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発達障がいの子どもの偏食、どうやったら改善できる?

子育て・教育のヒント

発達障がいの子どもは極端な偏食になるケースが多いと言われています。これは発達障がいの人によく見られる特性が原因になっているのですが、その特性とはいったいどんなものなのでしょうか?
また、発達障がいの子どもの偏食にはどうやって対応し、改善を目指していったらいいのでしょうか?今回は、こうした発達障がいの子どもの偏食の原因と、その改善方法についてご紹介します。

発達障がいの子どもに偏食が多いのはなぜ?

発達障がいの子どもの偏食は、大きく分けて「感覚の偏り(感覚過敏・感覚鈍麻)」「強いこだわり」の2つの特性から起こっていると考えられます。この2つは発達障がいを持つ人はたいてい持っている特性ですから、発達障がいを持っている子どもに偏食が多くなってしまう、と考えられています。

いずれの特性も、発達障がいの他の症状と同じく脳機能による生まれつきのもので、本人の努力不足や甘え、わがままなどではありません。しかし、脳機能障害はなかなか外からは見えにくいものですので、周囲からの理解が得られにくく、親のしつけの問題にされてしまったり子育てに対する自信を失くしてしまったりして、本人はもちろん、その家族も精神的に追い詰められてしまうことが多々あります。

しかし、発達障がいの子どもの偏食はわがままで食べられない、というタイプの偏食とは違い、非常に極端な偏食となる場合が多いです。わがままで苦手なものが食べられない子どもの場合、ピーマンやにんじんなど特定のものだけが食べられないというパターンが多いのですが、発達障がいの子どもの偏食は逆に、特定のものしか食べられない、野菜は一切食べられない、など非常に極端になりがちです。例えば、以下のような偏食になりやすいです。

  • 白いご飯や白い飲み物しか食べられないなど、色にこだわる
  • 野菜が一切食べられない、肉が一切食べられないなど、ジャンルごと食べられない
  • 苦手なものを口にすると、吐き気がするほど気持ち悪くなる

こうした極端な偏食の原因となる「感覚の偏り」「強いこだわり」の2つについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。

偏食の原因その1「感覚の偏り」とは?

私たちの感覚には、通常、五感と呼ばれる「視覚・味覚・嗅覚・触覚・聴覚」があります。定型発達の子どもでは一般的にどの感覚も平均的な範囲に感じられるのですが、発達障がいの人ではこれらの感覚のうち、ある感覚は非常に鋭敏なのに、ある感覚は非常に鈍感である、といった偏りが生まれてしまうことが多いのです。

感覚が平均よりも鋭くなることを「感覚過敏」、平均よりも鈍くなることを「感覚鈍麻」と言います。例えば、特定の味に過剰に刺激を感じてしまうことを「味覚過敏」、特定の匂いを過剰に感じてしまうことを「嗅覚過敏」と言います。味や匂いを過剰に感じた結果、その味や匂いを苦手だと思ってしまうとその食べ物に拒否反応を示してしまい、食べたくても食べられないという状態になってしまい、偏食につながっていくのです。

また、五感のうち「触覚」が極端に鋭敏または鈍麻な状態だと、偏食以外にも「触覚防衛反応」という反応が起こる場合があります。誰かに触れたり触れられたりする、またはものに触れることを極端に嫌がるため、散髪や耳掃除、爪切り、歯磨きなどを激しく拒否したり、帽子やマスクなどの身支度を嫌ってなかなか出かけられなかったり、のりや粘土を使うとその度に手を洗うため作業が進まなかったり、といったことが起こります。

偏食の他にもこれらの症状が出ている場合、触覚に関して感覚の偏りがある子どもかもしれません。保護者はもちろん困ってしまいますが、子ども自身も自分の感覚に振り回されて苦しんでいるのです。こうした感覚の偏りは、発達障がいの中でも特に「自閉症スペクトラム(ASD)」の人で多く見られる特性だと言われています。

偏食の原因その2「強いこだわり」とは?

発達障がいの特性として「強いこだわり」があることも偏食の原因として挙げられます。同じ食感や同じ味にこだわるあまり同じ食品ばかり食べ続けたり、メーカーや味つけが少しでも変わると食べられなかったりする、といった偏食が現れることがあります

また、ある食品や食材を初めて食べた時に味覚や食感に違和感を感じたり、不味い、不快といった嫌悪感を抱いてしまうと、後々までその嫌悪感を引きずってしまい、その後一切その食品や食材を口にできなくなることもあります。

こうした嫌悪感を、見た目や色で判断している子もいます。赤いものはとても辛くて刺激が強かったから赤いものは全部苦手、白いものは安心、と判断して白いご飯や牛乳ばかり食べる子や、つるつるした見た目・食感のものはゴムを食べているような気になって口に入れると吐き気がしてしまうから食べない、などです。

このようなこだわりから偏食が進み、エスカレートすると特定の食べ物しか食べない、食べられないという状況になってしまうのです。

子どもの偏食には、どう対応してあげればいいの?

それでは、こうした偏食にはどのように対応すれば良いのでしょうか。もちろん、従来のようにわがままとみなし、「なんでも食べなさい」「好き嫌いすると大きくなれない」などと叱りつけてしまうと、子どもにとってはますます食事の時間が苦痛なものになってしまうため良くありません。中には、食事の時間はパパやママが怖い顔をするから嫌、と感じてしまう子もいます。

しかし、発達障がいの子どもの偏食は単なるわがままではなく、吐き気がするほど気持ち悪いものを食べろと言われている状態なのです。例えば、ゴムや砂などを食べろと言われたら、誰だって気持ち悪いし嫌ですよね。発達障がいの子どもにとって、苦手なものを食べさせられるというのは、定型発達の人がゴムや砂を食べさせられるのと同じくらい苦痛なことなのです。

また、食べず嫌いが激しい子どもは、食感が非常に敏感な子かもしれません。ねっとりとした食感や、パサパサとした食感は外からではわかりにくいこともあります。こうした食感が苦手な子は、初めて食べるものに対して非常に強く警戒を示します。このような偏食を改善していくためには、まず以下の3つのアプローチから始めてみると良いでしょう。

  1. 食べることは楽しい、という雰囲気を作る
  2. 信頼関係のある大人や友人との人間関係の中で、食べることに挑戦していく
  3. 触覚に偏りがある子には「触覚防衛反応」を改善するよう働きかける

偏食の多い子どもには、ついついしつけのためにと思って怒ってしまったり、厳しく注意してしまったりすることが多く、食事の時間になると怒られると身構えてしまう子も少なくありません。もちろん、初めは発達障がいによるものなのかただのわがままなのかはわかりませんからこれは仕方のないことです。

そこで、偏食が発達障がいによるものだとわかったら、まずは食事の時に子どもも保護者も楽しく食べられるような雰囲気づくりをするのが良いでしょう。食事の時間は楽しい時間だとリラックスして食べられるようになり、楽しく食事ができるようになれば、偏食を解消する第一歩になります。

食事を楽しむことに関連して、信頼関係がある大人や友人と一緒に同じものを食べる、という経験を通して食べられるものを増やしていく、というのも一つの方法です。信頼できるあの子が食べているのだからあの食べ物は大丈夫、と発達障がいの子ども本人が納得し、安心できることが重要なようです。

この「信頼関係を築く」ということそのものが発達障がいの子どもにとっては非常に難しいことで、特に触覚の偏りによって偏食な子はスキンシップも苦手なことが多いため、保護者との愛着関係もなかなか結べないことがあります。そこで、スキンシップが苦手な子はまずは次にご紹介する「触覚防衛反応の改善」からスタートしてみると良いでしょう。

触覚防衛反応を改善するにはどうすればいい?

触覚防衛反応がある子どもは、口の中の感覚が過敏になっていて偏食になってしまう可能性があります。偏食というとどうしても味の好き嫌いなのだろうと思い込んでしまいがちですが、発達障がいの子どもの場合、味以前に口の中に入ってきた時にまず感じる舌触り、歯ざわりなどの感触が過敏で苦手意識を持ってしまうことも多いのです。

例えば、ねっとりした食感が苦手な子はコロッケの中身が食べられず、チクチクとした食感が口の中に刺さるような恐怖を覚えてしまう子はコロッケの衣を剥がさないと食べられません。また、刺身のぐにゃっとした食感は嫌いでも、魚の味は嫌いではなく、火をしっかり通せば難なく食べられる、という場合もあります。もちろん、どんな食感を苦手とするかは千差万別です。

このように食感によって偏食があり、前章でご紹介したような「肌に何かが触れる」という感覚に対して極端に嫌悪感を覚える場合、偏食や嫌がりは「触覚防衛反応」だと考えられます。そこで、意識的に触覚を使う遊びをすることで、触られても大丈夫な場所や感覚を広げていくようにすることが大切です。具体的には、以下のようなやり方がおすすめです。

スポンジやタワシで子どもの肌に直接タッチする
痛くない程度の軽いタッチで、腕やすねなどの嫌がらないところから始める
「今どこ触ってる?」とあてっこ遊びをする
普段はあまり意識しないような見えないところにタッチして、どこか当てさせる

タワシはマッサージによって血行を良くする効果も期待できるほど、皮膚に良い刺激を与えてくれる道具です。もちろん子どもが嫌がるほど痛く押し当てたりするのは厳禁ですが、子どもが触られている部位にしっかりと意識を向け、「触られているけど怖いことはない」と認識するためには良い道具でしょう。

しかし、道具を嫌がる場合は無理強いせず、素手で優しく触るところからスタートするのが良いでしょう。腕やすねなど、普段見えているところからスタートすると嫌がられにくいです。様子を見ながら、最終的には首筋や口元などの子どもが苦手な部分にもタッチしていき、触られても怖くないとしっかり認識させてあげることが大切です。

あてっこ遊びは、見えない部分をタッチして「どーこだ?」と子どもに当てさせることで、脳内で触られている部位に関して全身の神経のマップを作るようなイメージです。ひじ→二の腕→肩→背中など、見える位置から次第に見えない位置へと移動していき、徐々に見えない部分に対しても意識の幅を広げていきます。この場合も、子どもが嫌がる時は無理強いせず、時間をかけてゆっくり慣れていってもらいましょう。

見えない場所を意識させることが重要なのは、触覚に偏りがある子どもの中には自分の目で見える部分にしか体のイメージを作れていない子どもがいるからです。タワシでタッチしたり、あてっこ遊びをしたりすることで、見えない部分の体のイメージを脳に伝え、見えない部分の自分の体にも意識を向けさせてあげれば、次第に「触られても大丈夫」な部位が増えていくと考えられます。

定型発達の人でも、真っ暗な状態で、突然よくわからない方向から衝撃や触覚が来たら怖いですよね。発達障がいの子どもが自分の体をイメージできないという状態は、それと同じような感覚です。「触られても大丈夫な部位を増やす」とは、真っ暗な状態から意識的に電気をつけてあげることと同じです。「きちんと注意していれば怖くない」という体験を積み重ね、感覚の偏りを軽減してあげましょう。

また、触覚の偏りが改善されると、「聴覚過敏」「嗅覚過敏」など、他の感覚の偏りの改善にもつながることがわかってきています。複数の感覚の偏りを持っている発達障がいの子どもには、まず触覚の偏りを改善する遊びからスタートしてあげてみてはいかがでしょうか。

おわりに:発達障がいの偏食は「感覚の偏り」「強いこだわり」が原因

発達障がいの子どもの偏食は「感覚の偏り」「強いこだわり」から起こっていると考えられます。わがままではなく苦痛なため、無理強いすると余計に偏食がエスカレートしてしまうこともあります。

こうした偏食を改善するには「楽しく食べる雰囲気を作る」「信頼できる人と食べる」「触覚の偏りを改善する」などのアプローチから始めると良いでしょう。特に「触覚防衛反応」を改善すると、他の感覚の偏りも改善できることがあります。

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