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発達障がいの子どもが苦手なスポーツを克服する方法はある?

子育て・教育のヒント

発達障がいとは、生まれつきの脳機能の障害により、主に想像力やコミュニケーションの面で困りごとが生じやすい特性のことを指します。そのため、精神面での障害や症状がピックアップされやすいですが、多くの人は運動面でも問題が生じます。

ですから、発達障がいの人はスポーツ(体育)が苦手と感じることも多いのです。では、苦手なスポーツをどうやって克服すればよいのでしょうか。

発達障がいだとスポーツが苦手なことが多いって本当?

発達障がいの人に苦手な科目を聞くと、他の科目を大きく引き離して「体育」という回答が圧倒的に多いとされます。この理由としては、発達障がいの特性上、以下のようなことが挙げられます。

  • 周りのものに気が散ってしまい、課題に集中できない
  • 何に注目して行えば良いのかわかりにくい
  • 周りの子どもができることを達成できず、自信をなくしやすい
  • 指示やルールを理解するのが苦手
  • 他人や物との距離感をつかむのが苦手

こうした特性上の問題のほか、発達障がいの人では「発達性協調運動障害」という状態を持っていることが多いです。体育のときにはさまざまな身体の部位を脳がうまく操り、同時に動かしたり連続で動かしたりという動き(協調運動)が必要となりますが、その機能がうまく働かない状態を「発達性協調運動障害」と言います。

発達性協調運動障害が起こる原因についてははっきりとわかっていませんが、他の発達障がいの特性と同じように、脳の機能が定型発達の人とは異なり、神経伝達物質に何らかの異常が生じているためではないかと考えられています。身体そのものに問題があるわけではなく、協調運動が苦手なため、身体機能ではなく脳機能の問題だとされています。

発達性協調運動障害を持つ人は、自分の手先や身体全体をスムーズに動かしにくいだけでなく、そもそも自分の身体の各部分がどこにあってどのような状態なのかといったことを瞬時に把握しにくいということもわかっています。

例えば、ストレッチという簡単な動作でも発達性協調運動障害の人には難しいこともありますが、ストレッチでは「自分の頭・手足・腰」などの位置が正確に把握できていることが前提です。多くの人はその把握を無意識に行えますが、発達性協調運動障害の人は意識しないと把握するのが難しいのです。

協調運動には種類があるの?

協調運動は大きく「粗大運動」「微細運動」の2種類に分けられます。いわゆる運動神経と呼ばれる全身を使った運動は「粗大運動」、手先の器用さに関わる運動は「微細運動」と言います。粗大運動や微細運動の具体的な例としては、以下のようなものが挙げられます。

粗大運動
大きなダンボールを壁にぶつけないよう運ぶ
野球やソフトボールでボールを投げる
微細運動
箸を使う、文字を書く、靴紐を結ぶ、ボタンをはめる

ダンボールを運ぶ、という動きは定型発達の人からすれば無意識に行えますが、「バランスよくダンボールを抱え」「足を適切に運び」「自分の姿勢を整えて」運ぶ、という3つの動きが組み合わさっている複雑な協調運動なのです。ボールを投げる動きも「左足を出しながら」「徐々に腰をひねり」「右手が背中から巻き込むように」「肘をたたみながら動かす」といったように、関節と筋肉が協調しなくては成功しません。

一方で、持久走やマラソンといった比較的単純な繰り返し運動ではあまり粗大運動を使う必要がないことから、これらの競技だけは得意という発達障がいの人も多いです。

また、微細運動ではいわゆる手先の器用さが求められます。そのため、極端に不器用で細かな作業に異常に時間がかかってしまう、強いストレスを感じる、といった人は発達性協調運動障害と診断される可能性が高いです。とはいえ、発達性協調運動障害のほとんどはADHDや自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群を含む)などの傾向が合わせて見られますので、診断書にはそちらの名称で記載され、発達性協調運動障害のみで記載されることは少ないでしょう。

苦手な運動を練習させる方法はある?

前述のように、協調運動には大きく分けて2種類の運動があります。粗大運動と微細運動、それぞれの対策を見ていきましょう。

粗大運動の練習方法は?

粗大運動では身体の各部位を協調させて動かす必要があります。そのため、「感覚統合」という療育が良いでしょう。遊びや運動を通して脳に刺激を与え、さまざまな身体の感覚を養っていきます。運動神経が鈍くても、身体を動かすことは好き、気持ち良いと感じる発達障がいの人は多いですから、無理に療育プログラムにこだわらなくても構いません。

各部位のさまざまな感覚を意識しながら身体を動かす運動であればたいていは効果が高いと考えられますので、例えばヨガなどを行うのも良いでしょう。

微細運動の練習方法は?

微細運動では、指先や手の細かな動きが必要です。そのため、それぞれの動きを細かく分解して取り出し、集中的に訓練すると成果が得やすいようです。とくに、文字を書くのが苦手な子どもは定型発達の子どものようにただ漫然と写し書きをさせるのではなく、手の動かし方や文字の形の捉え方から具体的に動きを練習していきます。

しかし、こうした微細運動を集中して行うためには、そもそも微細運動をしている間、しっかり姿勢を安定させておくためのバランス感覚や筋力トレーニングも必要です。姿勢や歩行など、運動の基盤となるトレーニングも同時に行いましょう。また、これらの訓練はどうしても発達障がいの本人にとってはイライラしてしまうことが多いため、焦らせず気長に、適宜休憩やご褒美などを挟みながら行うのがおすすめです。

発達障がいの子どものためのスポーツ教室があるの?

ここまでご紹介してきたように、発達障がいの子どもは運動(体育)が苦手で、定型発達の子どもと同じように教えていても伸びる可能性は期待できません。そこで、発達障がいの子どものためのスポーツ教室があります。こうしたスポーツ教室では、発達障がいの子どもに多い特性に合わせ、以下のような工夫をして指導を行っています。

始まりの時間までに集まっていなくてもいい
  • 一般的なスポーツ教室のように笛で「ピピーッ!」と呼ばれたりせず、ゆるい
  • 時間までに行かないと参加できない、怒られる、ということにもならない
  • 自分はここにいてもいいんだ、と思え、安心感につながる
何時になったら何をする、というスケジュールがあらかじめ用意されている
  • 発達障がいの子どもは先の見通しが苦手なため、流れを見やすくしている
  • 掲示することで、自分の好きな活動がいつできるのか確認できる
動き方が視覚的にわかりやすく示されている
  • 発達性協調運動障害の子どもは瞬時に複数の動きを行うのが苦手
  • どのような動きをすればいいのか、見てすぐわかりやすくなっている
終了時はタイマーでお知らせしてくれる
  • 一つのプログラムから次のプログラムへ切り替えるときは、タイマーを使う
  • 切り替えが苦手、終われないという子どもも多いので、時間の流れや感覚を視覚化している
疲れたり嫌になったりしたときは、途中で終わってもよい
  • 発達障がいの子どもは、定型発達の子どもよりも集中力や体力を激しく消耗しやすい
  • 子どもの意志や訴えを否定することなく受け入れることが大切
  • 子どもが教室に通いやすくなり、次回からも参加しやすくなる
毎回同じことをする
  • 発達障がいの子どもは、想定外のことが起こると不安やパニックになりやすい
  • 定型発達の人から見るとつまらなく見えても、毎回同じ流れで同じことをするという安心感が大切

発達障がいの子ども向けのスポーツ教室では、開始時間に合わせて全員が揃わないと怒られる、途中で抜けてはいけない、といった厳しい縛りがありません。突然体調が悪くなることもあれば、体力の配分に慣れておらず、途中で体力を使い果たしてしまう可能性もあります。そういった不測の事態があってもゆるく参加しやすいと、子ども自身も受け入れられたという安心感につながり、通いやすくなります。

野球やサッカーといった特定のスポーツの場合、ルールがあったり、集団で行ったりするため、発達障がいの子どもが最初に始める運動系の習い事としてはあまりおすすめできません。何か特定のスポーツを行うよりも、体操教室やリズム教室など、「一人でもできて」「厳しいルールがない」「比較的単純な動き」の運動からスタートすると良いでしょう。

ただし、中には発達障がいの子どもを専門に指導してくれるスポーツ教室も増えてきていますので、子ども自身に特定のスポーツをやりたいという希望があるようなら、そういった場所をチェックしてみるのも良いでしょう。もちろん、必ず見学や体験授業に行き、上記のようなポイントや子どもが楽しく行えるかどうかをしっかり見極めることが重要です。

楽しくできて達成感も味わえれば、運動に対する自信もつき、自己肯定感にもつながります。ぜひ、子どもに合ったスポーツ教室を探してみてください。

おわりに:発達障がいの子どもに合った練習やスポーツ教室で、苦手な運動を克服しよう

発達障がいの子どもは、身体そのものに問題があるわけではなく、脳機能の異常によってうまく脳から身体に司令が働かない状態だと考えられます。そのため、発達障がいの子どもに合わせた練習や指導方法によって、苦手な運動も十分克服できる可能性があります。

最初は特定のスポーツより単純なリズム運動などがおすすめですが、子ども自身に希望があれば、発達障がい専門のスポーツ教室を探してみるのも良いでしょう。

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