近年、精神医学などの分野で「生きづらさ」という概念が注目されるようになってきました。こうした「生きづらさ」を感じる背景には、その人が人と違う特性を持っている場合が多々あります。
さまざまな分野に高い才能を持つとされる「ギフテッド」もこうした生きづらさを感じやすい特性の1つです。ギフテッドとはどんな定義を持つのか、見分けるにはどんなところに注目すればいいのか、見ていきましょう。
ギフテッドにはどんな定義があるの?
ギフテッドとは、「知性・創造性・芸術性・リーダーシップ、あるいは特定の学問での偉業を成し遂げる能力がある個人」のことを示す言葉である、とアメリカの「初等中等教育法、落ちこぼれ防止法」に記載されています。上記に運動分野を加えた計6分野のうち、どれか1つでも優れたものがあれば「ギフテッド」である、ということです。
ギフテッドの6分野で認められるような能力をもう少し具体的に紹介すると、以下のようになります。
- 知性
-
- 抽象的な概念を理解する
- 複雑な方法で情報を処理する
- 観察力が鋭い
- 新しいアイデアに興奮する
- 仮説を立てるのを楽しむ
- 学ぶのが早い
- 語彙が豊富である
- 何でも知りたがる
- 物事を自発的に始められる
- 創造性
-
- 一人でものごとを考えられる
- 口語および文章で、独自の意見を披露できる
- 与えられた課題に対し、複数の解決策を打ち出せる
- ユーモアのセンスがある
- ものを作り、発明する
- クリエイティブな課題に対して興奮する
- アドリブで物事に対処できる
- 他者と違うことを気にしない
- 芸術性
-
- 空間把握能力に非常に長けている
- ダンス・演劇・音楽などで自己表現する能力が非常に高い
- バランスのとれた感覚を持っている
- クリエイティブな表現力がある
- 独自の作品を作ることにこだわる
- 優れた観察力がある
- リーダーシップ
-
- 責任を理解する
- 自分と他人に対して厳しい
- 流暢で明確な自己表現能力
- 物事の選択に対しての結果や意味合いを予知する
- 決断力がある
- 組織・チームが好き
- 仲間に好かれる
- 自分に自信がある
- 整理整頓能力がある
- 特定の学問
-
- 優れた記憶力
- 発達した理解力
- 基礎的な知識を素早く習得する
- 特定の興味のある分野で、優れた学業の功績がある
- 情熱と根気を持って特定の分野で邁進できる
- 運動能力
-
- 難しいアスレチックな技などに興奮する
- 運動における正確性・緻密性がある
- 様々な体育の活動を楽しめる
- 優れた運動神経や操作能力がある
- 高いエネルギーレベルを持っている
ギフテッドの子どもに見られる特徴は?
上記のような定義は非常に抽象的なもので、専門家以外が判断するのは難しいこともあります。そこで、ギフテッドの子どもに共通する見分けやすい特徴として、以下のようなことに注目すると良いでしょう。
- 物事を学ぶのが早い
- 非常に優れた記憶力を持っている
- ニュアンスやメタファー、その他の複雑な概念を理解するのが早い
- 小学校入学前から、読み書きができることが多い
- 非常にセンシティブである
- 幼い年齢の頃から、理想主義で正義感に溢れている
- 長時間集中していられる
- 深い質問をする
- ビビッドな想像力があり、多くの場合は幼少期に空想上の友人がいる
- ユーモアのセンスがある
- パズルなどの問題を解くのが好き
ギフテッドの子どもは、学校の成績ではオール5を取る子も多いのですが、普通の教室形式での授業には退屈してしまう子も多いため、態度などの点で成績が悪くなることもあり、一概に学校の成績が良い子がギフテッドとは限りません。
また、ギフテッドの特徴として「感情的な強烈さ」というものがあります。これは、以下のような特徴として現れます。
- 共感力が高い
-
- 自分の気持ちも相手の気持ちも強く感じ取る
- 身体的な現れ
-
- 強烈な感情が、ときに腹部の緊張感など身体症状として現れる
- シャイさ・内気さ
-
- 相手の気持ちや意図、自分の気持ちや言うべきことを強く感じてぎこちない反応になる場合がある
- 自分の一挙手一投足への周囲の反応も強烈に感じ取るため、のびのびと振る舞えなくなる
- 癇癪
-
- 思い通りに行かないことも強烈に感じてしまうことから、感情をコントロールしきれないことも
- 不安感
-
- 周囲が気にもとめないような些細なことを強く感じ、不安が尽きない
- 自己評価の厳しさ、抑うつ状態
-
- 上手くできなかったことや小さな失敗を強く感じ、自分を責めて落ち込んでしまう
- 変化への順応が難しい
-
- 強烈に感じるために、気持ちを切り替えるのが難しいこともある
こうした感情面・情緒面の強烈さから、ギフテッドの子どもたちは「自分はおかしい」と感じたり、自己批判や不安感、劣等感に拍車をかけてしまったりすることがあります。周囲からも「大げさ」「神経質」と見られて孤立してしまったり、学校などの集団生活に馴染めなかったりすることもあります。
ギフテッドの子どもへ、どう接すればいい?
ギフテッドの感情面・情緒面での強烈さは、すなわち感受性の強さということでもあります。そこで、家庭では以下のようなポイントをおさえて接すると良いでしょう。
- 感情を受け止める
-
- 「いちいちそんなことを気にするな」「めそめそ泣くな」などと感情を否定しない
- まずは抱きしめて安心させるなど、本人にとって「わかってもらえた」「サポートしてもらえた」と感じられる対応を心がける
- なるべく「穏やかなしつけ」を心がける
-
- シンプルで一貫したルールに則り、穏やかな姿勢でしつけをすることで、安心感や健やかな感情を発達させる
- ルールの利点を説明し、守った場合、守らなかった場合の結果についても話し合う
- 感情について話し合う
-
- ポジティブな感情だけでなく、ネガティブな感情についてもよく話し合う
- 例えば、ネガティブな感情について「最悪」から「そうでもない」まで1〜10段階の強さで表すなど
- このように感情を数値化することで、本人の感じている状態を自分自身で冷静に客観視させられる場合も
- 感受性の強さの良い面を伝える
-
- 強烈な感受性はなにもおかしなことではなく、ユニークに物事を処理し、情熱を持って取り組むための「ギフト」だと伝える
- 子ども自身が自分の特性について、肯定的に認められるように助ける
- 「敏感さ・繊細さ」は「弱さ」とは異なるということを伝える
- 本人の発達の段階にふさわしいタスクに取り組む機会を与えたり、日常生活でぶつかる問題を自分で解決できるよう促したりと、守りすぎないことにも注意する
- 自己表現の方法を見出すサポートをする
-
- 強烈な感情を物語や詩などの文章として、あるいは絵や彫刻などのビジュアルアートとして、音楽や身体的活動によって表現する方法を見つけるサポートをする
- 似た特性の人と交流する機会を見つける
-
- 社会的な孤立を防ぐため、できる範囲で似たような特性を持った仲間と交流できる機会を見つける手助けをする
- 伝記を読んだり、周囲の人々の生活を見たりして「ロールモデル」を見つけられるよう励ます
感受性の強さは、さまざまな分野での高い能力と隣り合わせになっています。適切な対応をすることで、子どもたちが感受性の強さに悩み苦しむことなく、自分の「ギフト」に自信を持ち、能力を惜しみなく発揮できるようサポートしてあげるのが良いでしょう。
もし、家庭内では手に負いきれないという場合は、ギフテッドや感受性の強さに詳しい専門家のカウンセリングを受けるなどして、方針を示してもらうのも一つの方法です。
おわりに:ギフテッドは能力の高さや感受性の強さに大きな特徴がある
ギフテッドとは、知性・創造性・芸術性・リーダーシップ・特定の学問・運動分野の6つのどれか1つ以上で偉業を成し遂げる能力がある人のことです。必ずしも学校の成績が良いとは限らず、感受性の強さから感情面・情緒面で苛烈さを見せることがあり、自分はおかしいのではないかと自信をなくしてしまう子もいます。家庭では子どもが自分の特性に悩み苦しむことなく、能力を十分に発揮できるようサポートしてあげると良いでしょう。
コメント