アスペルガー症候群の子どもは、その症状の特徴から、人間関係や日常生活の中で何かと壁にぶつかりやすいです。幼稚園や保育園の頃には目立たなくても、大人数の集団生活が基本となってくる小学校に上がると、壁にぶつかることもさらに多くなります。
アスペルガー症候群の子どもは、その子自身の資質を伸ばし、社会生活に必要なことを身につけられるよう適切な「療育」を行うことが大切です。
今回の情報を参考にしてみてくださいね。
アスペルガー症候群の子どもの特徴って?
アスペルガー症候群の子どもは、一般的に想像される「子ども」とは違う行動を取ることがあり、主に以下のような行動が見られます。以下に当てはまることが多かったり、その程度が激しかったりする場合はアスペルガー症候群かもしれません。
- 一人遊びが好き
- 他の子と遊びたがらない、テレビや本のキャラクターのものまねばかりするなど
- 思ったことをそのまま口にする
- 相手や状況によって言ってはいけないことなどの判断ができない、難しいなど
- 相手の反応や感情がわからない
- 相手の気持ちを表情や声のトーンから読み取れない、読み取りづらい、など
- 一方的に喋り続けてしまう
- 交互に話す「会話」をすることができず、好きなことを一人で喋り続けてしまうなど
- 言葉の裏や曖昧な表現がわからない
- 皮肉を言われてもわからない、「最近どう?」などの質問で何を聞かれているのかわからないなど
- 慣れた環境に固執する
- 自宅のトイレでないと入れないなど
- 難しい言葉を覚えていてもうまく使えない
- 「やめて」を「それは言語道断だから断固拒否します」など、ズレた使い方をしてしまう
- 物事への興味がカタログ的になりやすい
- 電車や図鑑、地図など、数をたくさん覚えるようなタイプのものに興味をもちやすい、興味を持ったものは大人が驚くほどの記憶力を発揮するなど
療育が必要なのはなぜ?どんなことをすればいいの?
小学校は、集団生活の中で子どもたちが社会の道徳やルールを学んでいくための場所です。つまり小学校は社会的な道徳やルールとは相反しやすいアスペルガー症候群の子どもたちにとっては馴染みにくい場所になりやすいとも言えます。
指導する立場である親や教師がアスペルガー症候群に関する正しい知識を持っておらず、十分な理解がないと、アスペルガー症候群の子どもにとって学校は大変な苦痛を感じる場所になってしまいます。
学校で度重なる苦痛を感じた子どもは、抑うつ状態や行為障害(反抗的な行動)などの二次的障害や、思春期の反社会的行動を引き起こす可能性もあります。
これらの障害や行動によって本人が苦しむのはもちろんのこと、家族や周囲の人をも苦しめ、さらには将来の可能性までも狭めてしまうことにもつながりかねません。
具体的には、以下のようなことに配慮してあげる必要があるでしょう。
- 曖昧な言葉や暗喩、例え話を理解しにくい
- →説明や指示は具体的に行う
- 慣れていないことにパニックを起こしやすい
- →しばらく安静な場所で休ませる
- 声の抑揚や大きさを理解しにくい
- →声を荒げて怒る、叱るなどはせず、穏やかに話す
アスペルガー症候群はしつけや環境で発症するものではなく、身体的な脳の機能に何らかの問題が起こったものだと考えられています。
ですから、しつけが間違っていたのだと考えてしまい、矯正しようと声を荒げて叱る、怒るなどのことをしても意味がないのです。
これらのことを教師や親が充分に理解しておらず、子どもが不真面目だ、しつけがなされていないなどと誤解したまま指導してしまうと、子どもは必要以上に傷ついてしまい、周囲に対して攻撃的になったり、過剰に怯えたりするようになる恐れがあります。
さらに、叱られている内容が理解できないばかりか、理解できないことを厳しく叱られるというような悪循環に陥ってしまうことも考えられます。
こうした悪循環に陥ると、子どもは自分を否定する気持ちが強くなっていってしまい、勉強や社会生活、集団生活への興味を失ってしまうことも大いにありうることです。
このようなトラブルや悪循環を防ぐためには、保護者や学校と療育の専門家や専門施設が協力し合い、話し合いの上で子どもにとって適切な環境を整え、療育を行うことが必要です。
適切な環境でそれぞれの子どもに合った療育を受けられれば、その子自身が本来持っている豊かな資質を伸ばしていくことができるのです。
具体的な療育の方法って?
具体的な療育の方法は、医師がその子を診断した上で、専門家や専門施設によって本人の適性に合わせたプログラムを組む必要があります。
もちろん保護者や教師がアスペルガー症候群について勉強し、理解を深める必要はありますが、保護者や教師が療育の専門的なプログラムを組むのは少し難しいでしょう。
療育のプランは施設や子どもによってさまざまな違いがありますが、一般的には以下のようなプログラムが組まれます。
- 学習支援…同程度の年代の子どもと比較し、学習の遅れが生じないようにする
- 対人的トレーニング…対人トラブルを最小限にするためのトレーニング
- 社会的トレーニング…社会生活を送るためのルールやマナーに適応するトレーニング
- 本人の資質を見極め、長所となる特技や才能を伸ばして社会の中で活かすための支援
また、これらのプログラムとは別に、必要な場合は医師の処方によって薬物療法なども並行して行うこともあります。こうして、専門家や専門施設と保護者や教師など、子どもに関わる大人たちが連携し合い、総合的に子どもの成長に良い環境を整えていくことが非常に重要です。
アスペルガーの子どもを支えるためにできること
アスペルガー症候群の子どもには、以下のようなことを意識しながら接していくと良いでしょう。
- いいことをしたら積極的に褒める
- 曖昧な表現でなく、具体的な表現を使って会話をする
- 指示やルールを明確にする
- 怒鳴る、叫ぶなど声を張り上げない
アスペルガー症候群の子どもの多くに共通する特徴として、「曖昧な表現が苦手」「暗黙のルールなどを理解しづらい」というものがあります。
会話をするときは具体的な表現を使うのが良いでしょう。例えば、「今日は天気がいいね」ではなく、「今日は晴れていて温かくて気持ちがいいね」など、具体的な表現を使うことで、お互いに気持ちが伝わりやすくなります。
同じように、指示やルールも明確にしましょう。ものを片付けて欲しいとき、「部屋をきれいにしておいてね」ではなく、「自分が使った積み木やミニカーを玩具箱にしまっておいてね」など、指示はできるだけ具体的に、そして子どもが理解できて覚えていられる範囲のことにしましょう。
そして子どもが指示を守れたら、ぜひ積極的に褒めてあげましょう。アスペルガー症候群の子どもたちは記憶力がとても良いことが多いので、褒められたことはずっと覚えていて、成功体験として良い記憶が積み重なっていきます。
成功体験は、次の行動への大きなモチベーションになり得ます。
逆に、怒鳴る・叫ぶなど、声を張り上げて叱る、怒るなどのしつけは避けましょう。
アスペルガー症候群の子どもたちは感覚が鋭いことが多く、声の大きさに苦痛を感じたり、声の大きさだけが大きく捉えられてしまい、言葉の内容を理解できなくなってしまうこともあります。
わかりやすくはっきりとした言葉で、しかしできるだけ穏やかに話しかけるようにしましょう。
おわりに:「療育」はアスペルガー症候群の子どもの持つ本来の資質を伸ばすための教育
アスペルガー症候群は、少しずつ名前は知られてきているものの、正しい知識や適切な対処法を知っている教師はまだまだ少ないのが現状です。つまり、一般的な小学校では正しい対処ができず、集団生活の中で子どもが苦痛ばかりを感じてしまいかねません。
そこで、幼児期や小学校低学年のうちに、対人訓練や社会生活の訓練も含めた療育プログラムを受けることで、子どもの持つ長所を適切に伸ばしていくことができるのです。
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