも呼ばれるように、どうしても特性のマイナス面が強調されがちですが
- 興味・関心のあることへの探究心や集中力は人一倍高い
- 躊躇せず行動できる
- 変化を恐れない
という大きな強みもあります。
つまり、興味・関心の高いことに関するもので、かつ、個別にカスタマイズされた仕事でこそ、この強みを発揮できるのです。
ですから、仕事を探すときには「自分の興味・関心が高い分野」「新しいことにどんどんチャレンジできる仕事」「個人のスキルのみが要求される仕事」を選ぶと良いでしょう。とくに、新しいことに次々とチャレンジできる仕事は、ADHDの人の行動力や好奇心を最大限に活かせます。
しかし、逆に、「いくつかのことを同時並行で処理する」「絶対にミスが許されない」「目的がわからないルールを遵守する」「暗黙のルールを察する」などのことは苦手な傾向があります。
とくに、ADHDに限らず、発達障がいの人は一般的にものごとを同時進行したり、暗黙のルールを察して空気を読むといったことが苦手です。こうしたスキルが必要とされる仕事は避けた方が良いでしょう。
ここまで、一般的なADHDに当てはまる傾向として適職とそれ以外をご紹介してきました。しかし、持っている特性には個人差があり、必ずしもADHDの人全員がこの傾向すべてに当てはまるとは限りません。
ADHDだからという固定観念に縛られすぎず、まずは自分の得意なことと苦手なことをしっかり理解し、自分の得意なことに合った仕事を選ぶことが大切です。
ADHDの特性を活かせる「働きやすい環境」の作り方とは?
ADHDの人が仕事をしやすくするためには、自分の働きやすい仕事を選ぶとともに、働きやすくなる環境を作ることも大切です。
ADHDの特性である不注意性・衝動性・多動性は、自分の意思だけではどうにもならないものですが、逆に言えば、こうした特性がマイナスに働かないようあらかじめ自分で環境を作り、かつ、自分だけでは防ぎきれないところはきちんと説明して周囲に理解を得れば、無理な努力をしなくてもスムーズに働けるようになります。
具体的な例として、以下のような環境調整をしていきましょう。
- 誤字などのケアレスミスが起こりやすい場合
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- 上司や同僚、取引先にお願いして、提出した資料をチェックしてもらう
- 失敗が許されない資料の場合、校閲など有料サービスなどを利用してチェックしてもらう
- 注意散漫になってしまう、作業の優先順位をつけられない
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- 机に仕切りをつける、作業スペースを区切るなどして作業だけに専念できるようにする
- 作業の同時進行を避け、1つ1つ進める。同時に指示されたときはメモしておき、自分なりのToDoリストを作り、言われた順に進めていく
- 忘れ物が多い
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- 大切なものは1ヶ所にまとめ、仕事用の持ち物は最小限にする
- 持ち物リストを作る、よく忘れるものはあらかじめカバンに替えを入れておく
- 絶対に忘れられないものは、前日のうちにカバンに入れておくか、入らなければ目につくところに置いておく
- 仕事の締切や約束の日を守れない、忘れてしまう
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- 締切は実際の提出期限よりも早めに設定してもらう、または自分で設定する
- スケジュール表を作って目につくところに貼り、何度も確認できるようにする
- アラームやリマインダーアプリなどを活用し、通知で思い出せるようにする
- 会社勤務で、仕事の内容が時間的に自分に引き受けられるかどうか判断がつかない場合は、上司や同僚に相談してから決めるとよい
- 会議中座っていられない、自分の発言の順番を待てない
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- 1ヶ所に座るのは30分程度であることを周囲に説明しておく、早めに到着してホワイトボードへの書記を担当するなど
- 思いついたことをその場で発言するのではなく、まずメモに書く習慣をつける
- 発言するときは他の人の発言が終わってからであることに気をつけるとともに、「すみません、発言しても良いでしょうか」など、必ず了承を取るくせをつける
このように、注意力不足・衝動性・多動性も、あらかじめ自分で環境を整えたり、周囲に理解を求めておくことで事前に防げることがわかります。
ADHDは決して努力不足ではなく、脳機能の特性として仕方がないことなのです。定型発達の人と「同じように同じ手順で」できなくてはと思い込むのではなく、定型発達の人と同じような「結果」に結びつくためにはどんな工夫ができるのか、と考えるとよりよい環境を作れるでしょう。
おわりに:ADHDの人は好奇心や興味・関心を活かせる職業に就こう
ADHDの人は、その特性や名称上、どうしてもマイナス面の特性が強調されてしまいがちですが、実は好奇心や行動力、興味・関心の向いたことには驚異的な集中力を発揮できる、というようにプラスの面もたくさんあるのです。
そこで、まずはプラス面を活かした職業を選びましょう。その上で、職場ではマイナス面をカバーできるような対策を立てることが大切です。周囲にも説明して理解を求め、自ら積極的に環境調整を行いましょう。
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