社会で生きていくために必要なコミュニケーション能力や生活スキルを習得する訓練を「SST(ソーシャルスキル・トレーニング)」と言います。SSTにはさまざまな種類があり、ゲームでSSTを行うこともあります。この記事では、子どもに対するゲームを通したSST実践に期待される効果について紹介していきます。
発達障がいでみられる小学生と中学生の困難
発達障がいの人が直面するトラブルや悩みには個人差がありますが、年齢とともにその内容は変わってくることが多くあります。
小学生期の発達障がいの悩み
小学生になると、幼稚園や保育園から環境が変わり、勉強が増えていくこともあり、子どもにとって今までとは異なる生活スキルや人間関係が必要になってくる時期ですよね。
たとえば、次のような悩みが発生することがあります。
- 友達に言いたいことが言えない
- 嫌だと思ってもその気持ちを伝えられない
- 怒りをコントロールできずに叩いたりしてしまう
- 友達の気持ちが理解できない など
周囲の大人は発達障がいへの理解を深めたり、療育など必要なサポートをしようと働きかけることもできますが、友達関係ではなかなかそうはいきませんよね。そのため友達との人間関係や交流で悩みを抱えることが増えていくと考えられます。
中学生期の発達障がいの悩み
中学生以降は部活や塾などへの参加に伴い、人間関係はより幅広くより複雑になっていきます。特に近年は、学校から帰った後もスマートフォンやパソコンを使って友達とコミュニケーションを行う子どもが増えています。
メッセージは言語のコミュニケーションですので、発達障がいの子どものなかには、どんな言葉の表現なら気持ちがうまく伝わるか悩む場合もあるでしょう。
学校生活でもテストや受験に向けてノートをとる重要性が増したり、自分の意見をはっきりと表現するなど、クリアしたい課題のレベルが高くなってくるのも中学生の時期です。
SSTではどんなことをするの?
SSTの実践内容はさまざまですが、本人の特性や発達の段階に合わせてSST指導・実施計画を立て、次のプログラムを取り入れて行うことが一般的です。
- ゲーム
- ワークシート、絵カード、ソーシャルストーリー
- ディスカッション、ディベート
- ロールプレイ
- 共同行動
小学生のSSTには、低学年では集団活動や共同の遊びを通して、助け合いや役割分担を学んでいくことが多いです。学年が上がるにつれて、発達の段階や特性に応じてワークシートやディベートを取り入れることが増えるでしょう。
中学生では、共同作業に加えて、自分の意見と他人の意見を交わすディベート、演技を通した立ち居振る舞いの習得であるロールプレイ、文章読解などのスキルを上げるワークシートを使うSSTが増えます。
SSTのゲームでは、楽しみながら社会性などのソーシャルスキル習得を目指すことができるのが特徴です。
小学生・中学生のSSTにゲーム形式がいいのはどうして?
ゲームと言われると、遊びの面が強いかと思われるかもしれません。しかしゲーム形式のSSTには、ソーシャルスキル習得の機会がたくさん含まれています。
ゲーム形式のSSTを通して、次のようなスキル習得を目指します。
- ルールを守る
- 順番を決めて守る
- 作戦を考えて立てる
- 仲間と協力し、相談する
- 結果の勝ち負けを受け止める
SSTは、小さな成功や気づきを積み重ねていくスモールステップの進め方が重要です。
このスモールステップを積んでいくためには、SSTを継続して行うことも欠かせません。
ゲーム形式のSSTのメリットとして、
- 子どもが興味を持ちやすい
- 楽しみながらソーシャルスキルを習得できる
- 楽しむことで飽きずに取り組める
があります。スモールステップを積むためにも、ゲーム形式のSSTで子どもに長期的にトレーニングに取り組んでもらうようにするのは大切といえるでしょう。
以上のようなメリットのあるゲーム形式のSSTですが、本人の特性やソーシャルスキルの偏り、どのスキルを伸ばしたいかによっては、必ずしもゲーム形式が合うというわけではありません。本人の特性を理解して、SSTの個人ごとの計画を立て、適切に進めていくことが重要です。
ゲーム形式のSSTにはどんなものがある?実践のポイントは?
SSTで取り入れられるゲームの例を紹介します。
- かくれんぼ
- フルーツバスケット
- カルタ
- 絵合わせゲーム
- すごろく
- SST用ボードゲーム教材
昔ながらのかくれんぼやフルーツバスケットもSSTとして実践されています。いずれのゲームをSSTとして取り入れるときも、子どもにルールを明確に教えること、目標をはっきりと意識してもらうことが、ソーシャルスキル習得に欠かせません。
上記のほかにも、SSTを楽しく実践できるようなゲーム教材が市販または無料ダウンロードで公開されています。
おわりに:子どもの特性に合わせてゲーム形式のSSTを取り入れるのがおすすめ
SSTはコミュニケーション能力や生活スキルの習得ができるトレーニング。子どもは日々成長し、年齢や発達の段階に合わせてSSTも変えていきましょう。楽しく継続的に実践するために、ゲーム形式のSSTを計画に組み込むのがおすすめですね。
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