この記事では、STEAM教育とはどんな目的の教育アプローチか、国内の取組事例などを紹介していきます。
「STEAM教育」の意味って?
「STEAM教育」とは、文系・理系の枠に捉われずさまざまな領域を学習し、探求と創造を促すことを目指す教育法です。「STEAM」は、下記の5つの言葉の頭文字からとった言葉です。
- 科学(Science)
- 技術(Technology)
- 工学(Engineering)
- 芸術教養(Art)
- 数学(Mathematics)
STEAM教育では、幅広い分野で新しい価値を提供できる人材育成、実社会での問題発見・解決に学習を活かしていくための教科横断的な教育の実践が求められます。
たとえば「総合的な探究の時間」は、高校で実施されるSTEAM教育の一環に当たります。ほか、「総合的な学習の時間」「理数探究」もSTEAM教育です。
STEAM教育の前身に、「STEM教育」というアプローチがとられていました。STEM教育では下記の4項目が柱とされ、これからの時代に必要な人材育成と教育方法の実践の取組がありました。
- Science
- Technology
- Engineering
- Mathematics
このSTEM教育に、Arts(デザイン、感性など)の項目が加えられ、初期のSTEAM教育となりました。(文部科学省「新学習指導要領の趣旨の実現とSTEAM教育について-「総合的な探究の時間」と「理数探究」を中心に-」より)
日本が目指す「STEAM教育」と実践例って?
日本ではすでにSTEAM教育が実施されています。どのような目的でどんな取組がなされているか、一部を紹介します。
- スーパーサイエンスハイスクールの指定
- 先進的な理数教育や創造性、独創性を育てる指導を行なっている高等学校に対し、文部科学省が「スーパーサイエンスハイスクール」の指定をします。令和2年度は日本全国で217校が指定されています。
- 小学校プログラミング教育
- 公立小学校では2020年度からプログラミング教育が必修化となりました。目的は「プログラミング的思考」を身につけることであり、プログラマーの養成ではありません。ビジュアルプログラミング言語など視覚的なプログラミングを通して、基本的なプログラミングの考え方を理解することを目指します。
- Music Blocksの小学校教育への導入
- 音楽、算数、プログラミングの横断的学習が期待されるプログラム。タブレットやパソコンで「Music Blocks」を使用することで、児童が作曲を体験できます。小学校のプログラミング教育必修化に伴い、2018年度には導入実証もされました。
- LITALICOワンダー
- ITとものづくりを組み合わせた教室です。ゲーム&アプリプログラミングコース、ロボットクリエイトコース、ロボットテクニカルコース、デジタルファブリケーションコースなど、新しいテクノロジーを楽しく学ぶことができる内容となっています。
- 科学の甲子園
- 科学分野に関心を持つ生徒を増やす目的で始められた大会です。高等学校などの生徒を参加対象とし、理科、数学、情報の科目で競い合います。実技競技には、実験や観察など科学技術の要素が取り入れられています。ものづくりの能力、コミュニケーション能力などを発揮し、課題解決能力でしのぎを削ります。
- 未来の教室
- 経済産業省による、国内外のEdTechに関するサービスやプロジェクトの最新動向を発信。Webサイトには、STEAM教育の実践例や学習教材も掲載されています。「EdTech」とは、教育(Education)と テクノロジー(Technology)を組み合わせた造語です。教育現場にテクノロジーを受け入れ、イノベーションを起こすことを目的としています。
「STEAM教育」は発達障がいの子どもの学びに役立つ可能性も…?
STEAM教育の大きな特徴のひとつとして、視覚的・感覚的な教育方法がとられているという点があります。たとえばビジュアルプログラミング言語を用いたゲームプログラミングや音楽を使った学習プログラムなどです。
発達障がいの子どもは、言語的なコミュニケーションを苦手とする子どもがいます。視覚的に理解を進められる教育方法では、集中して学習に臨むことができる可能性があります。
また、ADHDやアスペルガーの子どもは、プログラミングや数学、芸術に興味や関心を抱くことがあります。楽しみながら学習することで、才能を発揮できる子どももいるでしょう。
従来の教育方法のよい面と、STEAM教育の新しい視点やアプローチが組み合わさり、子どもの学びの幅が広がっていくことが理想的ですね。
おわりに:未来を生き抜く力を育てる「STEAM教育」をもっと理解しよう
STEAM教育は、ひとつの分野に特化した教育法ではありません。文系理系に関わらず、幅広い領域に対する好奇心、思考力、想像力を養うことを目指した教育法です。外国から始まった教育法ですが、すでに日本でも実施例があり、今後ますます活発に取り組まれていくことでしょう。子どもたちの未来に関わる新しい試みについて、大人も興味を持って一緒に取り組んでいきましょう。
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