スマホの普及とともに、30〜40代の大人のゲーム依存症患者が増加傾向にあります。実際、旦那さんがゲーム依存症になってしまい、仕事に行かなかったり家事を手伝ってくれなかったりして、離婚に発展するケースも少なくないようです。今回はゲーム依存症のパートナーでお悩みのご家族に向けて、治療法をご紹介します。
大人のゲーム依存症は、仕事や生活に支障が出たら病院へ
ゲーム依存症(ゲーム障害)とは、ゲーム機器やスマホを使ったゲームに過度に依存し、日常生活や社会生活、健康面に支障をきたす精神疾患の一種です。
ゲーム依存症を発症すると、1日の大半の時間をゲームに費やすようになり、仕事や家事をおろそかにするようになります。
もし、下記の症状が見られるようなら、専門の病院を受診しましょう。
- ゲームをする時間がかなり増えた(1日10時間以上)
- 実際のゲーム時間や課金費用について嘘をつく
- ゲーム依存によって、会社の遅刻や欠勤が増えた
- 会社での業務成績や、仕事中の集中力が低下している
- 家事・育児を手伝わず、ゲームを最優先する
- 家族間の会話が減った
- キレやすくなり、暴力や暴言を振るうようになった
- ゲームができないとイライラする
- 寝付けない、昼夜逆転などの睡眠障害が出ている
- 食生活が乱れている、食事の頻度が減っている
- 入浴よりもゲームを優先し、入浴頻度や時間が減っている
- 視力低下や眼精疲労などの目の異常が出ている
旦那さん等のゲーム依存症患者が受診を拒否した場合
実は、家族から「ゲームをやりすぎじゃない?」「少しは家事を手伝ってよ」等と指摘したり、ゲーム依存症の専門外来に通うようにすすめても、本人が反発するケースは多いです。
第三者からの指摘ならフラットに自覚しやすいですが、家族からの指摘だとつい感情的に受け止めがちだからでしょう。
家族が接するときは、あまり批判的にならず、子どもの言うことに耳を傾けるようにしてアプローチするのがポイントです。急にスマホやゲームを取り上げて完全に遮断しようとすると、反発心が強まり、健全な回復を遅らせる恐れがあります。
もし本人が自覚を持てないようなら、家族が先に動き出すという手もあります。医療機関によっては、家族だけでの受診や相談に対応してくれる場合もあるので、まずはその旨を病院に連絡し確認しましょう。
なお、2019年時点では、ゲーム依存症(ネット依存症)の治療は全国で約80カ所の医療機関で受けることができます。受診先に迷ったら、最寄りの精神保健福祉センターや保健所に問い合わせてみてください。
大人のゲーム依存症の治療方法は?
ゲーム依存症の治療は、「診察」「カウンセリング」「デイケア」「入院療法」の4つの段階を経て行われます。
診察
患者さんの症状や健康状態、日常生活をチェックし、それに基づいた治療方針を医師が立てます。その後、定期的な診察やカウンセリング等でフォローを続けていきます。病院によっては血液検査やMRI、脳波測定、体力測定といった身体検査も行います。
なお現段階では、ゲーム依存症に有効な治療薬はありません。ただし、依存によって不眠等の症状がある場合は、診察時に薬が処方されることがあります。
発達障がいの診断を併せて行うことも
ADHD(注意欠如・多動症)やアスペルガー症候群や自閉症(自閉症スペクトラム障がい)などの発達障がいの人は、興味を持った物事に没入する傾向にあり、それが原因でゲーム依存症を併発している可能性もあります。
そのため、診察の際には発達障がいかどうかの心理的評価も行うのが一般的です。
カウンセリング
医師や心理士と患者さんが面談し、自身のゲーム依存症の状態についての理解を進めることで、ゲームの時間を減らしたり、やめたりする必要性に気づくよう対話を行っていきます。
このカウンセリングの際には、ゲーム依存症になった原因を細かく聞き取ります。大人のゲーム依存症は日常生活のストレスや、発達障害が関連している場合があるので、その原因に沿った治療を進めていくことになります。
デイケア
デイケアは集団でのスポーツや食事、ディスカッションなどを通じて「①ゲーム以外にも楽しいことはあると気づかせる」「②ゲームに触れる時間を減らす」目的で行います。
ゲーム依存症の人は運動不足によって体力が低下していることが多いので、実際に体を動かすことで体力低下を実感できるという効果があります。
ディスカッションでは、「どうやってゲームの時間を減らしていくか」「ゲーム以外の日常生活を充実させるにはどんな方法があるか」を具体的に話し合います。実際にゲーム依存症から回復した人の体験談を聞くことで、気づきが得られることも多いです。
入院療法
診察やカウンセリング、デイケアなどの治療をしても、ゲーム依存症が改善されない重度のケースでは、入院療法が実施されます。
入院療法を実施している医療機関は少なく、入院期間もその医療機関ごとに多少異なりますが、基本的には2ヶ月程度です。入院すると物理的にゲームなどのオンライン機器は使えないので、ゲームに依存していた状態から脱却し、本来の自分や生活リズムを取り戻しやすくなります。また、入院中も医師や家族間で話し合いを繰り返し行い、退院後のゲームとの付き合い方についても具体化していきます。
なお、退院後も再度ゲーム依存症にならないよう、スマホやゲームに短期間触らないよう訓練をしていきます。
「ゲーム以外の楽しみを見つける」のが大切
ゲーム依存症の患者さんは、日常生活に居場所や楽しみがない分、よりゲームに没頭してしまう傾向にあります。そこで重要なのは、上記のような専門治療だけでなく、「ゲーム以外の楽しみを見つける」ことです。スポーツやレジャー、芸術活動など、ゲーム以外で没頭でき、かつ自己肯定感が高まる趣味は何か、自分自身で掘り下げて考えてみることも大切です。
おわりに:大人のゲーム依存症治療は、家族や第三者の協力がカギ!
スマホなどで手軽にゲームができてしまう現代では、ゲーム依存症はギャンブルやアルコール依存症よりも自力で克服しにくいとも言われています。多くの患者さんは病気だと認めたくない傾向にあるので、家族や第三者が上手に呼びかけて、専門の病院に通院させることが大切です。患者さんが「ゲーム以外の楽しみ」を見つけるには、家族や周りの人の協力やアシストも欠かせません。
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