自閉症の子どもたちのなかには、特定の分野に突出した才能を表すことがあります。
今回は才能のうち「音楽」の分野について、自閉症の子どもに音楽の才能が現れやすいという説は本当なのか、その根拠とともにご説明していきます。
自閉症の子どもには絶対音感が多い?
子どもの自閉症と絶対音感の関係については、1998年にヒートンという学者が調査と報告を行っています。
この実験では、特別な音楽的訓練を受けていない自閉症児と発達障がいでない子ども各16人に対し、絶対音感の検査を実施しました。
すると、以下のような結果が得られたのです。
- 1998年に自閉症児と提携発達児に行われた、絶対音感検査の結果
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- 音程の判定について
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- 正しく音程を判定できた自閉症の子どもの割合 …11.7人/16人中
- 正しく音程を判定できた自閉症でない子どもの割合…5.8人/16人中
- 音程の記憶について
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- 正しく音程を記憶できた自閉症の子どもの割合 …8.9人/16人中
- 正しく音程を記憶できた自閉症でない子どもの割合…4.0人/16人中
上記いずれの検査でも、自閉症の子どもの方が正しく音程を認識できています。
自閉症の子どもすべてが絶対音感を持っているわけではありませんし、絶対音感かどうかについて、絶対的な判断基準が確立されているわけでもありません。
しかしヒートンは上記の結果から、自閉症の子どもの一部はそうでない子どもに比べ、絶対音感を獲得しやすい傾向があると結論付けました。
このことから、自閉症の子どもは発達障がいを持たない子どもに比べ、先天的な要因から絶対音感を獲得しやすい、と現在においても考えられているのです。
自閉症の子どもは、音楽の情緒に敏感?
2017年9月22日号の「Frontiers in Psychology(電子版)」によると、京都大学の研究チームが自閉症の子どもに対し、音楽の理解についての調査を行っています。
これは、絶対音感や1度聞いただけで譜面を記憶し演奏するなどの聴く・演奏する方面ではなく、自閉症の子どもが音楽をどう理解するかに注力した実験です。
具体的には、自閉症の4~9歳の子ども19人と、同年代の自閉症でない子ども28人を対象に、さまざまな楽曲を聞かせてそれぞれの反応を比較しました。
まず聞かせた楽曲は、美しい和音で奏でる協和音と、この協和音を少しだけ乱して濁った和音にした不協和音の2種類です。
すると、自閉症の子どもはそうでない子どもに比べ、不協和音を聞く時間が短いという結果が得られました。これは自閉症の子どもが、不協和音を好まない傾向を示しています。
続いて、不協和音の少ない2曲と、音楽的な効果を狙って意図的に不協和音を多く入れた2曲の計4曲を聞かせてみました。
すると、自閉症の子どもたちは意図的に不協和音を多く用いて作られた楽曲を好み、長い時間聞こうとする傾向が見られたのです。
この2つの結果から、自閉症の子どもたちは同年代の健常児と比べ、音楽に対する感覚が発達し明確な音楽への興味・好みを持っていると理解できます。
自閉症の子どもたちは、生まれ持っての脳の仕組みの違いから音や音楽の情緒を、敏感に受け取る感性を持っているのかもしれませんね。
おわりに:自閉症の子どもたちの一部は、音楽の才能・感性が優れている
過去に行われてきた調査・実験結果を見る限り、自閉症の子どもたちが発達障がいでない健常の子どもたちに比べ、優れた音楽への才能と感性を持っているのは事実でしょう。ただし、自閉症の子どもたちのすべてが音楽の才能を持っているわけではありません。
人によっては、音楽とは別の方面への才能を持っている可能性もあります。日頃から子どもの様子をよく観察し、子どもの持つ音楽の才能を伸ばしてあげられるよう、支援してください。
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