就労移行支援にはさまざまな方法がありますが、最新技術を使ったVRトレーニングが開発されたのを知っていますか?
就労移行支援事業所「LITALICOワークス」は、VRソフトウェアを開発する株式会社ビーライズと、就労トレーニング用VRソフトウェア「JobStudio(ジョブスタジオ)」を共同開発しました。VRを取り入れるという新しい就労支援の誕生です。
発達障がいへの就労支援の種類とは?
発達障がいの人は就職や雇用に関して、次のような就労支援・サポートを受けることができます。
- 障がい者トライアル雇用事業
- 障がい者を一定期間(原則3か月)試行雇用する制度。期間内で適正や能力を見極め、求職者と事業主の相互理解を深める、継続雇用への移行のきっかけになることを目的としています。
- ハローワーク
- 就職を希望する障がい者はハローワークに求職登録を行い、専門職員や職業相談員に相談やアドバイスをもらうことができます。内容は、障がいの種類・程度に応じたきめ細かな職業相談、仕事の紹介、職場定着指導など。「若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」も行っています。
- 地域障がい者職業センター
- 障がい者に対して、職業評価、職業指導、職業準備訓練、職場適応援助などの専門的な職業リハビリテーションを行います。事業主に対しては、発達障がい者の雇用管理に関する助言など雇用関係構築に関するサポートを実施。
- 障がい者就業・生活支援センター
- 障がい者の身近な地域で、雇用、保健福祉、教育などの関係機関の連携で、就業や生活における一体的な相談支援を実施。
- 発達障害者雇用トータルサポーター
- 13地域のハローワークに「発達障害者雇用トータルサポーター」を配置。発達障がいの求職者に対してカウンセリングなど就職に向けた支援を行います。事業主に対しては発達障がい者の就労で発生する課題解決へ相談・援助などの支援を実施。
- ジョブコーチ支援
- 障がい者の職場適応をスムーズにすることを目的としたサポート。職場にジョブコーチを派遣し、きめ細かな人的支援を行います。
参考:厚生労働省
VRの就労支援はどうして生まれたの?
前項のような就労支援が行われてきましたが、就労トレーニング用VRソフトウェア「JobStudio(ジョブスタジオ)」の登場によって、就労支援の幅がさらに広がることが期待されます。
厚生労働省の調査によると、2019年における民間企業の障がい者雇用者数は56万608人。前年と比べて4.8%アップするなど、障がいのある方の雇用数は年々上がっています。(厚生労働省「令和元年 障害者雇用状況の集計結果」より)
また、2021年3月までに障がい者雇用の法定雇用率が2.3%へ引き上げられることから、障がい者雇用がさらに促進されることが予想されます。
LITALICOワークスは、年間1,000名以上の方の就職支援を行っている起業。多くの障がい者の方のサポートを通して、就労に対する強い不安感や失敗体験があることで、就労自体の見通しが立ちにくい人がいることがわかりました。
事業所内の訓練や実習先でスモールステップを経験すると、安心して実習に臨める障がい者がいることを考慮し、一人ひとりの発達の特性や苦手に対してVRを活用する就労支援にたどり着きました。
VR技術によって、普段は体験できないような環境をより簡単に、身近に実現。楽しみながら就労環境や訓練を体験することを可能にしました。
働く楽しさを体感!「JobStudio(ジョブスタジオ)」のコンテンツ
JobStudioは、働く上で必要になる基本的な作業を再現した3つのモードで構成されています。
- RPGショップ
- シンプルなピッキング作業を行いながら、子供から大人までゲーム感覚でVRに楽しみながら慣れことができる、チュートリアル的な位置づけのモード。
- パフェ作り
- 複数の作業工程と複数の選択肢から、順序立てて遂行する作業。効率化するためには複数のレシピを把握することや順序立てて仕上げる必要があり、より高い作動記憶を求められるモード。
- 空港仕分け作業
- 制限時間を意識し、優先順位をつけて行う作業。終わり時間から逆算して見通しを立てながら、効率よく作業する必要があり、より多くの認知機能を駆使して作業するモード。
JobStudioで設定できる項目を紹介します。
- 制限時間(1分~10分)
- 作業難易度(複数の指示)
- 人の多さ(視覚刺激)
- 環境音の音量(聴覚刺激)
- 指示のバリエーション(言語(音声・文字)、記号、絵図のマッチング)
- 作業台の高さ(立ち作業、座り作業:身体障がいの方向け)
- 作業プロンプト(正解、不正解時のヒント)
職業訓練と聞くと、少し緊張してしまう人もいると思います。しかし、自分に合った難易度や環境にレベル設定でき、何度でもチャレンジしたくなるコンテンツのため、JobStudioなら楽しく継続的にトレーニングすることができそうですね。
JobStudioはLITALICOワークス広島事業所から導入を開始。その後事業所への導入を検討を目指していくようです。
VR就労支援技術「JobStudio(ジョブスタジオ)」の特徴
「JobStudio(ジョブスタジオ)」には、下記のようなメリットがあります。
受け身の動画視聴タイプではなく、能動的に学べる6DoF式 VR
フル3DのVR空間の中で、歩く、しゃがむ、物を持つ、物を移動させるなどの体の動きをリアルに反映。受け身になりやすい動画視聴タイプのVRと比べて自由度が高く、能動的な学習をサポートします。
実践形式でのリアルなトレーニングが可能
難しかったVRによる実践形式での就労トレーニングを行うことができます。詳細な設定項目で内容を調整可能。自分に合ったレベルや内容で何度でもトレーニングにチャレンジできます。
データに基づき、職業能力を客観的に評価
Job Studioは、職業的な得意不得意を、客観的なデータにもとづいてフィードバックできます。これは日本初のVRによる職業評価機能を実装技術です(特許出願中のビーライズ社の独⾃技術 特願2020)。
おわりに:もっと自発的になれる就労支援を受けたい人にVRトレーニングがぴったりかも!
新しい技術であるVRが、発達障がいの就労支援の分野でも取り入れられるようになりました。リアルで能動的な体験の提供、データを駆使したフィードバックなど、能力向上が期待できるコンテンツですね。今までの就労支援から、さらに自発的にトレーニングを積みたい人は是非体験してみてはいかがでしょう。
会社情報
株式会社ビーライズ(BeRISE Inc.)
事業内容:VR・ARコンテンツ制作事業、イベント用インタラクティブコンテンツ制作事業
3DCGビジュアル制作事業、3DCGアニメーション制作事業、Webサイト制作事業、
アプリケーション開発事業
概要:リアルな3DCGとアプリケーション・web開発、アイデアを組み合わせた最先端ソリューション開発を強みとした会社。株式会社 LITALICOとの共同開発にあたって、これまでに培ってきたVRソフトウェア制作のノウハウを提供し、実際の職業トレーニングの現場で活用できるVRソフトウェアの開発を行った。
HP:https://www.berise.co.jp/company/
(画像:PRTIMES)
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