最近では通勤電車の中でも、スマホや持ち運び用のゲーム機器でゲームを楽しんでいる大人も多く見かけます。実は近年問題視されているのが、「大人のゲーム依存症」です。ご自身やご家族がゲームにハマってしまっているなら、ぜひ症状をチェックしてみてください。
ゲーム依存症は大人に多い「病気」!?
「ゲーム依存症(ゲーム障害)」とは、2018年にWHOから「病気」と認定された精神疾患の一種です。オンラインゲームやスマホ、パソコンなどを使ったゲームに過度に依存することで、日常生活や社会生活、健康面に支障をきたす状態を指します。
以前は10~20代の子どもや若者に多く見られる病気でしたが、近年はスマホの普及や大人向けのゲーム機器類の発展に伴い、30~40代の患者さんも増加傾向にあります。
ゲーム依存症になる原因って?
ゲーム依存症の原因には、「理性」を司る脳の前頭前野の機能低下が関連しているとされます。
健康な人の脳は前頭前野の働きが優勢なため、理性によって衝動や依存を避けることができます。しかしゲーム依存症の患者さんの脳は、前頭前野の機能が低下しており、「本能」や「感情」を司る大脳辺縁系の働きが優位になっているので、依存状態から抜け出すのが難しい状態にあるのです。
また、ゲーム依存症の患者さんの脳では、ゲームを見ると脳に異常反応が見られることもわかっています。これはギャンブル依存症やアルコール依存症の患者さんの脳でも確認できる反応で、「遊びたい」という衝動的な欲求を抑えにくいことを示します。
なお、ゲームへの依存が続くとさらに前頭前野の機能が低下し、ますます依存状態から抜け出しにくくなるようです。
大人がゲーム依存症になる原因は?
本来ゲーム依存症は、脳の前頭前野の機能が十分に発達しきっていない未成年者に多く見られる病気です。しかし近年では、脳の機能発達が終わったはずの30~40代の大人の患者数も増えています。なぜでしょうか?
主な原因とされるのが、「充足感が得られにくい世の中になってきた」という社会的背景です。普段の生活が味気なかったり、仕事にいくら労力を費やしても将来に希望が持てなかったり、休日をゆっくり過ごす余裕や体力がなかったり…など、働き盛りの世代は多くのストレスを抱えています。
そんなストレスを解消したくてゲームで気晴らしをするうちに、どんどんのめりこんで依存状態に陥った大人の患者さんが非常に多いというのが実態です。
発達障がいだとゲーム依存症になりやすい!?
現代は健康な大人でもゲーム依存症に陥ることは珍しくありませんが、特に発症リスクが高いとされるのが「発達障がい」の人です。
ADHD(注意欠如・多動症)や、アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラム障がいなどの一部の発達障がい者は、ゲームやギャンブルにハマりやすい傾向があることが近年わかってきました。
ADHDやアスペルガー症候群の人は、興味のある物事に没入するほど高い集中力を持つため、ゲームが好きな発達障がいの人は時間を忘れてゲームをし続け、いつしか依存状態になってしまいます。
また、ADHDやアスペルガー症候群とゲーム依存症を併発している患者さんの場合、リアルな社会生活・日常生活に溶け込めない分、ゲームの中では評価されることに一層快感を覚えやすいのも、依存からなかなか抜け出せない原因の一つです。
大人のゲーム依存症の症状をチェック!
では、ゲーム依存症になるとどんな症状が出るのでしょうか?
依存症になりかけの「兆候」状態の症状、実際に発症したときの症状、診断基準を細かく紹介します。
ゲーム依存症の兆候
下記の8つの症状は、ゲーム依存症の兆候とされています。
- ゲームをする時間が、以前よりもかなり長くなった
- 夜中までゲームを続けることがある
- ゲーム疲れで、朝起きられない
- 一日中、ゲームのことが気になってしまう
- ゲーム以外のことに興味を持てない
- ゲームのことを注意されると、激しく怒り出す
- 実際のゲーム時間等について嘘をつく
- ゲームへの課金が多い
大人のゲーム依存症で特に深刻なのが、「ゲームの課金」です。子供よりお金を自由に使える分、際限なく課金を続けてしまい、家庭内での家計トラブルや離婚に発展するケースも少なくありません。
課金に限らず、これらの兆候が見受けられる場合は、ゲームの時間を減らすよう注意しましょう。
ゲーム依存症の症状
前述の通り、ゲーム依存症の患者さんはアルコールやギャンブル依存症の人と同様に脳への影響が見られます。これら依存症には、「渇望」「コントロール障害」「離脱症状」「耐性」「生活への支障」「やめられない」という6つの共通する症状があります。
ゲーム依存症では、下記のような形で症状が現れます。
- 渇望
- 「ゲームをもっとやりたい」という強い渇望が見られます。
- コントロール障害
- ゲームに費やす時間を自力では調整できず、場所を選ばずに遊んでしまいます。
- 離脱症状
- ゲームができない時間が続くと、イライラしたり、無気力になったりします。
- 耐性
- ゲームをする時間が徐々に増え、10時間以上続けても満足できなくなります。
- 生活への支障
- ゲーム中心の生活になり、会社を休み始めるようになったり、仕事中の集中力も減ったりします。
- やめられない
- 特にオンラインゲームの場合、ネット上にゲーム仲間がいるため、自分のペースでやめにくいのが特徴です。またゲーム自体にユーザーを長時間滞在させる仕掛けがあり、他の依存症以上にやめにくいという厄介な訴因もあります。
また、この他にも下記のような身体面の症状が出ることがあります。
- 視力の低下
- 長時間画面を見続けることで、視力が低下しやすくなることがわかっています。
- 肺活量の減少
- 引きこもりがちになり、運動量が減ることで肺活量が減少することがあります。
- 睡眠障害
- ゲームによって過度に脳が刺激され、なかなか寝付けない場合があります。また、深夜までゲームをすることで昼夜逆転し、不眠や睡眠の質低下などを引き起こすケースも少なくありません。
ゲーム依存症の診断基準
WHOの「国際疾病分類(ICD:病気の名称や症状を示す)」の基準では、下記の3つの症状が1年以上続いた人がゲーム依存症と診断されます。
- ゲームをする時間・頻度を自分で制御できない
- 日常生活の活動やその他の関心ごとより、ゲームを最優先する
- 欠席や欠勤、家庭内トラブル等に発展しているにも関わらず、ゲームを続ける
おわりに:「ゲーム依存症かも?」と思ったら早めに対策を
ゲーム依存症は子供だけでなく大人も発症することのある、立派な「病気」です。スマホ等でのゲームに費やす時間が長くなり、日常生活に支障をきたし始めているなど具体的な症状が出ている場合、まずは自身で時間を区切るようにしましょう。ただ、ゲーム依存症は自力で克服することの難しい病気なので、専門医のもとで治療を受けることもおすすめします。
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