発達障がいの人が就職し、長く働き続けるためには、周囲の理解と配慮、本人による対策が欠かせません。
今回は、発達障がいの人が長く仕事を続けるために知っておくべき対策と、周囲に求めるべき合理的配慮の具体例をご紹介します。
発達障がいの人が仕事を続けるには、周囲の合理的な配慮が必要なことも
学生時代に比べ、仕事の場で求められるコミュニケーションや課題達成のためのプロセスは複雑です。このため発達障がいの人は、持って生まれた脳機能のアンバランスさと特性から、仕事上のトラブルを抱えることが少なくありません。
これは、同僚が毎日こなしている一般業務であっても、発達障がいの人にはその一部、または全部が難しく感じられることもあるからです。
本人が仕事に対して感じている困難・苦痛と、周囲から見た印象。ここに大きなギャップが生じたとき、仕事と職場の人間関係の両方がうまくいかなくなってしまいます。
しかし発達障がいの人も、本人の得手・不得手を踏まえた「合理的な配慮」を受けることができれば、仕事を円滑に進め、能力を活かし働き続けることが可能になることもあります。
具体的には、職場における以下のような措置が「合理的な配慮」に該当します。
- 他の人が1人でこなす一般業務であっても、発達障がいの人の特性や得手・不得手によって細分化し、役割分担する
- 本人の能力に合う仕事を単独部署で十分に確保できないと判断した場合は、部署の垣根を超え、発達障がいの人に合わせた業務を組んでみる
- 不満や困難について誰にも相談できず、悩みを抱え込んでしまう発達障がいの人には、直属の上司が相談役としてこまめに声をかけるようにする
- 気分の落ち込み、精神疾患などの二次障がいのある発達障がいの人には週に1回、月に1回など頻度を決めて定期的に面談の機会を作る
- 激しく緊張し、うまく人と話せない発達障がいの人のために代弁者、周囲との窓口となる「キーパーソン」を設定し、その人を介して業務上の指示や相談を行う
周囲に自身の特性について説明し、ある程度理解をしてもらったうえで、これらの合理的な配慮を受けられるよう働きかけてみてください。
発達障がいを持つ人自身ができる対策は?
発達障がいの人が長く仕事を続けるには、周囲に理解や配慮を求めるだけでなく、自らも仕事を円滑に進めるための対策を十分に取る必要があります。
以下からは「自閉症スペクトラム障がい」「注意欠如多動性障がい」「学習障がい」の3種類に分けて、仕事の苦労を減らすために発達障がいを持つ本人ができる対策をご紹介します。
あなたの特性に合わせ、仕事を円滑に進めるための対策に役立ててください。
- 自閉症スペクトラム障がいの人におすすめの対策
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- 同僚や取引先と会話するときには、丁寧な言葉遣いとにこやかな表情を心がける
- 相手の表情を観察し、話しをよく聞くようにして、適度に相槌を打てるよう練習する
- 相手の感情や意図、曖昧な表現や暗黙の了解など理解できないことは、上司や同僚に聞く
- 仕事の優先順位付けが苦手なら、周囲の上司や同僚に相談して指示してもらう
- 他の物音や視界に入るものが気になって仕事に集中できないなら、イヤホンを使ったり、席替えするなどして作業環境を整える
- 注意欠如多動性障がいの人におすすめの対策
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- 注意散漫からくるミスが多いなら、成果物を提出する前にダブルチェックしてもらう
- 忘れもの、落しものが多いなら、持ちものを減らして所定の場所に置くと決めておく
- 仕事に集中できるよう、パーテーションで仕切ったり、作業時間を区切るようにする
- 過集中や注意散漫を防ぐため、アラームをセットして気持ちを切り替えられるようにする
- 衝動的な発言で損をしないように、言葉を口に出すまえに考えるクセをつける
- 学習障がいの人におすすめの対策
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- 文章を読むのが苦手なら、指やペンでなぞる、文字の大きさを変えるなど工夫する
- 文字を書くのが苦手なら、極力パソコンを使い、手書きなら下書きしてから清書する
- 計算が苦手なら、スマートフォンの音声入力やアプリの計算機を使うと良い
おわりに:長く仕事を続けたいなら、発達障がいの本人は対策を、周囲には合理的な配慮を具体的に求めてみよう
発達障がいの人は、特性ゆえに物事への得手不得手がはっきりしているため、仕事を進めるうえで困難を抱えることも多いです。そんな発達障がいの人が、同じ職場で長く働き活躍し続けるには、本人の努力と周囲からの配慮が必要になります。まずは自身の特性に合わせ、仕事上の苦労を減らすための対策を取りましょう。そのうえで、ひとりでは対処しきれない部分に、周囲からの特性への理解と合理的な配慮を求めてくださいね。
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