生まれつきの脳機能の違いによって起こる自閉症は、一般的に子どもの頃から特性が現れるとされ、成長しても特性の影響を受けます。大人になると就労などの面で、子ども時代とは異なる困りごとが発生します。
今回は大人の自閉症について、成長による症状緩和や軽減の可能性、仕事探しや就労に関してのコツや支援のことまで、まとめてご紹介します。
自閉症は大人になったら完治するもの?
脳が外部から得た情報を処理する機能が通常と異なるために、物事や人の見方や感じ方が他の人と異なり、日常生活や仕事に困難を生じる症状を「自閉症」と言います。その発症原因ははっきりとはわかっておらず、現時点では遺伝的要因をはじめ、複数のさまざまな要因が絡み合って発症すると考えられています。
人が成長する過程で発症するような後天的なものではなく、生まれつきの脳機能のアンバランスさによって発症する、先天的な障がいです。このため、成長に伴って自閉症が完全に治癒することはないと考えられています。
自閉症の人は、下記のようなコミュニケーションにおける行動が非常に苦手だという特徴があります。
- 一般的な社会の常識や感覚を理解する
- 他人の表情・言葉からその真意を汲み取る
- 状況や相手に応じて、自分が取るべき言動を適切に選ぶ
また、特定の人や物事・手法に強くこだわり、衝動的に行動することも少なくありません。
このため本人が意図していないのに、その話し方や言動が周囲の人には失礼で身勝手なものに見えてしまい、人間関係にトラブルが生じることも多いのです。
自閉症の人の仕事探しのコツって?
自閉症の人は他者とのコミュニケーションが苦手であるとともに、物事の得手不得手や、職種の適性がはっきりしていることも大きな特徴です。
適性に合っていない職業に就くと、キャリアや人間関係をうまく構築できずに多大なストレスを感じ、心身に不調をきたして退職に至ってしまうこともあります。
自閉症の人が仕事探しを成功させるには、自分の特性による得手不得手を理解し、円滑に働くために必要な工夫を知り、そこから自分にとっての適職を探すことが大切です。憧れている職業が、必ずしも特性に合った適職とは限りません。
心身の健康を守るため、そして長く働いてキャリアと生活をしっかり築いていくためにも、まずは自分の特性と適職を考えてみましょう。
大人の自閉症のための公的な就労支援ってあるの?
自閉症などの発達障がいのために、就職や就労継続が難しい人のための支援制度としては、以下のようなものが挙げられます。
就職、または就職のための準備・訓練に関する支援制度
- 障がいの特性に応じた、ハローワークによる職業相談や職業紹介
- ハローワーク主体で行われている、3か月間を目安とした障がい者の指向雇用制度
- 13地域のハローワークに設置されている、発達障がい者雇用トータルサポーター制度
- ハローワークと連携する施設で行われている、地域障がい者職業センターにおけるリハビリテーション
- 自閉症などによるコミュニケーションの困難を軽減するため、ハローワークで行われている若年コミュニケーション能力支援者就職プログラム
- 一般の職業能力開発校、職業訓練所における職業能力開発訓練
就職後、就労の継続を助けるための支援制度
- 障がい者が容易に職場適応できるよう、職場に人員を派遣するジョブコーチ支援制度
- 障がい者が問題なく就業、生活できるよう地域で補助する障がい者就業・生活支援センター
どの機関の支援制度を利用できるかは、お住まいの地方や自閉症症状の現れ方、特性などによっても変わってきます。
まずは地域の福祉窓口、または管轄のハローワークに相談してみると良いでしょう。
おわりに:大人の自閉症は、特性を活かしながら苦手を補える仕事がおすすめ
生まれつきの脳機能のばらつきで発症する自閉症は、大人になっても完治することはありません。このため自閉症の人が就労するには、自分の得意を活かすことができ、かつ苦手分野を工夫で補うことのできる特性にあった仕事を探す必要があります。自身で適職の判断がつかない、応募する求人を見つけられないときはハローワークや地域の福祉課が実施する支援制度を利用する方法もありますので、利用を検討しましょう。
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