物を回収し、集めておくのがやめられないのは、溜めこみ障がいの症状かもしれません。
今回は、発達障がいの人が発症することが多いとされるため込み障がいとは何か、典型的な症状やセルフチェックの方法、治し方などをまとめて解説します。
溜め込み障がいって、どんな状態になること?
溜めこみ障がいとは、以下のような問題行動を引き起こすとされる精神障がいの一種です。
- 溜めこみ障がいによって起こる、典型的な問題行動
- 客観的に見て役に立たないもの、不必要なガラクタやゴミなどを…
- 過剰に収集して溜めこんでしまう
- 溜め込んだ後、最低限に整理して管理ができない
- 集めて溜め込んだものを、捨てることができない
「ホーダー(hoader)」とも呼ばれる溜め込み障がいの人は、集めた物を捨てるときに強い苦痛や不安、不満を感じると言われています。
このため、生活スペースや足の踏み場もないほどに収集したものが家の中を圧迫しても、一度集めてきた物を自力で捨てることができません。
日本では、主にゴミ屋敷という社会問題を引き起こし得る原因の一つとして認知されていて、従来は強迫性障がいに近いものと考えられてきました。
しかし近年の研究により、脳機能の異常から発症するケースもあるとわかってきたのです。
とくに、注意散漫の症状が現れやすい発達障がい・ADHDの人は、うつや強迫性障害などの二次障がいとあわせて、溜めこみ障がいも発症しやすいと考えられています。
なお溜め込み障がいの診断は、物を捨てることに苦痛を感じたり、その収集癖が日常および社会生活に悪影響を及ぼした場合のみ下されます。
喜びを感じながら、趣味や目的のために物を収集・整頓・保管する人は、溜めこみ障がいとは診断されません。あわせて理解しておきましょう。
溜め込み障がいかどうか、セルフチェックしてみよう
溜め込み障がいかどうかは、自身の物の収集や整頓、保管の状況を客観的に観察することでセルフチェックすることができます。
以下の質問に1つ以上「中程度当てはまる」「かなり当てはまる」と感じる場合は、溜めこみ障がいの可能性が高いと考えられるでしょう。
気になる人は、以下のうちいくつが当てはまるか、チェックしてみてください。
溜め込み障がいの人に、当てはまる症状リスト
- 家の中に物が増えすぎて、もともとの用途で部屋や家内の設備を使えなくなっている
(例:お風呂やトイレが使えない、入れない部屋がある、布団を敷く場所がない など) - 床に物が溢れていて、家の中を移動するのが大変になっている
- キッチンや食卓に、用途のはっきりしない食器や調理器具が溢れてしまっている
- 必要性を感じないものでも「お買い得」「無料」「セール」と言われると入手してしまう
- 一旦手に入れたものは、売る・捨てる・譲るなど、いかなるかたちでも手放せない
- 他人の所有物なら整理整頓できるのに、自分の部屋に対してはそれができない
溜め込み障がいの治し方は?
溜め込み障がいの治療は、主に認知行動療法で進めていくことになります。
認知行動療法とは、問題となっている本人の認知・物事理解の仕方を、言葉と体験から良い方向へ変えていき疾患の改善をめざす治療方法です。
溜め込み障がいの人には、自身が必要のないもの・ゴミを収集して捨てられない病気であること、またそのことで周囲に迷惑をかけてしまっている自覚がありません。
このため、まずは対話することで本人の溜め込み癖、また溜め込んでいる物に対しての認知を変え、片付けるための動機付けをする必要があるのです。
具体的には、本人が「人生において価値を置いているものは何か」に合わせ、共感して「片付けをすれば、本人にとって価値あること・時間が増える」と認識させます。
本人がゴミを捨てること、物の収集を控え家の中を片付けることに価値を感じられるようになったら、以下のような治療を少しずつ行っていきます。
- 溜め込み障がいに用いられる認知行動療法
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- 本人と相談しながらいるもの、いらないものを少しずつ分別する
- 布などで他のものを隠し5分程度隠し、注意を散漫させず1つの物事に集中させる
- たくさんあるもの、用途がはっきりしないものを預かり、不必要性を理解してもらう
- 一度整理したら「出したものは戻す」「落としたら拾う」などのメモ書きを各所に貼る
- 整理後、定期的に家を訪れてきれいにしていることを褒めたり、お礼を言ったりする
これにより、徐々に物を大量に収集して溜め込む癖が緩和され、本人の中に片付ける動機が生まれて、溜めこみ障がいが改善されていきます。
おわりに:発達障がいに多い溜め込み障がいは、認知行動療法で治療可能
客観的に見て不必要な物を大量に収集し、生活に支障が出るほど乱雑に保管してしまうことを溜めこみ障がいと言います。精神障がいの一種とされていましたが、近年では、注意力散漫の特性を発する発達障がいによっても起こり得ることがわかってきました。溜め込み障がいは、認知行動療法で本人のゴミや収集・保管方法への意識を変えることで、治療が可能です。興味のある人はセルフチェックのうえ、専門家に相談しましょう。
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