自閉症には、症状や特性の現れ方が少し異なる高機能自閉症と呼ばれるものがあります。
今回は高機能自閉症がどのような障がいなのかを、現れる症状の特徴や自閉症との違い、子どもが高機能自閉症とわかったときの適切な対応とあわせて解説します。
高機能自閉症ってどんな状態のこと?
一般的に「自閉症」とは、生まれつきの中枢神経の障がいにより知的発達の遅れがあり、こだわりが強く、コミュニケーションに問題が出る状態を言います。
一方で「高機能自閉症」とは、明らかな知的発達の遅れは見られないものの、コミュニケーションなどの部分で自閉症症状が見られるケースを指す言葉です。
このように、知的発達に明らかな遅れが見られるかどうかによって、自閉症と高機能自閉症は区別されています。
とくに高機能自閉症の人は、その場の空気や相手との関係性にあわせて適切な言葉や話題を選んだり、文字を使ってコミュニケーションをとることが苦手という特徴があります。
高機能自閉症の症状の特徴って?
高機能自閉症の特性による症状は、以下4つの要素によるコミュニケーションや日常生活を送るうえでの困難として現れます。
社会性の欠如による、コミュニケーションの障害
高機能自閉症の人は知的発達の遅れはないため、言葉や文字を使うことはできます。
ただし、覚えた言葉や話したいことを時と場合にあわせて調整することや、相手の言葉の真意を表情などから正確に受けとることが非常に苦手です。
このため、相手の心情や真意、状況に配慮したコミュニケーションが難しく、相手が嫌がる言動をしてしまって、トラブルの原因を作ってしまうことがあります。
想像力の欠如と、これによる物事へのこだわり
高機能自閉症の人は他者の感情や状況だけでなく、物や遊びなどに対しても想像して組み立てたり、新たに構成・構築することが非常に苦手です。
想像力が必要となるような変化やアレンジを嫌い、特定の方法・状況に強くこだわるため、物事の同一性をなんとか維持しようと行動する傾向があります。
感覚過敏、または感覚異常
高機能自閉症の人のなかには視覚、聴覚、味覚、嗅覚、皮膚感覚の五感に、一般の人にはない敏感さ、または鈍感さが見られることが少なくありません。
視覚や聴覚が敏感なら外部からの文字や音に過剰に反応して疲れたり、味覚異常の場合は極度の偏食、皮膚感覚の異常では服装を適切に調整できないなどの症状が出ます。
このような感覚の違いから、日常生活において他の人が感じないような不快・不便さを感じてしまうのです。
運動のぎこちなさ、困難
高機能自閉症の人は自分の体の動きをうまくイメージできない、また、緊張やストレスを感じたときに体を動かしたい衝動のコントロールがうまくできないことがあります。
このため、他の人から見て歩き方や走り方がぎこちない、スポーツがうまくできない、字をうまくかけない、衝動的な多動といった症状も現れてきます。
子どもが高機能自閉症とわかったときには・・・
高機能自閉症とわかった子どもをサポートしていくために、周囲の大人ができることは「本人の特性を受け入れ、得意をのばし苦手を補えるよう付き合う」ことです。
人間には得手不得手があって当たり前ですし、それは子どもも大人も変わりません。自閉症や高機能自閉症の人は、この「得手不得手」が他の人よりも極端に、特性として現れているだけと考えることもできます。
自閉症を治すべき病気ではなく、子どもが生まれながらに持つ個性や才能と捉えて、以下のポイントに留意しながら子どもの成長をサポートしてあげてください。
- 状況の変化に対応できるよう、今後の予定や起こることはできるだけ予告する
- 外出の予定を立てるときは、できるだけ具体的でわかりやすい方法で可視化する
- 子ども本人が苦手なことを補えるよう、周囲の大人が一緒に考える姿勢を見せる
- 物事を指示、教えるときは具体的に見える方法で説明し、ゴールを決めて進める など
おわりに:高機能自閉症は、明らかな知的発達の遅れが見られない自閉症
自閉症のなかでも高機能自閉症は、明らかな知的発達の遅れが見られないものの、コミュニケーションやその他の部分で自閉症症状が見られるケースを言います。言葉や文字を使ったコミュニケーションは可能ですが、相手や状況によって言動を調整したり、物事や状況、相手の心情などを想像するのが苦手です。もし身近な子どもが高機能自閉症とわかったら、本人の苦手を得意なことで補えるよう、一緒に考えてあげてくださいね。
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