発達障がいの子どもは、その特性から睡眠障害になりやすいと言われています。睡眠障害とは、眠りが浅い、寝つきが悪い、など十分に良質な睡眠が取れなくなってしまう状態のことで、特に乳幼児期〜学童期の発育には十分な睡眠が欠かせません。
そこで、発達障がいだとなぜ睡眠障害になりやすいのか、また、睡眠障害が疑われる症状、サインにはどのようなものがあるのかについてご紹介します。
発達障がいと睡眠障害の関係性とは?
発達障がいの二次障害として、睡眠障害が起こりやすいことがわかっています。これは発達障がいと睡眠障害そのものが合併症のように引き起こされるということではなく、発達障がいの特性によって、睡眠に何らかの問題が起こりやすいという副次的な要因によるものです。
特に乳幼児期には寝つきが悪い、少しの物音で起きてしまう、途中で目を覚ますとなかなか寝られないなど、乳幼児期に必要な十分な睡眠がとれないこともよくあります。
年齢に応じた睡眠リズムが確立できないと、脳の発育に影響が出ることもわかっていて、睡眠障害が長引くと睡眠不足や睡眠リズムの乱れから生活のリズムそのものも乱れる悪循環となり、子どもの心身の発達に余計に悪影響を及ぼす可能性もあります。
なぜ発達障がいだと睡眠障害になりやすいの?
発達障がいの人は、それぞれの特性によって睡眠への障害の出方が違います。ここでは大まかに「一般的な自閉症」「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」「アスペルガー症候群」に分けて特性がどのように睡眠に影響するのかをご紹介します。
一般的な自閉症の場合
自閉症の人は、音や光に対する感覚が非常に鋭敏だと言われています。そのため、少しの物音や突然の光に反応して覚醒しやすいのです。また、睡眠に関係するホルモンである「メラトニン」や「セロトニン」の量が極端に多すぎたり少なすぎたりしているのではないかと考えられています。
そもそも睡眠とメラトニン・セロトニンがどう関係しているのかというと、まず朝日を浴びると体内でトリプトファンというアミノ酸の一種からセロトニンが作られ、夜になると体内にたっぷり作られたセロトニンからメラトニンが生成される、という順番です。メラトニンは、眠気を誘うとともに睡眠中に体内組織の修復を促進したり、睡眠中に過剰なストレス反応が起こらないようにしたりという作用をしています。
トリプトファンは必須アミノ酸の一種で、体内で合成できませんので、食物から摂取する必要があります。しかし、自閉症の人は食事に対してもこだわりが強く偏食になりやすいため、トリプトファンが含まれる食品をあまり摂取できていない可能性があります。
さらに、自閉症の人では朝日をきちんと浴びているかどうかに関わらず、脳内のセロトニンの量が少なくなっていることが、過去の研究によってわかっています。この原因は遺伝子の異常ではないかと言われています。原料がなければセロトニンは作れませんし、産生・分泌する過程に何らかの異常があればやはりセロトニンの分泌はできないか、極端に少なくなります。
セロトニンが少なければ、セロトニンから作られるメラトニンの量も少なくなりますので、寝つきが悪くなったり睡眠中に少しの物音や光で覚醒しやすくなります。このようにして自閉症の人では二次障害としての睡眠障害が起こっていると考えられているのです。
ADHD(注意欠陥・多動性障害)の場合
ADHDの人の特性は、「切り替えが苦手」ということです。すなわち、起きている状態から眠っている状態への切り替え、あるいは逆に眠りから目覚めへの切り替えが脳の中でスムーズにいかず、したがってなかなか自然と眠りに落ちたり、目を覚ましたりことができないのではないかと考えられています。
さらに、ADHDの人の脳内でも自閉症の人と同様、セロトニンが不足していると考えられています。原因についてはわかっていませんが、セロトニンが少なければやはり良質な睡眠を導く「メラトニン」が不足するため、睡眠が不規則になったり不眠症のような症状が現れたりするのです。
アスペルガー症候群の場合
アスペルガー症候群の場合、こだわりが強いという特性が睡眠障害に間接的に関わっていると考えられます。強いこだわりの結果、眠るどころか休憩も忘れて熱中してしまう「過集中」という状態が起こり、睡眠時間を削ってしまいます。すると、当然睡眠リズムが崩れ、生活リズムにも悪影響を及ぼしてしまうのです。
また、アスペルガー症候群にも自閉症と同じような感覚過敏の症状が見られます。突然の音や光に非常に敏感で、少しの物音や光でも眠れなくなったり、寝ていても途中で目が覚めてしまうのです。さらに、アスペルガー症候群の人は成長過程で生きづらさから抑うつ状態を発症し、その症状の一つとして不眠症を発症することもあります。
子どもの睡眠障害はどうチェックすればいい?
子どもが睡眠障害になっているかどうかをチェックするためには、以下のようなことに注目してみましょう。
- 一度寝ついた後、夜間に何度も目を覚ます。大声で叫んだりパニックになる、歩き回るなど
- 大きくいびきをかく
- 昼間、不機嫌でイライラしていることが多い
- 落ち着きがなく衝動性が強い、よく泣く
- 保育園や幼稚園に行きたがらない
- 頭痛や腹痛など、体調不良が多い
- 一日中眠い、または眠そうにしている
- 朝起きてから幼稚園や学校に行くまでに時間がかかる
- 休日は昼ごろまで寝ている
- 朝起きられず、学校や幼稚園に行かれない
子どもが寝ている夜中はたいてい大人も寝ているため、パニックになる子や歩き回る子は気づきやすいのですが、ただ目を覚まして寝つけないままじっとしているタイプの子はなかなか気づけないこともあります。そうした子どもは昼間にずっと眠そうにしていたり、寝不足から来る不機嫌でイライラしていることがありますので、注意して見てみましょう。
発達障がいの子どもの場合、朝起きられないのも夜になかなか眠らないのも遊んでいるわけではなく、本人も眠りたくても眠れなくて苦しんでいる場合がほとんどです。頭ごなしに叱りつけるのではなく、良質な睡眠がとれているかどうか、子どもの様子を少し注意して見てあげることが大切です。
おわりに:発達障がいの子どもは身体的な特性から睡眠障害になりやすい
発達障がいの子どもは、その特性から睡眠障害になりやすい傾向にあります。感覚過敏、脳機能的なセロトニン分泌不足などがその主な原因と考えられています。
注意しなくてはならないのは、発達障がいの子どもが眠らないのは性格的な問題ではなく、体質的な問題であり、決して子どもが遊びで夜更かしをしたりしているわけではないということです。重要なサインを見逃さないよう、少し注意して見てあげると良いでしょう。
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